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未来は先進センサー技術が切り開く!〜シリコンシーベルトのキーノート

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「新たなフロンティアランナーはなんだろう。ここに来てIT産業は明らかに鈍化しており、一種の踊り場を迎えている。長い歴史観で見れば、再び新時代を切り開くものが出てこない限り、我々の成長は止まったままになってしまうだろう。」

こう語るのは、韓国のサイエンス機関であるKAISTのディレクターであるChong-Min Kyung氏である。これは、毎年開催するシリコンシーベルトサミット福岡2013(今年は2月19日開催)初日のキーノート講演における発言である。周知のように、このサミットは今年で11回目を迎え、全国のクラスター運動の中でも成功例とされるシリコンシーベルト福岡の運動論を実証する場として、多くの半導体関係者の注目を集めてきた。半導体産業新聞を発刊する産業タイムズ社もこのイベントを後援しているのだ。また、日本半導体ベンチャー協会やセミコンダクターポータルなど多くの機関がこのサミットを支援しているのだ。

シリコンシーベルト福岡の活動は、国内外の注目を集めてきた。プロジェクトを開始する段階では、21社しかいなかった福岡エリアの半導体関連カンパニーは、10倍以上の213社に拡大してきた。また、アジアのハブともなっている福岡は、中国、台湾、韓国をはじめとするアジア諸国とも連動し、シリコンシーベルト運動を盛り上げてきた。特筆すべきは、人材育成に取り組む福岡システムLSIカレッジの活動であり、これまでに1万人の技術者養成に成功してきた。

さて、Chong-Min Kyung博士のキーノート講演はなかなかに鋭いものであった。彼はいきなりダウジョーンズによる工業株価指数を資料として取り上げた。それによれば、1920〜1930年代はこの指数が長く低迷してきたが、ジェットエンジンとナイロンの開発により1940年から一気に急上昇し始め、1965年までこの勢いは止まることがなかった。しかしながらそれ以降、1980年までの15年間にわたってまたも長い低迷の横ばい状況が続いていく。これを打ち破ったのは、なんといってもインテルによるマイクロプロセッサの開発と、IBMによるパソコンによる実量産化であった。そこから2000年までにいたる15年間はまさにIT技術の百花繚乱となり、ノートPC、デジタルカメラ、ゲーム機、ケータイ、スマートフォン、液晶テレビなどの製品がバカ売れし、株価指数をぐんぐんと押し上げていくのだ。

「ところが、2000年のITバブル崩壊から2012年にいたるまでの12年間は再び工業株価指数は横ばいが続いており、次の成長軌道を描けない。かつてのジェットエンジンやインテルのようなブレークスルーがなかなか出てこないのだ。しかしながら、我々は次の成長の出口を見つけなければならない。そうでなければ長い長い横ばいの経済を続けることになるからだ。」(Chong-Min Kyung博士)

さて、Chong-Min Kyung博士が強調するところによれば、今後の経済発展の鍵を握る半導体技術は‐淵┘優船奪廖↓3次元立体トランジスタ、スマートセンサー、ぜ\ぢ絅廛蹈札控蚕僂砲△襪箸いΑとりわけ、博士がリードする韓国政府の国家プロジェクトは、スマートセンサーによるスマートソサエティにあるといえる。つまり、半導体の高速演算技術は飛躍的に発展したが、これがひたすらITに向かったことによりほかの世界が切り開けなかった、と主張する。次世代のスマートセンサーが確立すれば、医療、環境、セキュリティーに貢献し、新たな発展社会と経済の成長が期待できるというのだ。

筆者も次世代半導体の方向性については、さまざま取材を試み新たな運動が起こっていることを逐次レポートしてきた。確かに、夢のカプセル内視鏡においては、消化器の中で自由に移動し、止まることのできる外部からの磁気センサー技術がものを言ってくる。しかしこれはまた実現できていない。また、いまやブームともなっているシェールガス革命においては、ピンポイントで埋蔵物を見つけるセンシング技術が重要となってくるのだ。さらに次世代自動車の安全走行を考えれば、周囲の環境(人、モノ、自動車)を常にセンシングし、衝突防止を瞬時に行うシステムの開発が進められている。これもまた、センシングテクノロジーがキーとなる。その意味ではChong-Min Kyung博士の主張するところは非常にうなずけるのだ。

それにしても、会場の人たちの意見を伺ったところ、「スマートセンサーという考え方はすばらしいが、それほど大きなマーケットになるのであろうか」という声が多かった。確かにセンサーチップは単価も安く、大量に使われたとしても半導体メモリーのような巨大市場を築くことはちょっと想定できない。はてさて、次の出口はどうなるのだろうと、思い悩みながら会場を出てきて、駅頭の雑誌の広告看板に眼を奪われた。そこにはこう書かれていたのだ。

『2030年にあなたの仕事はなくなるだろう。進化したITに人間そのものが勝てなくなってくる。すべてはITに制御された機械によって置き換えられる』。そうなれば新聞社の取材も、コンピューターがやる時代がくるのだろうか。あなおそろしや、である。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷渉

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