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2010年はLED設備投資が爆裂する!!〜韓台に対抗する日本勢の戦略に注目

「このまま手をこまねいていれば、日本が得意とするLEDのマーケットは韓国勢・台湾勢にやられまくってしまう。何故に大型設備投資の計画を打ち出さないのだろう」。LED(発光ダイオード)の化合物材料を供給する企業の営業マンがうめくように言った言葉である。確かに焦点になっている白色LEDについてはこれまで、日本の日亜化学工業、豊田合成など日本勢が圧倒的なシェアを誇ってきた。

しかしながら、液晶TVバックライト需要という巨大なアプリケーションができたことや、世界的なグリーンニューディール革命の影響で、省エネルギー革命がにわかに注目を集めてきたことなどもあって、韓台のこの分野に対する設備投資は巨大化の様相を呈している。

サムスンをはじめとする韓国勢は、2010年にもトータルで2000億〜3000億円以上の設備投資を実行することは確実と言われている。また、台湾勢はこれまで、赤色・緑色・青色などの廉価版タイプについてはビックサプライヤーにのし上がっているが、2010年は白色LEDについても大型設備投資を実行する計画をつぎつぎと打ち出している。彼らの強みは、中国工場をうまく活用し、価格を劇的に引き下げることが可能であることだ。

日本勢の白色LEDに対する投資計画は、これまでのところはどうもかったるい。思い切った投資計画が出ていないのだ。しかし水面下では、ようやくにして白色LED重視という方向に変わりつつある。LED照明やLED採用の液晶テレビを強化するシャープは、主力半導体工場である福山の6インチライン3万枚の半分程度をすべてLED採用テレビに転用することを決めた。現在600台が存在している主要設備のうち、300台は中国へ売却すると見られる。福山工場と言えば、シャープのLSI製造の一大拠点であるが、なんとこれがLEDの次期量産拠点に生まれ変わるというのだ。設備の大半は中古の改造で済むが、MOCVDなどの高額装置は新たに買わなければならないだろう。

東芝、NEC、パナソニックグループなどの大手メーカーも、ここにきて大型投資計画を模索し始めた。東芝は北九州にLEDの拠点を持つが、早ければ2010年度にも九州エリアにもう一カ所のLED量産工場を新設するという噂も流れている。この場合は500億〜1000億円規模の大型投資が想定されるだろう。現状で国内最大手の照明メーカーであるパナソニック電工も、パナソニックと共同歩調で量産拠点新設のスケジュールとスケールを検討している。こちらもやるならば500億円を超えてくる投資を想定するだろう。

こうした動きに連動するように、LED基板の増強計画も加速してくる見込みだ。サファイヤ基板を中心とするLED基板は、2010年には生産能力10万平方メートルに引きあがると言われ、2011年には20万平方メートルまで急増することは確実と見られる。こうなれば、LED基板を得意とする電気化学工業、ニッパツ、メイコーなどシェアの高いメーカーが生産拡張に走ることは間違いない。メイコーは中国におけるシェア50%を狙っており、新たな工場建設も十分に想定している。また京セラも滋賀県下にあるLED基板工場の増強を進めているが、2010年には新工場建設も視野に入れている。

日本経済は円高・デフレの不安におびえながら、この一年間は設備投資を凍結するというマインドが強かった。しかし2010年度は、LEDの生産拡張に、投資に対するファイティングスピリッツが再燃することになるだろう。

産業タイムズ社 取締役社長 泉谷 渉
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