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通信機器のEricssonがなぜ自前のチップを開発するのか

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世界大手の通信機器メーカーEricssonが国内のKDDIとソフトバンクという異なる通信オペレータに共通の5G無線製品を納入した。これまではKDDI、ソフトバンク、NTTドコモなど各社がそれぞれ通信機器メーカーから基地局製品を購入していた。今回、MORAN(Multi-Operators Radio Access Network)対応の製品のカギは、自前のチップEricsson Silicon(図1)にある。

Ericsson Silicon range

図1 Ericsson Siliconは4種類 演算やゲートウエイでの転送、アンテナでのビームフォーミング、デジタル変換チップなど 出典:Ericsson


この製品によってKDDIとソフトバンクは通信業者間ネットワーク共有が促進されるようになり、5Gネットワークの全国展開が加速する。KDDIとソフトバンクが手を組むことで5Gの基地局を増やして、つながるネットワークを一気に広げていく狙いがあり、NTTドコモへの挑戦といえる。共通の通信機器は、ネットワークを共有化する上で欠かせないだけではなく、大きくかさ張りがちな通信機器を小型・軽量、低消費電力化するため独自チップで他社製品と差別化できるようになる。

Ericssonは5G基地局におけるモバイル通信ネットワークや無線機器のカスタムメードで他社と差別化し、RAN Computeや無線、トランスポート機器を提供することで基地局につながるエンドユーザーへのサービス向上を図るためだとしている。

カギとなるEricsson Siliconと呼ばれるSoCは、EricssonスペクトルシェアリングとEricsson アップリンクブースターという二つのソリューションにも使われ、性能向上と高効率、無線の新機能、という役割を果たす。スペクトルシェアリングは、4G LTEのネットワークを使いながら、ソフトウエアによって5G-RANと共用できる技術で、アップリングブウスターは文字通り、データをアップしたい場合のスループットを上げる技術である。さらに今後の新製品や革新的な機能を実現する上でもSoCへの投資を続けていくとしている。

このSoCは、カスタムメードのチップであり、フレキシブルなモジュラー形式のアーキテクチャで設計されている。これによってEricssonの無線製品を高性能、小型、軽量、低消費電力になるように最適化でき(図2)、その結果、通信オペレータはTCO(全運転コスト)を下げることができる。


power consumption

図2 チップを外から購入する場合は消費電力が最も高い、すなわち無駄な電力が多い COTSは市販の半導体の意味 出典:Ericsson


同社が、市販のチップを利用した場合(図2の赤線、業界標準のベンチマークを使った場合(オレンジ線)と比べてみると、Ericsson Siliconを使った場合はRAN Compute機器は業界標準機器よりも30〜60%も消費電力が低かった。

加えて、自前のチップだと完全なセキュリティをチップ内に作り込むことができる。チップに埋め込むeFuse(電子フューズ)技術を使えば改ざんを防ぎ、暗号鍵へのアクセスも防ぐことができる。同時にセキュリティアルゴリズムを使って信頼の高い破られないチェーンを鍛えて、重要な情報やデータへ認証されていないものからのアクセスリスクを緩和している。

Ericsson Siliconは、超並列MIMO(Multiple Input Multiple Output)アンテナソリューションにも使われており、5G時代の本格的なイネイブラーとなる。小さなアンテナ素子が集積化されたMIMOアンテナとRAN Computeは、これまでにない高いエネルギー効率と性能をGB当たりの全運用コスト下げているという。

(2021/07/08)

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