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TSMC対抗に向けたファウンドリー対応の進捗現況:インテル&Samsung

AI(人工知能)関連需要が非常に大きく引っ張る現下の半導体市場であり、中核のプロセッサのNvidia、それを製造するTSMC、そしてHBM(高帯域幅メモリ)をリードするSK Hynixなど限られたサプライヤにどうしても注目させられている。パソコン、スマホはじめ従来の応用分野のもと、長年にわたってサプライヤランキング首位のインテル、および近年メモリ活況でインテルに代わって首位になったこともあるSamsungは、現時点の動き&状況はどうか。
両社ともに、最先端微細化のファウンドリー対応で、圧倒的にリードするTSMCに対抗すべく、立て直しを図っている現時点でもある。この側面での現下の状況に、業界各紙の関連する内容から以下アプローチしている。

≪早期立て直し&本格回復を願って≫

インテルは、先週木曜24日に第2四半期決算を発表したばかりであるが、その厳しい結果を受けての今後の取り組みについて、それぞれの見方があらわされている。

◇Intel facing another crossroads: 18 A or 14A process node―While Intel’s fab business is the elephant in the room, the company is showing some progress on other fronts. (7月25日付け EE Times)
→1)7月24日にインテルが2025年第2四半期決算を発表する前夜、業績の好転を予想する人はほとんどいなかった。業界関係者が待ち望んでいたのは、苦戦を強いられている同社の受託製造事業の方向性であった。カリフォルニア州サンタクララに本社を置くインテルは、より迅速で、よりフラットで、そしてより機敏な組織の構築を目指しており、同社の再編計画も注目を集めていた。
 2)インテルの2025年第2四半期報告書は、事業再編とファウンドリの課題を抱えながらも、慎重な進捗状況を明らかにした。Lip-Bu Tan CEOは、外部顧客を失うことでファブ事業が廃業に追い込まれる可能性があり、機動性とイノベーションを高めるために人員削減や戦略転換が必要になると警告した。

◇Intel drops 8% as chipmaker’s foundry business axes projects, struggles to find customers (7月25日付け CNBC)
→1)*インテルは予想を上回る第2四半期決算を発表したが、事業立て直しに苦戦する中、ファウンドリーの課題を警告した。
  *Lip-Bu Tan CEOは、顧客との確約を得た新技術への投資のみを行うと述べ、欧州にある2つの工場の生産を停止した。
  *タンCEOは、大手AI企業の競合に市場シェアを奪われたインテルの立て直しを目指し、3月にCEOに就任した。
 2)インテルの株価は、14Aチッププロセスの外部顧客確保が不透明な中、ファウンドリーコストの大幅な削減を発表したことを受けて8%以上急落した。収益は予想を上回ったものの、純損失の拡大と市場シェアの継続的な低下に直面している。

◇US chipmaking nears death: Intel warns it may give up on cutting-edge chips (7月25日付け Business Insider)
→1)*インテルは、財務上の懸念から、次世代チップ「14A」の開発を中止する可能性がある。
  *14Aチップは、台湾の大手半導体メーカー、TSMCとの競争において、インテルにとって極めて重要な存在となっている。
  *14Aの開発中止は、米国の半導体製造に大きな打撃を与え、海外生産への依存度を高めることになる。
 2)インテルは、主要顧客を確保できない場合、次世代チップ「14A」の開発を中止する可能性があると警告した。中止すれば、米国の半導体製造に大きな打撃を与えるリスクがあり、世界の半導体業界における台湾TSMCの優位性をさらに譲り渡すことになる。

◇Intel is cutting more jobs as CEO Tan tries to fix manufacturing missteps (7月25日付け Reuters)
→インテルは今年、新CEOのLip Bu Tan氏がコスト重視の経営再建を推進する中、20%以上の人員削減を計画している。同氏は、今後は抑制のない支出を控え、工場の建設規模を縮小し、そして需要がある場合にのみの半導体投資を優先すると誓っている。

◇インテル、難路の単独再建 4〜6月、6四半期連続赤字 受託の提携交渉進まず (7月26日付け 日経)
→米インテルの苦境が続いている。24日に発表した2025年4〜6月期の最終損益は6四半期連続の赤字となり、ドイツでの半導体工場など投資計画を撤回して15%の人員削減も発表した。ただ業績回復に欠かせない受託生産事業での提携交渉に進捗は見られない。単独再建をめざす経営戦略は危うい賭けとなる。

◇Will Intel give up on chip manufacturing? Here’s how that could have big ripple effects. (7月28日付け MSN)
→インテルは、主要顧客を確保できない場合、次世代14Aチッププロセスの開発を断念する可能性があり、ファブレス事業への移行の可能性を示唆している。これは半導体業界に混乱をもたらし、TSMCやサムスンなどの競合他社に利益をもたらす一方で、装置サプライヤーに打撃を与える可能性がある。

「14A」の開発で主要顧客と組めるかどうか、そして再建に向けた諸施策に注目せざるを得ないところである。

CPU新製品が次の通り発表されている。

◇Intel quietly rolls out 'new' Core 5 CPUs that look suspiciously like 12th Gen chips - Core 5 120 and Core 5 120F enter the budget gaming market with i5-12400 specs and 100 MHz boost―Leak: Intel's Core 5 CPUs resemble 12th-gen chips―Hello Core i5-12400, is that you? (7月31日付け Tom's Hardware)
→Intelは、Core 5 120およびCore 5 120Fプロセッサをひっそりと発表した。ハードウェアウォッチャーのmomomo_usからのリークによると、これらは第12世代Alder Lakeチップのリブランド版のよう。これらのプロセッサは、6コア12スレッド構成のCore i5-12400によく似ている。

苦境の中、プロジェクトの継続を望むところである。

◇[News] Intel’s Ohio Plant Dilemma: Build at High Cost - or Pay Back Billions in Government Aid (8月1日付け TrendForce)
→インテルは、14Aノードの外部パートナーが必要であることを理由に、$28 billion規模のオハイオ州ファブプロジェクトを2030年以降に延期した。建設は継続中で、CHIPS法に基づく資金も一部投入されているにもかかわらず、プロジェクトを中止すれば数十億ドル規模の罰金が科される可能性がある。

次に、Samsungについて、Teslaとの大型半導体供給契約の締結が、以下の通り確認されている。

◇Elon Musk confirms Tesla has signed a $16.5 billion chip contract with Samsung Electronics (7月28日付け CNBC)
→1)*イーロン・マスク氏は、テスラがサムスンと$16.5 billion規模の半導体供給契約を締結したことを確認した。
  *サムスンは相手先を明らかにしなかったが、契約の有効開始日は2025年7月26日(受注日)、終了日は2033年12月31日であると述べた。
  *木曜31日に決算発表を控えているサムスンは、第2四半期の利益が半減すると予想している。
 2)サムスン電子は、2025年7月から2033年までの$16.5 billion規模の半導体供給契約をテスラと締結した。テスラのCEO、イーロン・マスク氏は、サムスンのテキサス州の工場でテスラの次世代AI6チップを生産することを明らかにした。この契約の戦略的重要性とさらなる成長の可能性を強調した。

◇Samsung reportedly lands 'massive' $17bn foundry deal (7月28日付け New Electronics (UK))
→サムスンは、同社の半導体事業に大変革をもたらす可能性のある、約$17 billion相当の大規模なファウンドリー契約を発表する予定だ。

さらに契約の中身があらわされている。

◇Samsung foundry wins $16.5 bil. chip order from Tesla―Samsung lands $16.5B Tesla deal for AI chips in Texas (7月28日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子は、テスラの完全自動運転システム向けAI6チップの製造のため、テスラと$16.54 billionの半導体ファウンドリー契約を締結した。契約期間は2033年までで、テキサス州テイラーにあるサムスンの2ナノメートルプロセスを活用する。テスラのCEO、イーロン・マスク氏は、この契約の戦略的重要性を強調し、実際の生産量は当初の契約額を上回る可能性があると述べた。

◇Samsung Electronics wins 22.8 tln-won order for chips (7月28日付け Yonhap News Agency)
→サムスン電子は、非公開の主要顧客と22兆8000億ウォン($16.4 billion)の半導体供給契約を締結したと発表した。このファウンドリー契約は2033年12月31日まで有効だが、経営上の機密性のため詳細は非公開となっている。

◇Samsung’s Multi-Billion Tesla Deal―First Sign of Turnaround! (7月29日付け EE Times)
→EE Timesが調査したアナリストによると、7月27日に発表されたテスラとサムスンによる$16.5 billionの取引は、苦境に立たされているこの半導体メーカーにとって、回復の兆しとなる可能性がある。
 テスラのCEO、イーロン・マスク氏はXへの投稿で、サムスンがテキサス州テイラーにある稼働停止中の工場で、テスラの次世代AIチップを製造すると述べた。

◇サムスン、2.4兆円で半導体受託生産 8年契約、テスラ発注か (7月29日付け 日経)
→韓国サムスン電子は28日、8年で22兆7647億ウォン(約2兆4330億円)に上る半導体受託生産(ファウンドリー)の受注契約を結んだと発表した。発注先は非開示だが、米ブルームバーグは米テスラの可能性があると報じた。サムスンの半導体部門は業績が低迷しており、大型受注で事業立て直しにつなげる。

◇[News] Samsung Reportedly Mulls Taylor Expansion, Advanced Packaging in Sight After Tesla Deal (7月30日付け TrendForce)
→報道によると、サムスンはテスラの大型チップ契約を獲得した後、テキサス州テイラーの工場に先進的なパッケージングを追加するため$7 billionの投資を検討している。一方SKハイニックスは正式な計画はないものの米国でのメモリ生産を検討している。

TeslaのCEO、Musk氏のコメントである。

◇Tesla CEO Musk says he discussed chip deal with Samsung Chairman Lee (7月30日付け Yonhap News Agency)
→Elon Musk氏は、テスラとサムスンが$16.5 billion規模のAIチップに関する契約を締結したことを確認し、李会長との綿密な協議を経て、強固なパートナーシップを強調した。サムスンはテスラの次世代AI6チップをテキサス州の工場で生産する予定であり、その戦略的重要性を強調している。

◇サムスン電子11カ月ぶり高値 光るテスラ効果 課題はコスト競争力 (7月30日付け 日経 電子版 10:17)
→韓国のサムスン電子株が約11カ月ぶりの高値圏に到達している。浮上のきっかけの一つが米テスラと半導体の受託生産契約を結んだことだ。サムスンは先端半導体の技術開発が遅れたために顧客獲得に苦心してきた。主力の半導体部門では業績不振にあえいでおり、今回の大口受注は業績回復に向けた突破口になるとの期待を高めている。

Samsungの直近四半期の業況である。

◇Samsung’s profit more than halves, missing expectations as chip business plunges 94% (7月31日付け CNBC)
→1)*サムスンは第2四半期の売上高が74兆6000億ウォンとなり、前年同期の74兆700億ウォンからわずかに増加したと発表した。
  *第2四半期の営業利益は4兆7000億ウォンで、前年同期の10兆4400億ウォンから大幅に減少した。
  *特に、デバイスソリューション部門の営業利益は前年同期比93.8%減少した。
 2)サムスン電子は第2四半期の営業利益が4兆7000億ウォンとなり、半導体事業の93.8%の落ち込みにより予想を下回った。しかし、売上高はわずかに増加し、74兆6000億ウォンとなった。同社は、AIとロボティクスの成長に牽引され、下半期には回復すると見込んでいる。

AI需要でSamsungを直近データで上回ったとされるSK Hynixであるが、同社の活況を伝える内容が次の通りである。

◇SK hynix becomes most-desired workplace for college students: survey (7月28日付け Yonhap News Agency)
→韓国の半導体メーカー、SKハイニックスは、大学生の希望する就職先に関する調査で初めてトップに立ち、7.7%が高給を理由に挙げた。第4四半期の好業績とAIチップにおけるリーダーシップが、サムスン電子を上回って人気を獲得する要因となった。

◇IFTLE 635: KAIST / Tera HBM Roadmap (7月30日付け 3DInCites)
→KAISTとTERALABは、HBM4からHBM8までを含む将来のメモリ規格を概説したHBMロードマップを公開した。HBM4は2026年までに次世代AI GPUとデータセンターの基盤となる予定で、AMDとNVIDIAは今後発売予定のMI400およびRubin製品に採用されることを発表した。

◇韓国SK、サムスン超え 半導体DRAM シェア首位 先端品けん引、最高益 (8月1日付け 日経)
→韓国SKハイニックスが生成AI向けの駆動に欠かせない先端半導体「HBM」で強みを発揮している。半導体メモリー「DRAM」市場では30年間首位にあったサムスンを抜き、4〜6月期は四半期ベースで過去最高益を記録した。年商で4倍以上の巨人を相手に互角以上の戦いを繰り広げている。

以上、インテルおよびSamsungそれぞれの立て直しに向けた取り組みの進捗現時点である。注目せざるを得ない両社であり、適当なタイミングでの確認を要するところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□7月28日(月)

トランプ大統領との関税交渉関連の動きが、以下続いていく。

◇米国のEU関税、自動車含め15%で合意 EUは$600 billion投資 (日経 電子版 04:43)
→トランプ米大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は27日、貿易交渉で合意に達したと発表した。トランプ氏によると、米国がEUにかける相互関税や自動車関税の税率を15%に下げるかわりに、EUは米国からの$750 billion(約110兆円)相当のエネルギー購入や$600 billion超の対米投資を約束した。

□7月29日(火)

高値警戒の売りから、米国での利下げ観測後退、そして景気不透明感の推移で、5日連続で下げた今週の米国株式市場である。

◇NYダウが反落 米EU関税合意は織り込み済み、高値警戒で売り優勢 (日経 電子版 05:35)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前週末比64ドル36セント安の4万4837ドル56セントで取引を終えた。米国とEUの貿易協議が27日に合意に達したが、前週既に「合意が近い」と伝わっていたため、さらに買い進める動きは限られた。

□7月30日(水)

◇NYダウ続落、204ドル安 ユナイテッドヘルスなど業績悪化銘柄に売り (日経 電子版 05:57)
→29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比204ドル57セント(0.45%)安の4万4632ドル99セントで終えた。四半期決算を発表したユナイテッドヘルス・グループやメルクが下落し、ダウ平均の重荷となった。30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、持ち高調整の売りも出た。

◇米中、関税停止を90日再延長で一致 トランプ氏の承認前提に (日経 電子版 06:54)
→米中両政府は29日、スウェーデンの首都ストックホルムで開いた閣僚級協議を終えた。米中両国は、互いに一時停止中の関税措置について停止期間をさらに90日間延長する方針を確認した。米国側は合意の成立にはトランプ米大統領の最終承認が必要だとしている。

米国の第二四半期GDPは、予想を上回る伸びである。

◇U.S. economy grew at a 3% rate in Q2, a better-than-expected pace even as Trump’s tariffs hit―US GDP growth rebounds to 3% in Q2 after Q1 decline (CNBC)
→1)*第2四半期の米国の国内総生産(GDP)は3%増となり、予想の2.3%増を上回り、前期の0.5%減から反転した。
  *第2四半期の消費者支出は1.4%増となり、前期の0.5%増から好転した。
  *同期間、輸出は1.8%減少した一方、輸入は30.3%減少し、第1四半期の37.9%増から反転した。
  *ドナルド・トランプ大統領はGDP報告を受け、連邦準備制度理事会(FRB)に対し、新たな利下げを要求した。
 2)商務省の速報値によると、米国のGDPは第1四半期の0.5%減から、第2四半期は年率3%増となった。予想を上回ったこの成長は、貿易収支の回復と消費者支出の増加に牽引され、関税交渉が続く中で経済が幅広く底堅く推移していることを示している。

□7月31日(木)

利下げを求めるトランプ大統領、慎重なFRB、引き続く対立である。

◇FRBが金利維持、副議長ら2人が利下げ求め反対 32年ぶり分裂劇 (日経 電子版 04:18)
→米FRBは30日開いた米FOMCで政策金利の据え置きを決めた。副議長ら2人が利下げを求めて反対票を投じた。FRBは次回会合の9月まで時間をかけて関税政策の影響を見極める。

◇NYダウ続落171ドル安 FRB議長、早期利下げに慎重姿勢 (日経 電子版 06:15)
→30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比171ドル71セント(0.38%)安の4万4461ドル28セントで終えた。米FRBのパウエル議長が米FOMC後の記者会見で早期の利下げに慎重な見方を示した。金融緩和が米経済を支えるとの見方が後退し、主力株に売りが出た。

◇米韓、車・相互関税15%で合意 トランプ氏「対米投資$350 billion」 (日経 電子版 09:45)
→トランプ米大統領は30日、韓国との貿易交渉で合意したと発表した。韓国にかける予定だった25%の関税率を15%に下げる代わりに、韓国側は$350 billion(約52兆円)の投資を約束したという。自動車関税も15%に下げる。
 自身のSNSで発表した。トランプ氏は韓国による$350 billionの投資について「米国が所有し管理する」という一文を加えた。

□8月1日(金)

◇NYダウ続落、330ドル安 米利下げ観測の後退が重荷 (日経 電子版 06:44)
→7月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続落し、前日比330ドル30セント(0.74%)安の4万4130ドル98セントで終えた。朝発表の米指標が経済や労働市場の底堅さを示す内容だったが、米FRBの利下げが遠のくとの見方から、株売りが広がった。ユナイテッドヘルス・グループやメルクといったヘルスケア株の下げも重荷となった。

◇トランプ氏が新関税率の大統領令に署名 日本15%、7日に発動 (日経 電子版 10:15)
→トランプ米大統領は7月31日、相互関税の新たな税率を各国に課す大統領令に署名した。約70カ国・地域に10〜41%の新たな税率を示した。8月7日に発動する。日本の税率は現行の10%から15%に上がる。

◇Trump Unveils New Tariff Regime to Reshape Trade Order―Trump introduces sweeping global tariffs (Bloomberg)
→1)*トランプ大統領、世界の最低関税率を10%に据え置き
  *米国が、台湾に20%、スイスに39%、カナダに35%の関税を設定
  *米国が、タイとカンボジアに19%の関税を課す
  *貿易関係に基づき、各国を3つのグループに分類
  *合意に至らず、多額の黒字を計上したパートナーには、より高い関税率を設定
  *市場が影響を見極める中、アジア株は米国株先物とともに下落
 2)ドナルド・トランプ大統領は、輸入品に10%の最低関税を課す包括的な新関税制度を発表した。米国との貿易黒字が大きい国には、さらに高い税率が課される。この引き上げられた関税は、15%から始まり、一部の国では最大40%に達する。米国国境管理当局による短い移行期間を経て、木曜7日から施行される予定だ。

□8月2日(土)

◇NYダウ5日続落、542ドル安 雇用統計下振れで景気不透明感 (日経 電子版 06:11)
→1日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続落し、前日比542ドル40セント(1.22%)安の4万3588ドル58セントで終えた。1日発表の7月の米雇用統計は労働市場の軟化を示唆した。経済の先行き不透明感が強まり、主力株に売りが広がった。ダウ平均の下げ幅は790ドルに達する場面もあった。


≪市場実態PickUp≫

【Nvidia関連】

インテルおよびSamsungの現況について今回上で取り上げたが、AI需要を引っ張るNvidiaには目が離せないところ。以下今週の関連する動き&内容であるが、特に米国政府が中国向け出荷を求めたばかりの「H20」半導体に「バックドア」疑惑が持ち上がって中国側が反発しており、またぞろ米中摩擦の火種になる可能性である。

◇NVIDIA Is Possibly Preparing A New GeForce RTX 3050 Desktop Variant As The Latest GPU-Z Version Adds Support For An “Ada”-Based RTX 3050 A GPU―Nvidia may launch Ada-based RTX 3050 variant, reports say (7月27日付け Wccftech)
→NVIDIAは、最新のGPU-Zバージョン2.67.0で示されているように、「Ada Lovelace」AD106ダイを搭載したGeForce RTX 3050デスクトップ版を準備しているよう。これまでモバイル版のみが確認されていたこのバージョンは、AmpereベースのRTX 3050の2,048基からCUDAコア1,792基に削減されたAD106ダイを搭載している。

◇Nvidia orders 300,000 H20 chips from TSMC due to robust China demand, sources say―Sources: Nvidia orders 300K H20 chips amid demand (7月28日付け Yahoo/Reuters)
→関係筋によると、NVIDIAは中国からの旺盛な需要を受け、TSMCにH20チップセット30万個を発注した。既存の在庫を活用する計画から変更したという。これは、トランプ政権が4月に禁止されていたH20チップセットの中国への販売再開を許可したことを受けた動きだ。NVIDIAはチップの出荷に輸出許可が必要だが、商務省はまだ承認していない。

◇Review: Nvidia GeForce RTX 5060 Graphics Card―Review: Nvidia's RTX 5060 falls short against AMD's RX 9060 XT ―Nvidia’s usual budget winner can’t keep up with the competition this year. (7月29日付け Wired)
→ハイエンドGPUsの好調な展開を経て、NVIDIAは勝利を収めた。RTX 5080とRTX 5070は発売当初は高価で入手困難であったが、入手できた人にとっては素晴らしいパフォーマンスであった。多くの人はグラフィックカードに500ドル以下しかかけず、購入のチャンスを辛抱強く待っていた。残念ながら、RTX 5060は同価格帯のAMD製品に及ばず、その差はさらに拡大している。

◇Nvidia says its chips have no 'backdoors' after China flags H20 security concerns―China raises security concerns about Nvidia's H20 chip (7月31日付け Reuters)
→*中国のサイバースペース規制当局は、NVIDIAにリスクの説明を求めたと発表
 *米国議員はAIチップの追跡を求めている
 *中国は2023年、セキュリティリスクを理由にMicronからの政府調達を禁止した

◇Chinese semiconductor, AI firms form pact as Nvidia faces inquiry on H20 chip’s security (7月31日付け South China Morning Post)
→1)Model-Chips Ecosystem Innovation Allianceには、ファーウェイのAscend部門やテンセントが出資するAI企業、StepFunなど10社が参加している。
 2)ファーウェイやテンセントが出資するStepFunなど、中国のAI・半導体企業グループは、NVIDIAのH20チップをめぐる懸念や地政学的緊張の高まりを受け、AIプロジェクト向け国産プロセッサの普及促進を目的としたモデルチップ・エコシステム・イノベーション・アライアンスを結成した。

◇中国、NVIDIA半導体の脆弱性指摘 米中協議に影響も (7月31日付け 日経 電子版 16:04)
→中国当局は31日、米エヌビディアが中国市場向けに開発したAI半導体「H20」のセキュリティーに脆弱性があると発表した。米中協議を受けて米国側はH20の対中輸出を認めたが、今後の協議の行方に影響する可能性がある。
 中国のネット統制を担う国家インターネット情報弁公室が発表した。

◇NVIDIA半導体、迂回輸出監視に米が位置追跡案 中国反発で火種に (8月1日付け 日経 電子版 05:35)
→米エヌビディアのAI半導体を巡って、米中の応酬が再び激しさを増してきた。米国が迂回輸出を防ぐために、中国向けのAIチップには位置情報を追跡できる機能を盛り込もうとしているためだ。米中は貿易協議でエヌビディア製半導体の対中出荷を再開する方向で事実上合意したばかりだが、新たな火種が生じたことで交渉が難航する可能性が出てきた。

◇Nvidia denies its China-bound H20 AI chips have ‘backdoors’ after Beijing’s security concerns (8月1日付け CNBC)
→1)*中国サイバースペース管理局によると、NVIDIAは木曜31日、同社のH20グラフィックプロセッサユニットがもたらす潜在的な国家安全保障リスクについて、北京当局と会談した。
  *米国政府は今月、NVIDIAに対し、4月に課された事実上の禁止措置を撤回し、H20 AIチップの中国への販売再開を許可した。
 2)中国の規制当局がセキュリティ上の懸念を表明したことを受け、NVIDIAはH20 AIチップに「バックドア」が存在するとの疑惑を否定した。米国は輸出を保証しているものの、北京の監視と米国議会による追跡要求は、チップの国家安全保障リスクをめぐる緊張を高めている。


【トランプ政権&関税関連】

関税交渉、FRBとの対立など上にも示しているが、主に半導体関連の視点で以下の取り出しである。

◇NASAで4000人退職届け出、全体の20%超 予算削減に反発か (7月27日付け 日経 電子版 07:00)
→米主要メディアは26日までに、航空宇宙局(NASA)で全職員の20%超に当たる約4000人が退職を届け出たと一斉に報じた。トランプ政権の予算削減に対する反発などが背景にあるとみられ、将来の宇宙開発に影を落とす可能性がある。
 政治専門紙ポリティコは「米国で最も優秀な頭脳の大量離職は、米国が宇宙で果たす将来の役割を妨げる可能性がある」と強調。さらに「退職の波はまだまだ続くかもしれない」と指摘した。

◇What the CHIPS Act Looks Like Now ―A flurry of contracts went to a range of projects (7月28日付け IEEE Spectrum)
→2022年制定の米国CHIPS法案は、米国国内半導体製造業の復興を目指しており、トランプ大統領の任期2025年前に$30 billion以上の予算が計上されている。その後、活動は鈍化しているが、新政権による見直しや議会による主要プログラムの予算配分検討が進む中、専門家は忍耐を促している。

◇India overtakes China in smartphone exports to the U.S. as manufacturing jumps 240%, report shows (7月29日付け CNBC)
→1)*第2四半期の米国のスマートフォン輸入のうち、インドで組み立てられたスマートフォンは44%を占め、前年同期のわずか13%から大幅に増加した。
  *米国向けスマートフォン出荷における中国製の割合は、4〜6月期には前年同期の61%から25%に縮小した。
  *「インド向け計画は可能な限り迅速に進めている」と、中国の電子機器メーカー、Agilian Technology(アジリアン・テクノロジー)のCEO、Renauld Anjoran(ルノー・アンジョラン)氏は述べた。
 2)インドは第2四半期の出荷台数が前年同期比240%増加し、中国を抜いて米国向けスマートフォン輸出大国となった。これは主に、貿易摩擦を背景にアップルが製造拠点の移転を加速させたことが要因である。中国のシェアは急落し、ベトナムも米国市場でシェアを伸ばした。

◇US to release result of chip imports probe in two weeks (7月29日付け Taipei Times)
→1)ドナルド・トランプ米大統領が関税引き上げの可能性を示唆したことを受け、Howard Lutnick米商務長官は日曜27日、トランプ政権は半導体輸入に関する国家安全保障調査の結果を2週間以内に発表する予定だと述べた。
  ラトニック長官は、トランプ大統領と欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長との会談後、記者団に対し、EUが「すべての問題を一度に解決する」より広範な貿易協定の交渉を模索した「主な理由」の一つは、この調査にあると述べた。
 2)トランプ政権は2週間後に半導体輸入に関する国家安全保障調査の結果を発表する予定で、関税引き上げにつながる可能性がある。この調査は、外国製半導体への依存を減らし、米国と台湾の製造業への投資を促進することを目的としている。

◇トランプ関税で動く企業 米国向けスマホ出荷、インドが中国抜く (7月29日付け 日経 電子版 22:16)
→シンガポールの調査会社、Canalysは28日、米国で販売するスマートフォンについて、インドからの出荷台数が4〜6月に中国からの出荷を上回ったと発表した。トランプ米政権の対中追加関税を避けるため、米アップルがスマホ「iPhone」の組み立てを中国からインドに移管していることが影響した。

◇半導体関税「15%になる」 赤沢経財相インタビュー 合意の進捗管理「議論ない」 (8月1日付け 日経)
→日米関税交渉にあたった赤沢亮正経済財政・再生相が31日、日本経済新聞の単独インタビューに応じた。米国が今後発表するとされる半導体関税について「15%は取れる」との見通しを語った。米側は日本が合意した対米投資の進捗を四半期ごとに管理すると説明しているが、赤沢氏は交渉で議論していないとの認識を示した。


【SEMI関連】

SEMI発表のデータに注目、特に世界シリコンウェーハ出荷の直近4−6月四半期における前四半期比のけっこうな増加である。不安定要因多々のなか、今後の半導体市場にどうあらわれ来るかの視点である。

◇SEMI Reports Worldwide Silicon Wafer Shipments Increase 10% Year-on-Year in Q2 2025―Quarter-over-Quarter Shipment Growth in 2025 Indicates Early Signs of Recovery Beyond Memory (7月29日付け SEMI)
→2025年第2四半期の世界のシリコンウェーハ出荷量は、AIチップの需要が堅調だったことから、前年同期比9.6%増、前四半期比14.9%増となり、サプライチェーンと地政学的な不確実性が続いているにもかかわらず、回復の兆しを見せている。

◇SEMI sees 7.4% 2025 growth for manufacturing equipment―SEMI forecasts 7.4% growth in chip equipment (7月29日付け Electronics Weekly (UK))
→SEMIによると、半導体製造装置の売上高は2025年に$125.5 billionに達し、前年比7.4%の増加となる見込み。

◇SEMI Reports Worldwide Silicon Wafer Shipments Increase 10% Year-on-Year in Q2 2025―Quarter-over-Quarter Shipment Growth in 2025 Indicates Early Signs of Recovery Beyond Memory (7月29日付け SEMI)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)は、シリコンウェーハ業界の四半期分析において、第2四半期の世界のシリコンウェーハ出荷量が前年同期の3,035 MSIから9.6%増加し、3,327 MSIとなったと発表した。前四半期比では、今年第1四半期の2,896 MSIから14.9%増加しており、メモリ以外の一部の事業分野で回復の兆しが見え始めている。
 「HBMを含むAIデータセンターチップ向けのシリコンウェーハ需要は引き続き非常に堅調。」と、SEMI SMG会長であり、GlobalWafersの副社長兼チーフ監査役であるLee Chungwei氏。「他のデバイスのファブ稼働率は概して低水準にとどまっているが、在庫レベルは正常化に向かっているよう。シリコン出荷の方向性は前向きな勢いを示しているが、地政学的な要因やサプライチェーンの動向が今後どのような影響を与えるかは依然として不透明である。」
※世界シリコンウェーハ出荷(MSI[100万平方インチ])

1Q20242Q20243Q20244Q20241Q20252Q2025
MSI
2,834
3,035
3,214
3,182
2,896
3,327
YoY %
-13.2
-8.9
6.8
6.2
2.2
9.6


◇Wafer shipments grow pointing to early signs of recovery beyond memory―SEMI SMG: Silicon wafer shipments up 9.6% (7月30日付け New Electronics (UK))
→1)SMGは、シリコンウェーハ業界の四半期分析において、世界のシリコンウェーハ出荷量が前年同期の3,035百万平方インチから9.6%増加し、3,327百万平方インチとなったと発表した。
 2)SEMI Silicon Manufacturers Groupによると、世界のシリコンウェーハ出荷量は第2四半期に前年同期比9.6%増加した。これは、AIデータセンター向けチップとHBMの堅調な需要によるものである。出荷量はメモリ以外の分野で回復の兆しを見せているが、他のデバイスの工場稼働率は依然として低い状態である。


【Microsoft】

GAFAMの業績発表に注目するなか、Microsoftの好調ぶりがうかがえる以下の内容である。AI活況に乗り遅れているとされるAppleと対照的であり、今回冒頭に示すインテル、Samsungと通じるところを感じるものである。

◇Microsoft、OpenAI技術の利用延長に進展 米報道 (7月30日付け 日経 電子版 04:31)
→米ブルームバーグ通信は29日、米マイクロソフトが米オープンAIの技術を利用できる期間を延ばす方向で両社が協議していると報じた。交渉が長引いている提携内容の見直しをめぐり、合意に向けて前進しているという。具体的には、人間並みの知能を持つ「汎用人工知能(AGI)」の達成をオープンAIが宣言した後も、マイクロソフトが自社サービスに先端技術を使えるようにする。

◇Microsoft、時価総額4兆ドル到達 NVIDIAに次ぐ2社目 (7月31日付け 日経 電子版 23:03)
→米マイクロソフトの時価総額が31日、4兆ドル(約595兆円)を超えた。AIブームをけん引する米半導体大手エヌビディアに続く世界2社目となる。30日に発表した2025年4〜6月期決算が好調で、AIの利用拡大が主力のクラウド事業の業績を押し上げる期待が高まった。

◇Microsoft、「4兆ドルクラブ」入りへ AI収益化で先行 (7月31日付け 日経 電子版 13:50)
→米マイクロソフトの時価総額が4兆ドル(約595兆円)に到達する見通しになった。30日発表した2025年4〜6月期決算はAIを支えるクラウドコンピューティング事業が大きく伸び、純利益で過去最高を更新した。提携関係の米オープンAIの急成長を自社収益につなげる戦略が奏功した。

◇50歳のMicrosoft、GAFA横目に「4兆ドルクラブ」入り 中年の危機越え (8月1日付け 日経 電子版 06:57)
→米マイクロソフトの時価総額が31日に4兆ドル(約600兆円)を超えた。パソコン時代にITを制した老舗は長く「中年の危機」に苦しんできたが、それを乗り越えて再び世界のトップ集団に返り咲いた。AIシフトに道筋をつけ「GAFA」と呼ばれる米テクノロジー大手をしのぐ成長期待を集めている。


【CoWoP】

TSMCがちょうど1年前、ガラス基板(パネル)を支持材に使う半導体パッケージングに参入、AI向け半導体のチップやパッケージの巨大化に対応、と発表していたが、以下の通り新たなキーワードの趣きで注目、取り上げている。

◇NVIDIA Considering CoWoP (Chip-on-Wafer-on-Platform PCB) Package Starting With Rubin GR150 GPUs―Reports: Nvidia explores CoWoP packaging for Rubin GPUs (7月30日付け Wccftech)
→DigiTimesの報道によると、NVIDIAは次世代Rubinグラフィックス・プロセッシング・ユニットにchip-on-wafer-on-platform(CoWoP)実装の採用を検討している。報道によると、NVIDIAは今年中にGB100 GPUで、来年にはRubinチップでこの実装のテストを開始し、2026年後半に生産を開始する予定だ。

◇[News] CoWoP: A Game-Changer Beyond CoWoS-Or Just Hype? PCB Makers Stay Skeptical (7月30日付け TrendForce)
→WallstreetCN は、CoWoP技術はコストを削減し、従来の基板を回避してチップのパッケージングに革命を起こす可能性があると主張しているが、PCBメーカーは依然として懐疑的であり、アナリストはNVIDIAのRubin Ultraがまだ実証されていないアプローチを採用するかどうか疑問視している。

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