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キオクシアは正念場、巨大投資断行で突破口を切り開け!〜四日市にY7棟建設

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東芝の半導体事業はここに来て、正念場を迎えたと思えてならない。NANDフラッシュメモリで世界第2位を誇る東芝の持分会社であるキオクシアは、10月に予定していた東京証券取引所への新規上場を延期すると発表した。一般的には、米中貿易戦争のあおりでファーウェイへの輸出が不透明になったことなどが挙げられている。

しかし、真相としては違うだろう。筆者も外国人投資家や国内の主な証券会社のアナリスト筋にヒヤリングをかけたが、実際のところは「キオクシアには全く魅力がない。株を買う気にはなれない。NANDフラッシュ1本槍の会社は不安定であり、先行きが暗い。DRAMを持っていないことが致命傷だ」。こうした意見が続出したのだ。

キオクシアの2020年上半期の成績は、かなり良いものであった。確かにここに来て、NANDフラッシュメモリは価格下げと需要バランスの崩れがあり、見通しが暗いという状況はあった。ところが、つい直近の状況で言えば、価格は下げ止まった。つまりは、在庫はほとんどなくなった。来年上期に向けてメモリ半導体は上昇機運に乗りつつある。それでもキオクシアの人気がない。

10月末になって、キオクシアは四日市工場内にY7棟を建設する計画をぶち上げた。なんと1兆円の投資である。四日市工場は現状で敷地80万m2であり、Y7棟建設に伴い、20万m2の土地を増やすことになるのである。実に四日市は100万m2の広大な敷地を持つ国内ぶっちぎりトップの半導体大型量産工場にジャンプアップするのだ。

この計画を打ち出したことには裏がある。韓国のSKハイニックスは、約1兆円の資金でインテルのNANDフラッシュメモリを買収することを決めている。一方で、SKハイニックスはキオクシアの大手株主であるからして、あわよくばキオクシアも吸収したい、との狙いもチラホラと聞こえてきた。

こうした状況下にあって、東芝としては根性を見せなければならない時を迎えた。Y7棟という大型工場建設を打ち出して、国内外に元気な姿をアピールする必要があるのだ。そしてまた、SKの野望も閉じ込めてしまう必要がある。

一方で、東芝は得意とするパワー半導体の分野においても、大型投資断行をほぼ内定した。東芝デバイスが持つ量産拠点である加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)の敷地内に、300mmウェーハ対応のパワー半導体の量産ラインを一気に整備するのだ。得意とするパワーMOSFETの能力を拡大する一方で、新たにIGBTの分野も強化していく。

データセンターの一気急増、さらにはハイブリッド車、EV、燃料電池車などのエコカー加速などにより、パワー半導体という分野は4兆〜5兆円という巨大市場が見込めるのだ。これは数年前のNANDフラッシュメモリとほぼ同じ規模であり、この分野で勝たなければ東芝の将来はない。競合する三菱電機はすでにシャープの福山工場を手に入れた。当然のことながら、300mmのパワーIGBT量産で勝負をかけてくるだろう。これに対抗する必要がある。

NANDフラッシュしか持っていないことが、キオクシアのボトルネックであるならば、東芝デバイスを傘下に加えてNANDとパワーデバイスの両面で車載やデータセンターを攻めていくという作戦があるじゃないか、と筆者には思えてならない。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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