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2015年に165億ドルに成長するMEMS市場、仏ヨールが予測を発表

MEMS市場は現在(2010年)の79億ドルから2015年に165億ドルに成長すると、フランスの市場調査会社ヨール・デベロップメント(Yole Developpement)社が予測を発表した。数量ベースでは、2015年に10億個を超すという。第21回マイクロマシン/MEMS展で発表された。

図1 Yole Developpementが発表したMEMS市場
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図1 Yole Developpementが発表したMEMS市場


MEMS製品として現在最も金額の多い製品はインクジェット用のヘッドであるが、製品としてはもはや成熟に向かっている。2010年に15億6610万ドルが見込まれているが、2015年でも20億4370万ドルにとどまる。次に多い製品は圧力センサーで2010年の12億60万ドルから2015年でも23億2440万ドル程度である。

これから最も大きく成長する製品は、医療診断MEMS用のマイクロ流体測定器具とみており、2010年の7億5750万ドルが23億6350万ドルに成長すると見ている。MEMSを用いるプロジェクションシステムも有望な分野とみており、2010年の7億740万ドルから21億1510万ドルになると見ている。現在のプロジェクションシステムでは米テキサスインスツルメンツ(TI)社のDLPプロジェクタ用のMEMSデジタルミラーデバイスが使われているが、今後は携帯向けのレーザー走査プロジェクタや、工業用途で使われるレーザー光を反射する位置合わせ用あるいは露光用のリソグラフィ装置内部品などの応用が拡がっている。まだ市場には出ていないがマイクロスピーカーは2015年には1億5000万ドルになると予測する。


図2 インクジェットや圧力センサーは飽和するも新応用が続出するMEMS

図2 インクジェットや圧力センサーは飽和するも新応用が続出するMEMS
出典:Yole Developpement


MEMSの応用はこれまでの主力だった、インクジェットや圧力センサー、加速度センサーは徐々に飽和していき、MEMS発振器、オートフォーカス用マイクロズーム、エネルギーハーベスティングなどの新分野の市場が立ち上がっていくと見ている。

こういった新しい市場を立ち上げ、育てていくためには、ソフトウエアの開発が重要な差別化技術となるが、ヨールも新しい機能を売るために必要だとしている。今では、機能を売るのでありMEMSというデバイスを売るのではない。

技術的にはパッケージも重要な要素となる。現在はMEMSとCMOSLSIとの集積化は1パッケージ内で2チップを基板上にそれぞれ置くことが多いが、将来は3次元的に重ね合わせるTSVの手法が求められると予想している。これもウェーハ上にチップを載せる場合や、ウェーハ上にウェーハを載せる場合がある。いずれの場合も3次元化することで3次元のウェーハレベルパッケージングも可能になる。


図3 MEMSにも微細化技術が入り込む 出典:Yole Developpement

図3 MEMSにも微細化技術が入り込む 出典:Yole Developpement

製造プロセス的には、パッケージに加え、ウェーハの口径が6インチから8インチへと進み、SOIウェーハも使われるようになる。2015年ごろには民生用の加速度センサーなどの例では、3D ICのスタック構造によりCMOSLSIがMEMSチップのキャップとなり、TSVで配線することになるとしている。それに伴い、MEMSの平均単価は100万個購入する場合で2000年に3ドルだったが、2010年は0.7ドル、2015年には0.4ドル以下になると見る。

このようにパッケージング、製造プロセス、ソフトウエアの三つが揃えば、差別化できる商品が可能になる。例えば、加速度センサーなどの慣性センサーの応用はゲーム機ではますます複雑になってきている。回転する角速度を検出するジャイロスコープと、動きを検出する加速度センサーを一体化し、角速度と加速度の両方をしかもそれぞれのxyzの3軸の方向を検出する新しい慣性センサーが民生用のゲーム機に取り入れられようとしている。6月に発売されたiPhone 4にはジャイロと加速度センサーが入っているため、より立体的なゲーム体験を楽しめるようだ。


図4 ジャイロと加速度センターの一体化とソフトウエアが新市場を創出する

図4 ジャイロと加速度センターの一体化とソフトウエアが新市場を創出する
出典:Yole Developpement

今後の技術は、ジャイロスコープと加速度センサーを1パッケージに入れるMEMSセンサーが登場すると見ている。これを搭載することにより、携帯電話やスマートフォンのゲームをより立体的に楽しめるようなソフトウエアの開発も必要になってくる。ここに新しいビジネスチャンスが開ける。

(2010/08/09)
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