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エッジAIのハード・ソフト・ソリューションを提供するベンチャーが起業

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端末でのAIハードウエアと、それを管理する統合ソフトウエアプラットフォーム、そして顧客の相談に応じた解を提供するエッジAIソリューションの3つの事業を行うベンチャーEDGEMATRIX社が生まれた。このほどNTTドコモと清水建設、日本郵政キャピタルが9億円を増資し、本格的な活動を開始した(図1)。

EDGEMATRIX新会社設立 事業戦略発砲記者会見

図1 エッジAIのハードからソフトウエアプラットフォーム、ソリューションまでカバーするベンチャーEDGEMATRIX社 中央が社長の太田洋氏、左から2番目が副社長の本橋信也氏、左端が清水建設の関口猛氏、右から2番目がNTTドコモの谷直樹氏、右端がCloudianのCEO Michael Tso氏


新会社は、クラウド用データセンターのストレージシステムを管理するソフトウエア製品を提供するCloudian社から2019年4月にスピンオフし、新会社となった。7月にAI事業を譲渡し、AIチームが完全に移籍した。そして8月6日にNTTドコモをはじめとして3社が9億円を第三者割り当てによって出資した。現在は、Cloudian社は出資していないとEDGEMATRIX社の共同創業者兼代表取締役社長の太田洋氏は述べている。

エッジAIは、IoT端末やゲートウェイなどでビッグデータのAI解析を行う事業である。NTTドコモという通信オペレータが出資するように、エッジ側で解析したデータを、セルラーネットワークを通してクラウドへ送り出す。IoTといってもここでは4K画像のような鮮明な画像を通じて、人間検出や顔認識をディープラーニングで推論する。画像から性別や年齢を推測し、その人の近くにあるデジタルサイネージに性別と年齢に適した広告を流す、といった応用に行かせる。

EDGEMATRIXにNTTドコモが出資したのは、セルラーネットワークを通してクラウドへデータを送ることと深く関係するが、清水建設が出資するのは、スマートビルや建築物をもっと賢く制御できることを顧客に提案するためだ。「Cloudian社だった時に、工場や物流施設を受注し、安全・安心・省力化のニーズをつかんだとして、IoTやAIを活用してユーザーに安全・安心を提案したい」と清水建設の執行役員エンジニアリング事業本部長の関口猛氏は語っている。建物の火災検出やそれに伴う構内誘導表示などを開発してきた実績から、IoTやAIを使った施設のターンキーサービスを提案できると見ている。

4K画像・映像の転送となると5Gネットワークが必須となるが、2020年からの5Gのサービスをパートナーと共同で提供していきたいとNTTドコモの執行役員でIoTビジネス部長の谷直樹氏は、その狙いを明らかにしている。特に4K、その先の8Kのデータ転送には5Gが欠かせない。またNTTドコモはこれまでの自前主義ではなく、パートナーとの協業を中期計画で打ち出しているという。

Cloudian社は、現在ビッグデータのストレージのフォーカスしており、EDGEMATRIX社はエッジAIにフォーカスすることで、それぞれが成長できるとCloudian社のCEO兼共同創業者のMichael Tso氏は語っている。EDGEMATRIX社にはもはやCloudian社の株式は入っていないという。いわば完全独立した形をとっている。


図2 エッジAIのハードウエア製品

図2 エッジAIのハードウエア製品


EDGEMATRIX社は、ハードウエアとしてEdge AI Boxと呼ぶ製品(図2)を複数用意しており、さらにこの製品群をハイエンドから標準品、ローエンドまで揃えていく。図2の右側にあるアンテナ付きの屋外用のボックスは、標準品という位置づけである。この製品にはNvidiaのGPUである「Jetson TX2」を搭載している。2019年第4四半期には、2020年からの5Gをサポートするアドバンス製品や、SATA SSDのインターフェースを備えた標準製品も提供する計画である。

エッジAIソリューション事業は、これまでのIoT/AI開発の問題としてPoC(実証実験)では高価なコンピュータを使って実験しても、商用化に向けて入手可能な価格のエッジAI製品や、そのデータを可視化するツールも手ごろな価格ではなかった。このためPoCまではできても実用化へは踏み出せなかった企業が多かったという。ここで提供する製品は手ごろな価格帯で提供するとしている。

例えばスマートファクトリでは、外観検査の自動化にAIを利用する例が増えつつあり、カメラを生産ラインに設置するようになった。さらに不良品を検出した時のPLC同期制御も欠かせない。つまり総合的なインテグレーション能力が求められている。ビルディングでも、入退出管理や侵入検知などのセキュリティ、空調制御の省エネ化、ワークスペースの最適化、ファシリティのメンテナンス管理や、行動分析などに多数のカメラとエッジAIを組み合わせることで安全・安心につなげられる。

エッジAIプラットフォームでは、デバイスやソリューションを管理するためのソフトウエアプラットフォームを提供する。例えば、プラットフォームの中にあるデバイス管理コンソールでは、アプリの配信やアップデート(OTA)、AI Boxの管理・運用、サービス料金の課金(回収代行)などを受け持ち、ハードウエア製品を管理する。これによってユーザーは、エッジAIで解析した結果を可視化してみることができる。また、AIのアプリケーションを管理するマーケットプレイスでも、人物の顔認証や人物プロファイル分析、クルマの交通量計測、渋滞監視、不審者・不審物の認識などを分析して管理する。

今後、5G通信の本格的な普及と共に画像・映像の伝送や解析などが本格的に求められるようになるだろう。

(2019/09/04)

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