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AIブーム、熱い活況&戦略的取り組み、Nvidia、SK Hynix、Qualcomm

週単位で見ても激しく状況が変化しているAI(人工知能)関連のこのところの動きであり、半導体の視点でも注目せざるを得ないところである。米国の巨大IT企業、GAFAMが、スタンスの違いがありながら、直近7−9月四半期で過去最高の設備投資を行って、AIの熱気をさらに焚きつけており、半導体関連株価にもあらわれている通りである。AI半導体について各社の戦略的取り組みが見られて、牽引するNvidiaはSamsungはじめ韓国との連携、高帯域幅メモリ(HBM)を主導するSK HynixはAI NANDのアプローチを披露、そしてスマホなど通信用半導体のQualcommはAIアクセラレータに取り組んでいくとしている。AIの熱気いつまでと、慎重論併存の中、引き続きの注目である。

≪引き続くAI活況の中で≫

AIの熱気をさらに焚きつける巨大IT、GAFAMの動き関連が以下の通りである。

◇Apple isn’t playing the same AI capex game as the rest of the megacaps (10月30日付け CNBC)
→1)*多くの大手テクノロジー企業がAIへの野望を掲げ、大規模なデータセンターの建設に奔走する中、Appleはより控えめなアプローチを取っている。
  *9月に終了した2025年度において、Appleは$12.72 billionの設備投資を行った。Alphabet、Meta、MicrosoftおよびAmazonと比較すると、Appleはほとんど支出していない。
  *AppleのAIに対する独自のアプローチは、まだハードウェアの売上に悪影響を与えていない。CEOのティム・クック氏は木曜30日、CNBCに対し、同社のiPhone 17モデルに対する消費者の反応は「桁外れ」だったと語った。
 2)Appleは、大規模なデータセンターの建設ではなく、自社製チップとレンタルのコンピューティングパワーを組み合わせた「ハイブリッド」AI戦略を推進している。CFOのKevan Parekh氏によると、AppleのAI関連の設備投資は35%増の$12.7 billionとなり、研究開発費の増加により営業費用は11%増加した。

◇米巨大テック、強気のAI投資継続 メタ「26年、著しい増額」 実需見通せず (10月31日付け 日経)
→米巨大テック企業がAIインフラへの巨額投資を加速している。29日に決算を発表したメタ、マイクロソフト、アルファベットの3社は2026年の設備投資が25年を大幅に上回ると表明した。AI事業の投資回収に不透明さが残る中、各社が年間10兆円を超える規模で先行投資を進めている。

◇メタ株急落で時価総額30兆円減 起債4兆円、焦りのAI投資に市場警戒 (10月31日付け 日経 電子版 06:38)
→米メタの株価が30日、約1割急落し、時価総額約30兆円が吹き飛んだ。
 AIの開発で出遅れた焦りから、インフラ投資を倍増し4兆円規模の巨額の社債も発行する。AIへの過剰投資が懸念される中、回収の道筋を明確に描けぬまま挽回を急ぐ手法は市場の警戒を招いた。

◇米巨大ITの設備投資、3カ月で17兆円 メタの収益モデル見劣り (11月1日付け 日経 電子版 06:09)
→米巨大テクノロジー企業4社の7〜9月期の設備投資は前年同期比8割増の$112.5 billion(約17兆3000億円)で過去最高となった。各社はAIに異次元の投資を続ける。米アマゾン・ドット・コムの株価は31日、上場来高値を更新する一方、米メタは続落した。ビジネスモデルと投資回収への道筋で市場評価が二分している。

スタンスの違いがありながらも、巨額の投資がAI関連に向けられている。

このような中のAI半導体関連で今週目に入った動きから、まずは、大きく引っ張るNvidiaについて、キーワード分類で次の通りである。

[ワシントンGTC]

◇Jensen Huang says Nvidia’s AI chips are now being manufactured in Arizona (10月28日付け CNBC)
→1)*エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、火曜28日に開催された同社のGTCカンファレンスで、同社最速のAIチップであるBlackwell graphics processing units(GPUs)がアリゾナ州でフル生産されていると発表した。
  *エヌビディアが火曜日のカンファレンスで発表した内容の多くは、政策立案者の聴衆に対し、エヌビディアがアメリカのテクノロジー企業として果たす重要な役割を納得させるためのものだった。
  *エヌビディアにとって、これは大きな賭けだ。米国の輸出規制により、エヌビディアはすでに数十億ドルの売上を失っている。
   2)エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、トランプ大統領が米国での製造業を強く求めたことを受け、同社のブラックウェルAIチップは現在、アリゾナ州でフル生産・組み立てされていると述べた。GTCでは、エヌビディアはまた、米国のイノベーションを強化するため、5G/6G技術と新たな量子コンピューティング・プロジェクトに関するノキアとの$1B規模の提携も発表した。

◇[News] NVIDIA May Be TSMC’s Only A16 Customer So Far While Apple Reportedly Yet to Start Talks (10月28日付け TrendForce)
→NVIDIAはTSMCの工場で初の米国製Blackwellウエハーを製造し、2027年にTSMCのA16ノードをテストする唯一の顧客となることで、より深い関係が築かれることを示唆した。今回の動きは、AIがTSMCの最先端プロセスを採用する上で初のリードとなるが、A16のコスト上昇はNVIDIAの利益率を圧迫する可能性がある。

◇Nvidia pitches Omniverse DSX as model for gigawatt-scale AI factories―Nvidia unveils Omniverse DSX for AI data centers (10月29日付け The Register (UK))
→1)GPU大手、パートナー企業と提携し、次世代データセンター向けデジタルツインのブループリントを作成
 2)NVIDIAは、ギガワット規模のAIデータセンターの設計と運用のためのデジタルツインプラットフォーム「Omniverse DSX」を発表した。NVIDIAはSchneider Electricと提携し、バージニア(Virginia)州にAIファクトリーリサーチセンターを建設し、この技術の開発を進めている。Omniverse DSXは、電力・冷却インフラを含むデータセンター全体のデジタルツインを構築し、パフォーマンスと持続可能性を最適化する。

◇[News] NVIDIA Dismisses AI Bubble Concerns, Reportedly Projects $500B in GPU Sales from Blackwell and Rubin (10月29日付け TrendForce)
→NVIDIAの初となるワシントンGTCで、CEOのジェンスン・フアン氏はAIバブルへの懸念を一蹴し、スーパーチップ「Vera Rubin」を発表し、そしてGPU売上高を$500 billionと予測した。フアン氏は、中国がNVIDIAへのアクセスを制限する中で、堅調な需要、米国でのチップ生産、そしてハイパースケーラーによる支出増加を理由に挙げた。

◇Nvidia CEO downplays AI bubble fears (10月30日付け Taipei Times)
→エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、主要なグローバルパートナーシップを発表し、AIバブルへの懸念を一蹴した。BlackwellおよびRubinのチップは$500 billionの売上げを生み出す可能性があると述べた。ワシントンGTCでは、新たなベンチャー企業を公表し、米国の政策支援を称賛するとともに、膨大なチップ需要を予測した。


[韓国との連携]

◇Nvidia to supply AI chips to Samsung, SK, Hyundai: sources (10月29日付け Yonhap News Agency)
→NvidiaのCEOであるジェンスン・フアン氏は、韓国で開催されるAPEC CEOサミット期間中にサムスン、SKグループ、ヒュンダイ、およびNaverとAIチップ供給契約を締結すると予想されており、これによりNvidiaの地域的プレゼンスが強化され、韓国のAIリーダーシップの野心が前進することになる。

◇Samsung and NVIDIA Enter Massive Partnership to Build a 50,000-GPU “AI Factory,” Collaborating on AI-RAN & Cutting-Edge Technologies―Nvidia, Samsung partner on AI factory with 50K GPUs (10月31日付け Wccftech)
→NVIDIAはサムスン電子と提携し、5万台以上のNVIDIA GPUsを稼働させる半導体製造ハブを構築する。これにより、生産をリアルタイムで最適化する単一のインテリジェントネットワークが実現する。この提携には、高帯域幅メモリ(HBM)、電子設計自動化(EDA)ツールおよびAI無線アクセスネットワーク(RAN)に関する協業も含まれる。

◇NVIDIA, South Korea Government and Industrial Giants Build AI Infrastructure and Ecosystem to Fuel Korea Innovation, Industries and Jobs (10月31日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→NVIDIAは本日、韓国と協力し、同国のAIインフラを拡充することを発表した。このインフラは、韓国のsovereignクラウドおよびAIファクトリー全体で25万基を超えるNVIDIA GPUsを導入する。官民両セクターの導入によって構築されるこのインフラは、自動車、製造および通信など、韓国のあらゆる産業におけるAIを活用した経済成長とイノベーションの基盤となる。

◇50,000 Nvidia GPUs power Samsung's dawn of AI-manufacturing (10月31日付け DigiTimes)
→NVIDIAとサムスン電子は、5万台以上のNVIDIA GPUsを搭載した次世代半導体製造ハブ「AIファクトリー」の計画を発表した。この取り組みは、メモリ供給から進化を遂げた両社の25年にわたるパートナーシップにおける大きな飛躍を示すものである。


[時価総額、世界初5兆ドル突破]

◇NVIDIA時価総額、世界初5兆ドル突破 AI半導体独走で相場全体を左右 (10月29日付け 日経 電子版 22:36)
→米半導体大手エヌビディアの時価総額が一時、世界の企業として初めて5兆ドル(約760兆円)を突破した。AI半導体で独走状態が続き、高成長の持続への期待が高まっている。株価上昇は関連銘柄にも波及し、株式相場全体を左右する存在になっている。


[ノキアとの連携]

◇The 6G status now―Nvidia commits $1B to Nokia for 6G development in the US (10月29日付け Fierce Network)
→NVIDIAは、米国における6G技術の開発を支援するため、ノキアに$1 billionの投資を行うと発表した。この提携はまだ初期段階にあり、ノキアの6G開発は初期の無線研究段階にとどまっているが、業界が2028年に予定されている標準化に向けて準備を進める中で、両社は将来的な協業に大きな可能性を見出している。

◇NVIDIA、ノキアに1500億円出資 潤沢な資金で通信など新市場を開拓 (10月29日付け 日経 電子版 05:22)
→米半導体大手エヌビディアは28日、フィンランドの通信機器大手ノキアに$1 billion(約1500億円)を出資すると発表した。次世代通信規格「6G」向けの技術を共同開発し、AI向けに応用する。AI半導体で稼いだ潤沢な資金を次の技術開発に投じ、新たな市場開拓を狙う。

SK Hynixは、AI NAND戦略を披露、DRAM市場でもSamsungを上回る販売高、など以下の通りである。

◇SK hynix unveils next-generation NAND storage vision for AI (10月27日付け Yonhap News Agency)
→SK hynixは、2025 Open Compute Project Global Summitにおいて、AIに最適化されたNANDストレージ製品ラインナップを発表し、次世代データソリューションをリードする計画を概説した。同社のAI-NAND製品は、パフォーマンス、帯域幅、および密度を向上させ、増大するAI推論の需要に対応する。

◇SK hynix unveils AI NAND strategy, including gargantuan petabyte-class QLC SSDs ? ultra-fast HBF and 100M IOPS SSDs also in the pipeline―SK Hynix targets AI storage with petabyte-class SSDs―NAND for AI. (10月28日付け Tom's Hardware)
→SK Hynixは、AIアプリケーション向けにAIN製品ラインを含むAI NAND戦略を導入した。AIN Dラインは3D QLC NANDを採用し、ペタバイトレベルの密度を実現している。AIN PラインはPCIe 6.0経由で最大1億回/秒の入出力処理を実現する高性能に特化しており、AIN Bラインは高帯域幅フラッシュテクノロジーを活用し、超高性能を実現する。

◇SK Hynix, a critical Nvidia supplier, has already sold out chips for 2026 as AI demand booms (10月29日付け CNBC)
→1)*SK Hynixの第3四半期の売上高は前年同期比で約39%増加した。
  *営業利益は同62%増加した。
  *同社はAIブームの恩恵を受けている。
  *同社は、AIデータセンターサーバー向けに使用されるHBMの主要サプライヤーである。
 2)SK Hynixは、AIチップセットに使用される高帯域幅メモリの需要急増に牽引され、過去最高の四半期売上高と利益を報告した。同社は2026年までに生産能力を拡大する計画で、次世代HBM4チップはまもなく発売される予定であるが、すでに供給は完売している。
 3)SKハイニックスは、AIデータセンター向け高帯域幅メモリチップの需要急増を受け、過去最高の四半期売上高と利益を報告した。同社は2026年までに大規模な生産能力増強を計画しており、HBMの供給は2027年まで完売する予定で、競合他社に対する優位性をさらに強化する。

◇SK hynix keeps top spot in DRAM sector in Q3 (10月29日付け Yonhap News Agency)
→SKハイニックスは第3四半期、世界DRAM市場において35%のシェアと$13.7 billionの売上高でサムスン電子を上回りトップに立った。AI需要に牽引されたHBMにおける同社の優位性は、引き続き業績を押し上げている。

◇韓国SK、営業益最高 7〜9月、62%増 AI半導体好調 (10月30日付け 日経)
→韓国半導体大手SKハイニックスは29日、2025年7〜9月期の連結営業利益が前年同期比62%増の11兆3834億ウォン(約1兆2000億円)だったと発表した。生成AI向けの高性能メモリー半導体「HBM」の需要拡大が寄与した。四半期ベースで売上高・営業利益ともに過去最高だった。
 営業利益は創業以来初めて10兆ウォンを超えた。売上高は39%増の24兆4489億ウォンだった。

そしてQualcommであるが、NvidiaやAMDに対抗、AIアクセラレータへの取り組みが以下の通りである。

◇Qualcomm announces AI chips to compete with AMD and Nvidia - stock soars 11% (10月27日付け CNBC)
→1)*クアルコムは、新たなAIアクセラレータチップをリリースすると発表した。
  *AIチップ市場はNVIDIAが独占しており、AMDが2位と目されている。
  *Google、Amazon、MicrosoftおよびOpenAIも、クラウドサービス向けに独自のAIアクセラレータを開発している。
 2)クアルコムは、同社初のAIアクセラレータチップ「AI200」と「AI250」を発表し、長らくNVIDIAが独占してきたデータセンター市場に参入した。AI推論をターゲットとしたこれらのチップは、消費電力の低減とメモリ容量の拡大を約束している。発表後、クアルコムの株価は11%上昇した。

◇Qualcomm launches accelerators for inference―Qualcomm unveils AI inference accelerators to rival Nvidia (10月28日付け Electronics Weekly (UK))
→1)Qualcommは昨日、NVIDIAに対抗する2つのAI推論アクセラレータカードとラック(racks)を発表した。
 2)Qualcommは、生成型AI推論をターゲットとしたAI推論アクセラレータカードとラックを発表した。AI200は、カードあたり768GBのLPDDRを搭載し、ラックレベルのパフォーマンスを提供する。一方、AI250は、near-memoryコンピューティングを採用することで、より高い帯域幅と低い消費電力を実現する。どちらも直接水冷、PCIeおよびイーサネットをサポートしており、NVIDIAの競合製品と目されている。

◇Qualcomm soars after taking aim at Nvidia with new AI chips (10月28日付け South China Morning Post)
→1)クアルコムは、AIモデルの作成と実行に使用されるAIアクセラレータ市場への参入を目指している。
 2)クアルコムは、AI200チップとデータセンター向けコンピューターを発表した後、株価が11%上昇し、15ヶ月ぶりの高値を付けた。急成長中のAIアクセラレータ市場におけるNVIDIAの優位性を狙うものである。2026年に発売予定のこれらのチップは、優れたメモリ性能と電力効率を約束している。

11月に入って、今年を如何に締めるか、巡らすタイミングであるが、AIの熱気の推移および関連各社の動きに当面目が離せないところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□10月28日(火)

米中首脳会談を巡って、先週末からの3日連続の最高値更新、その後2日は下げたが、最後は上げて6ヶ月続伸となった今週の米国株式市場である。

◇米株3指数が連日高値、米中対立の緩和期待 金は一時4000ドル割れ (日経 電子版 06:06)
→27日の米株式相場は3日続伸し、ダウ工業株30種平均は前週末比337ドル高の4万7544ドルで取引を終えた。連日で最高値を更新した。多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種株価指数やハイテク株比率が多いナスダック総合株価指数も最高値を付けた。米中対立が緩和に向かうとの期待が広がった。

□10月29日(水)

◇米国株3指数が連日の最高値 米中首脳会談に期待、金は続落 (日経 電子版 07:39)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、終値は前日比161ドル78セント(0.34%)高の4万7706ドル37セントだった。3営業日続けて過去最高値を更新した。米中貿易摩擦の緩和や米利下げ観測に加え、エヌビディアなど個別に好材料の出た銘柄への買いが主要株価指数を押し上げた。

□10月30日(木)

トランプ大統領は、今回の訪問で、摩擦懸案を抱える中国以外に、我が国、韓国との首脳会談が行われている。

◇米韓首脳、関税交渉で合意 自動車15%に引き下げ 対米直接投資、現金で$200 billion 李大統領、原潜開発にも意欲 (日経)
→トランプ米大統領と韓国の李在明大統領は29日、韓国南東部の慶州で会談した。交渉が続いていた相互関税と自動車関税の25%から15%への引き下げについて首脳間で合意した。李氏は東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえ、韓国が原子力潜水艦を開発することへの理解を求めた。
 米韓は7月に関税交渉で大筋合意していた。米国が相互関税と自動車関税を15%に引き下げる代わりに、韓国側は$350 billion(約53兆円)規模の対米投資を約束した。

◇NYダウ反落、74ドル安 FRB議長「12月利下げ既定路線でない」 (日経 電子版 05:16)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5営業日ぶりに反落し、前日比74ドル(0.2%)安の4万7632ドルで引けた。米連邦準備理事会(FRB)は同日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利下げを実施したが、パウエル議長は記者会見で12月の利下げについて「既定路線というにはほど遠い」と発言。下げ幅は一時250ドルを超えた。

◇トランプ米大統領と中国・習国家主席が会談 貿易摩擦など協議 (日経 電子版 13:12)
→トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は30日、訪問先の韓国・釜山の金海国際空港で会談した。米中関係安定の重要性を確認。両国の貿易摩擦の緩和や合成麻薬フェンタニルの密輸対策も協議したとみられる。

◇Trump and Xi, Hoping to Ease Trade War, Agree to 1-Year Truce (New York Times)
→激しい貿易戦争を緩和しようとする一連の試みが失敗した後、トランプ大統領と中国の習近平国家主席は、世界最大の二大経済大国間の確執を深めた多くの物議を醸した関税や報復措置の多くを撤回する1年間の休戦に合意した。

□10月31日(金)

◇NYダウ109ドル安 遠い米中摩擦の緩和、防衛やレアアース株に買い (日経 電子版 08:26)
→30日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比0.2%(110ドル)安の4万7522ドルで終えた。AI関連の投資拡大懸念からテック株が売られたことに加え、米中貿易交渉の成果が市場の期待に届かなかったとの見方が重荷になっている。緊張緩和には時間がかかるとして、米国の防衛やレアアース関連株に買いが入った。

□11月1日(土)

Huawei問題などで関係が途絶えていた中国とカナダの首脳会談も行われている。ともに米国との懸案を抱えるなかの接触である。

◇中国カナダ首脳、8年ぶり会談 「華為事件」で悪化した関係修復図る (日経 電子版 06:07)
→カナダのMark Joseph Carney首相は31日、中国の習近平国家主席と会談した。公式会談は2017年以来。両国関係はカナダによる中国通信機器大手、華為技術の副会長逮捕や中国によるカナダ人の死刑執行などで悪化していた。両国とも関税交渉を巡って米国との対立が続く中、関係改善を進めたい考えだ。

◇NYダウ反発40ドル高、アマゾン10%高 7年9カ月ぶり6カ月続伸 (日経 電子版 06:28)
→31日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比40ドル高の4万7562ドルで取引を終えた。前日に好調な四半期決算を発表したアマゾン・ドット・コムが相場を支えた。AI期待や10月後半に開かれたFOMCでの利下げ観測を追い風に、ダウ平均は月間で6カ月連続で上昇。2018年1月以来の連騰記録となった。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

利益を確保した直近四半期など経営面、そして人材面、連携と、立て直しを図る動きが続いている。

◇Intel beats on sales in first earnings report since U.S. government became top shareholder (10月23日付け CNBC)
→1)*インテルは第3四半期の売上高が予想を上回ったと発表し、PCs向けコアx86プロセッサの需要回復を示唆した。
  *インテルの株価は年初来で87%以上上昇している。
  *これは、米国政府が8月に10%の株式を保有する筆頭株主になって以来、インテルにとって初めての発表となる。
 2)PCプロセッサの需要回復を受け、インテルは予想を上回る売上高を計上し、株価は6%上昇した。同社は$4.1 billionの純利益を計上し、政府およびNVIDIAからの投資を確保したほか、供給制約にもかかわらずチップ事業の継続的な成長を強調した。
 3)インテルの四半期決算は、PCチップ需要の回復を受け予想を上回り、株価は6%上昇した。同社は$4.1 billionの利益を計上し、米国政府から$5.7 billionの資金を調達した。また、NVIDIAやワシントンとの提携を強化しつつ、第4四半期も安定した利益を見込んでいる。

◇[News] Intel Reportedly Eyes Retired TSMC Veteran Wei-Jen Lo, Advanced Node Pioneer, to Lead R&D (10月28日付け TrendForce)
→インテルは、TSMCの2nmプロセスおよびEUVプロセスのブレークスルーを支えた中心人物である元TSMCを退いたベテラン、Wei-Jen Lo氏を、サブ2nmプロセス開発競争における研究開発の指揮官として招聘すると報じられている。この動きが事実であれば、インテルが米国の支援を受けてファウンドリー事業を拡大する中で、台湾の半導体業界に衝撃を与える可能性がある。

◇Intel CEO calls US govt 10% stake TSMC-inspired supply-chain model―Intel CEO: US stake secures chip future, mirrors TSMC model (10月28日付け DigiTimes)
→2025年10月28日に開催された未来投資イニシアチブにおいて、インテルのリップ・ブー・タンCEOは、米国政府が最近同社の株式10%を取得したことは、米国の半導体業界の将来を確保するための意図的な動きであると述べた。

◇Intel shifts assembly and testing to Vietnam, plans tech talent recruitment (10月29日付け Digitimes)
→インテルは、効率性と競争力を高めるため、組み立て、梱包、および試験業務の一部をコスタリカからベトナムのサイゴン・ハイテクパークに移転する。これにより、インテルは世界中で2万人の人員削減を実施するが、ベトナムはインテルのグローバルサプライチェーンにおける役割を拡大する。

◇Intel And BOE Collaborate To Introduce 1Hz Refresh Rate And Multi-Frequency Display For Extended Battery Life―Intel, BOE team up on ultra-efficient display tech (10月30日付け Wccftech)
→インテルはBOE(BOE Technology Group Co., Ltd.:北京)と提携し、ノートパソコン向けに超高効率ディスプレイ技術を導入した。これには、消費電力を65%削減できる1Hzのリフレッシュレートが含まれる。この提携には、コンテンツと明るさに基づいてエネルギー消費を最適化するマルチ周波数ディスプレイとSmartPower HDRも含まれる。


【Samsung関連】

予想を上回る直近四半期業績があらわされている。SK Hynixとの販売高を巡る拮抗ぶりがうかがえている。三つ折りスマホも公開されている。

◇Samsung’s third-quarter profit more than doubles, beating estimates on strong demand from AI chips (10月29日付け CNBC)
→1)*営業利益は12兆2000億ウォンに増加し、会社予想とアナリスト予想を上回った。
  *メモリチップの売上高は過去最高を記録し、サムスンのデバイスソリューション(DS)部門の売上高は33兆1000億ウォンに達した。
  *サムスンは、NVIDIAの先進的なHBMチップの認定試験に合格し、SKハイニックスから世界メモリ市場の首位を奪還したと報じられている。
 2)サムスン電子は、AIサーバーの需要急増に後押しされ、営業利益が前四半期比で2倍以上に増加し、第3四半期に力強い回復を記録した。売上高は前年同期比8.85%増加し、チップ利益は10倍に急増し、メモリ市場の急回復を示した。

◇サムスン、三つ折りスマホを初公開 25年内に販売へ (10月30日付け 日経 電子版 11:51)
→韓国サムスン電子は同社初となる三つ折りスマートフォンの実機を公開した。内側と外側にある2つの折り目はほぼ180度曲げられ、広げた際の画面サイズは一般的なスマホの約3倍になる。早ければ2025年内に発売する。韓国・慶州で31日から開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて設けた技術展示場で公開した。

◇サムスン、半導体8割増益 7〜9月営業 AI需要で好調 (10月31日付け 日経)
→韓国サムスン電子が30日発表した2025年7〜9月期の事業別業績は、半導体部門の営業利益が前年同期比81.3%増の7兆ウォン(約7500億円)だった。AIサーバーやパソコンなど主力の半導体メモリーの需要が好調に推移し、3四半期ぶりの増益に転じた。
 半導体部門の売上高は13.1%増の33兆1000億ウォンだった。このうちメモリーは19.9%増の26兆7000億ウォン。いずれも四半期ベースで過去最高を更新した。大容量のデータ処理を可能にする「HBM」で先端品の開発が進んだ。汎用DRAMの需要も伸びた。


【Nexperia問題関連】

車載用半導体を巡る中国とオランダの間の論争問題が、以下の経緯となっている。米中摩擦に起因して複雑な立ち位置の欧州の構図の推移に、引き続き注目するところである。

◇Nexperia crisis: Sino-Dutch dispute over chipmaker puts car industry supply chain at risk (10月26日付け South China Morning Post)
→1)ネクスペリア社をめぐる論争の鎮静化を目指し、中国のWang Wentao商務大臣がブリュッセルでEUの担当者と会談する様子に注目が集まっている。
 2)オランダによる中国企業。ネクスペリア社の買収は、中国との外交摩擦を引き起こし、世界的な自動車用半導体不足への懸念を高めている。EUと中国の協議が続く中、ネクスペリア社のオランダと中国拠点間の緊張関係は、供給の安定性を脅かしている。

◇Nexperia’s China factory cuts output as Dutch takeover deepens global chip supply tensions (10月27日付け South China Morning Post)
→1)ネクスペリア社の中国主要工場は、オランダ当局による本社接収を受け、生産を削減した。
 2)ネクスペリア社のDonggua工場は、ウェハ不足と中国・オランダ間の緊張の高まりを受け、生産を大幅に削減した。この減速は、オランダによる同社の接収、中国政府による輸出制限、そして世界的な自動車用半導体供給への懸念の高まりを受けてのものだ。

◇Nexperia case risks damaging everyone's interests (10月29日付け China Daily)
→1)時代遅れの半導体技術の盗難を避けるための買収は「ばかげている」上、法律違反や二国間関係の侵害のリスクがあると、Zhang Zhouxiang(張周祥)氏がブリュッセルで報じた。
 2)専門家らは、中国のWingtech社がネクスペリア社の半導体技術を盗んでいるというオランダの懸念を軽視し、ネクスペリア社は350nmプロセスによる基本的な自動車部品を製造していると指摘した。アナリストらは、ネクスペリア社の優位性は最先端の半導体技術ではなく、規模とコスト効率にあると指摘した。

◇Automaker Production Stoppages Begin Over Semiconductor Shortage―Honda starts temporary production reductions and stoppages this week at North American factories (10月29日付け Wall Street Journal)
→自動車メーカーは、今週ホンダの北米工場で始まったシンプルなマイクロチップの不足による生産混乱を懸念し始めており、世界中に広がると見込まれている。オランダに拠点を置く半導体メーカー、ネクスペリア社が今月初めに中国からの製品輸出を停止したことを受け、世界の自動車業界は同社による潜在的な影響を懸念している。

◇EU tech chief Virkkunen to meet chipmaker Nexperia amid supply worries (10月31日付け Reuters)
→EUの技術担当トップ、Henna Virkkunen氏はXで、オランダ企業、ネクスペリア社に関連する供給逼迫の深刻化を懸念する中、金曜31日に同社と会談する予定だと述べた。「明日、@Nexperiaと会談する。2026年初頭に予定されている#ChipsAct 2.0に向けて重要な教訓が得られるであろう」とビルクネン氏はXで述べた。

◇A ‘war room’ mentality: How auto giants are battling the Nexperia chip crunch (10月31日付け CNBC)
→1)*自動車業界は2020年以降、サプライチェーンの問題に直面してきたが、今回は米中間の地政学的緊張が混乱への懸念を引き起こしている。
  *問題は、オランダのサプライヤーであるNexperia社の半導体であり、同社は中国企業のWingtech Technology Co.が所有していたが、オランダ政府に買収された。
  *ホンダは、生産削減を発表した最初の自動車メーカーである。
 2)米中間の緊張が高まる中、オランダ政府がNexperia社を接収したことで半導体不足が発生し、世界の自動車メーカーは新たな混乱に直面している。ホンダは生産を削減し、フォルクスワーゲン、ステランティス(Stellantis)などのメーカーは、供給を管理し、より広範な操業停止を回避するために「作戦室」を設置している。

◇Netherlands faces pressure to surrender control of Nexperia after Xi-Trump summit (10月31日付け South China Morning Post)
→1)中国政府は、米国が更新した輸出規制を一時停止すると表明。これを受け、オランダ政府は半導体メーカーNexperiaの扱いを急がされている。
 2)米国が厳格な「50%子会社」輸出規制を1年間停止したことを受け、オランダ政府は中国資本の半導体メーカー、Nexperiaの接収措置を中止するよう、新たな圧力に直面している。これにより緊張は緩和されるものの、米中ハイテク競争を背景に欧州の立場は複雑化している。

◇ネクスペリア、中国に半導体ウエハー供給停止 車生産への影響懸念に拍車 (10月31日付け 日経 電子版 20:04)
→オランダに本社を置く中国資本の半導体メーカー、ネクスペリアが中国にある自社の組み立て工場への半導体原料の供給を止めたことが31日わかった。同社が中国で8割を担う最終製品の生産ができなくなる。半導体不足で世界の自動車メーカーが生産の停止や縮小に追い込まれる可能性が高まった。


【OpenAI関連】

AI関連でGAFAMに加えて目が離せないChatGPTのOpenAIを巡る動きである。
事業化路線、IPOの歩み具合に注目である。

◇OpenAI says U.S. needs more power to stay ahead of China in AI: ‘Electrons are the new oil’ (10月27日付け CNBC)
→1)*OpenAIは、AI分野で中国に先んじるため、米国が新たなエネルギー容量への投資を大幅に増やすようホワイトハウスに要請した。
  *このスタートアップ企業は、膨大な電力を必要とする野心的なインフラ整備を計画している。しかし、その電力がどこから供給されるのかは不明である。
  *OpenAIは、米国に対し、毎年100ギガワットの新たなエネルギー容量を建設することを約束するよう促した。
 2)OpenAIは、米国がAI競争で中国に遅れをとるリスクがあると警告し、エネルギー容量を大幅に拡大するよう求めた。同社は、中国が昨年429ギガワットの拡張を行ったことを例に挙げ、AIインフラを支えるために毎年100ギガワットの新たな電力供給を求めている。

◇OpenAI、組織再編でIPOに布石 出資のMicrosoftは時価総額4兆ドル (10月29日付け 日経 電子版 05:44)
→米オープンAIは28日、組織再編を完了したと発表した。開発資金を集めやすい営利企業を中核にし、新規株式公開を視野に入れる。ビジネス路線に傾倒する一方、公益性を重視するNPOが監督する体制を残した。資本提携の継続を決めた米マイクロソフトは株価が上昇し時価総額4兆ドル(約600兆円)を回復した。

◇OpenAI、評価額150兆円でIPO準備 ロイター報道 (10月30日付け 日経 電子版 10:20)
→ロイター通信は29日、米オープンAIが企業価値の評価額を1兆ドル(約152兆円)として新規株式公開(IPO)の準備を進めていると報じた。早ければ2026年にも申請する可能性があり、史上最大規模のIPOになるという。
 関係者の話として、オープンAIは早ければ26年後半にも米国でIPO申請し、27年のIPOを目指していると伝えた。


【中国市場関連】

自立化を目指す中国の半導体市場の伸び、その一方、偽造半導体も見られる以下の内容である。

◇中国国産化、育つ1兆円企業 時価総額、政府支援で欧米超えも 市場は半導体やロボ注目 (10月28日付け 日経)
→中国株式市場で上海総合指数が3営業日続伸し、心理的な節目となる4000の大台に接近した。投資テーマとなっているのが政府による国産化推進策だ。マネーの向かう先は半導体やロボ、ソフトウエアまで幅広い。兆円単位の時価総額になる企業が相次ぎ、欧米や日本勢の競合を上回る事例もある。「政策に売りなし」を地でいく展開となっている。
 中国の半導体メモリー大手、ChangXin Memory Technologies(CXMT)の親会社がIPOの準備に入った。早ければ2026年1〜3月期に上海市場に上場する。

◇[News] Shanghai’s IC Industry in High Gear, Up 11.3% in the First Three Quarters of 2025 (10月29日付け TrendForce)
→上海のGDPは、2025年の第1四半期から第3四半期にかけて、集積回路、バイオメディカル、およびAIの力強い成長に牽引され、前年比5.5%増の4兆700億人民元に達した。IC生産量は、強力な政策、投資ファンド、そして1,200社を超える企業からなる活気あるテクノロジーエコシステムに支えられ、11.3%と急増した。

◇CXMT begins producing advanced LPDDR5X memory chips as China narrows tech gap―CXMT begins mass production of LPDDR5X DRAM chips (10月30日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→中国の大手メモリチップメーカーであるCXMTは、中国の半導体能力向上の新たな兆候として、新世代DRAM製品の量産を開始した。LPDDR5X DRAMの量産は、競争激化の中、上海でのIPOに向けて準備を進める同社の能力向上を反映している。

◇Shenzhen police busts syndicate selling counterfeit Infineon and Texas Instruments chips (10月30日付け South China Morning Post)
→1)偽造輸入品への需要は、米国の技術輸出規制を受け、国内で外国産半導体の供給が逼迫していることを反映している。
 2)深セン警察は、中国メーカーに偽造輸入半導体を販売していたシンジケートを摘発した。これにより、米国の輸出規制が続く中、高性能半導体の闇市場が明るみに出た。このグループは廃棄された半導体をインフィニオン、TIおよびアナログ・デバイセズ(ADI)の製品として偽装しており、安全上のリスクをもたらしている。

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