セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

日韓の遺恨試合〜半導体・液晶で負けたニッポンは韓国の背中がますます遠い

|

「サッカーにしても野球にしても、日韓戦は見るのが辛い。まるで、積年の恨みをぶつけるような遺恨試合に思えてならないからだ。昔のプロレスだってアントニオ猪木と大木金太郎の激突は場内が騒然となったものだ」。

韓国の雄、サムスン電子が、名城大学の飯島澄男教授の技術を利用して、曲がる大型ディスプレイ用の材料開発に成功した、という記事を読みながらつぶやいた金融アナリストの言葉である。飯島教授は、ナノテク素材の代表格であるカーボンナノチューブの発見者として知られ、近い将来にノーベル賞受賞確実と言われている。しかして、この有名教授の開発成果は日本企業に導入されることはなく、外国勢のサムスンに採用されて開花することになるのだ。

こうなれば、日韓の遺恨試合などといっている場合ではない。ニッポンが誇る最先端技術は次々と海外に流出し、とりわけ韓国勢が日本の研究成果をいち早く吸収していく。その結果として、エレクトロニクスの分野では韓国勢は日本勢に大差をつけてぶっちぎっている。携帯電話や液晶テレビの世界では、先を行く韓国勢の背中がますます遠くなる。半導体において日本勢は、かつて世界シェア53%をとったこともあるが、最近では15%程度まで後退し、見る影もない。液晶の分野においては90%以上のシェアをとっていたが、今や10%もないのだ。

加えて韓国は国家を上げて、日本の有力メーカーを韓国に誘致するべく全力を挙げている。釜山市は、日本企業専用の工業団地を造成中であり、ここに環境エネルギーや自動車、エレクトロニクスの最先端技術をもつ日本の部材メーカーを大量に進出させようというのだ。この誘致に当たって出されている優遇措置は凄まじい。最大で15年間の法人税無税、土地の値段はリース方式ではあるが日本の10分の1という安さだ。加えて設備投資をすれば15%以上の補助金をばら撒くとさえ言っている。これでは日本の地方自治体がいくら工場誘致に力をいれようとも、苦戦するのは当たり前だ。

韓国の忠清北道も日本企業との提携を狙って、日本半導体ベンチャー協会(JASVA)との事業提携を決定した。日本のもつ最先端ベンチャー技術を呼び込み、共同開発さらにはベンチャー企業の工場誘致なども想定しているようだ。特に日本のファブレス半導体ベンチャーを多く誘致したいとしている。JASVAには、ザインエレクトロニクス(液晶コントローラーの世界シェアトップ)、アクセル(パチンコ向けシステムLSIのシェアトップ)、アーズ(通信向けセンサーのパイオニア)など有力なファブレスの半導体ベンチャーが存在する。こうした企業の持つ技術を忠清北道に移植したいとの思いが強くあるのだ。

「骨抜きになっていくとはこのことだ。ただでさえ、ガチンコ勝負で日本勢は韓国勢に大きく遅れをとっている。この上、カーボンナノチューブや半導体ベンチャーの技術もとられてしまえば、とんでもないことになる。日韓は、これからも仲良くしていくべきだとは思うが、最近になって食べるキムチの味は苦くて辛くて仕方がない。」
こうため息をつきながら、かの金融アナリストは、ギリシャ悲劇で沈んでゆく日本の株価を憂いながらそっと涙をぬぐうのであった。

産業タイムズ 取締役社長 泉谷 渉

月別アーカイブ