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親会社からの完全独立が功を奏し、創立10年を迎えたインフィニオン

ドイツのインフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)社が1999年にシーメンス(Siemens)社から独立して10年経った。日本の半導体企業とは大きく違うことは、親会社が株式を支配することはないということだ。独立した理由は、シーメンス以外にも製品を売りたかったからだという。日本の大手半導体メーカーとは全く違う仕組みで動いている。簡単に紹介しよう。

現在のCEO(最高経営責任者)のPeter Bauer氏は、インフィニオン創立以来の取締役メンバーだったが、前任のCEOはBMWやContinentalにいたことがあったという。Bauer氏はシーメンスからの生え抜きエンジニアであった。しかし、インフィニオン社の大口株主は、Odey Asset Managementや、Norges Bank Investment Managementなど金融関係が多いものの、10%を超える株式を持っているところは1社もない。シーメンスの持ち株はいまや、その他大勢に含まれる程度しかないという。


インフィニオン・テクノロジーズの森社長
インフィニオン・テクノロジーズの森社長


「分社化して半導体ビジネスとしての自由度を追求し、しがらみのない経営陣を置いたことがインフィニオンを成功に導いた」と日本法人の代表取締役社長の森康明氏は述べる。

シーメンスから独立した当初は、DRAM事業も持っていた。しかし、DRAM事業は1000億円単位の投資が必要なのに対して、システムLSIは設計やソフトウエア開発、ツール開発などが重要であり、それほどの投資額は必要としない。このため、一人の経営者がDRAMとシステムLSIという全く違うビジネスを責任もって見ることはできないとして、DRAM専門のキモンダ(Qimonda)を分離独立させた。経営は別とはいえ、キモンダの業績はインフィニオンの業績に組み込まれていたため、インフィニオンの経営はキモンダに大きく影響された。キモンダは経営破たんしたことで、今後インフィニオンがその影響を受けることは少なくなる。

しかし、今度は世界不況の影響を受け、インフィニオンの財務状況は悪化した。2008年9月時点で8億8300万ユーロのグロスキャッシュが株主への債務支払い1億ユーロ、借り換えなどのボンドリパーチェスが1億6100万ユーロ、3000人をカットしたことによるリストラ費用1億ユーロなどキャッシュは4億ユーロが消えた。

これらのキャッシュの減少をカバーするため次のような手を打った。リーマンブラザース証券の破綻によるデポジット保険からの入金1.12億ユーロ、2014年までの転換社債で1.82億ユーロ、リストラによるキャッシュフロー1.02億ユーロなどで、2009年6月現在は8億7100万ユーロまで戻した。

2009年の6月末の四半期は前年同期比では18%減であるが、前四半期と比べると13%増加した。ワイヤレス関係は落ちていないとし、同社の主軸は通信・自動車・その他の産業である。9月末までの四半期の見通しは悪くないとしながらも、本格的な回復は2010年以降になりそうだ。

インフィニオンはファブライトを推進していくが、ファブを持つ理由ははっきりしており、パワー半導体を持っているためだ。V字のトレンチ構造などプロセス技術のノウハウがパワー半導体にはあり、この技術は外へは出せない、としている。だからこそこれが強みとなる。単なるデジタルLSIはファウンドリへ出すという方針だ。

(2009/09/28)
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