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半導体での日韓協力は今後の重要課題だ〜忠北テクノパークはJASVAと連携強化

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「日韓戦といえば、サッカーにしろ、野球にしろ、殺伐とした雰囲気が流れる。ライバル関係と言えば言葉はいいが、もう少し違う感情がそこに流れている。ところが最近では環境やエネルギー関連の分野で日韓連合軍を組むケースも出てきており、産業ベースで言えばこれまでとはかなり異なる領域へ突入していったようだ。」経済産業省幹部が目を見開いて言った言葉である。

さて、2010年10月26日のこと、ザインエレクトロニクスの飯塚哲哉社長率いる日本半導体ベンチャー協会(JASVA)の幹部は、韓国の忠北テクノパークを表敬訪問した。すでに両者は今後の半導体に関する共同開発や事業提携などの分野で相互協力するための覚書を取り交わし、サインもしているのだ。先般行われたJASVAのカンファレンスには忠北テクノパークの幹部が挨拶し、講演を行い、JASVAのメンバーと交流した。それに対する返礼としてJASVA側幹部が表敬訪問したことになる。

忠北テクノパークはさまざまな分野でR&Dに力を入れている。ソウルから約2時間という地の利を生かし、とりわけ中小企業の競争力強化に動いている。電子情報部品産業支援センターでは、車載向け電装部品、プリント基板、センサー部品、さらにはリチウムイオン電池や太陽電池など、次世代を担う部品産業を育成すべく、全力を挙げている。電磁波試験、振動試験などさまざまな高額機械をそろえており、半導体についても前工程から後工程に至る専門設備を一通りラインアップしているのだ。

また、同テクノパークは、ファブレス半導体ベンチャー企業を徹底的にサポートしている。韓国にはファブレスカンパニーは150社が存在している。よく知られている通り、韓国の半導体産業は圧倒的にDRAMやフラッシュなどのメモリー分野が強いが、システムLSIについては全世界のシェアがたった2%しかない。その意味で、ノンメモリー分野の育成強化が重要課題となっており、ファブレスベンチャー育成に走っているのだ。従業員150人以上を持つベンチャーは数社おり、コアロジック、シリコンワークス、Mテクビジョン、テレチップスなどがあり、上位20社では約2000名の雇用を生み出している。

忠北テクノパークのプレジデントである南昌鉉氏は、「JASVAに加盟する日本のファブレス半導体ベンチャーに、ぜひ忠北テクノパークに進出してもらいたい」としており、それ以外でもチップの共同開発や設計の相互乗り入れなどは十分に可能と見ている。また中古半導体装置のベンチャー企業であるFHTの徐忠源代表理事は、「日本企業とのタイアップは最も重要なことであり、弊社の売上も8〜9割は日本向けとなっている」とコメントする。

サムスンやLGなどの巨大化が多く報道される中で、韓国のIT産業は日本にとって大きな脅威であり、かつまた現状では日本メーカーにとって、とても勝てない存在となっている。それゆえに日韓関係は悪化していると思う向きが多い。ところが、中小企業や装置・材料さらにはベンチャーの分野で、日韓協力は加速度的に進み始めた。こうした日韓連合軍の視線の向こうには、いまやモンスターとなってしまった中国の巨大な存在があるのだろう。国土が狭く、技術開発と輸出産業で稼ぐしかないというのは、日韓両国ともに同じ条件であり、仲間意識がここにきて出てきたとも言えよう。

忠北テクノパークの南プレジデントは26日夜のJASVAとの交流会の最後にみんなで唱和して下さいと前置きした上で、次の言葉を叫んだのだ。「みんな、ともだちだ。ともだちだ。ともだちだ。」

産業タイムズ 取締役社長 泉谷 渉

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