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「AI需要は今後も確実に増加し2026年売上高は更に3割増予測」-TSMC会長談

世界最大のファウンドリである台湾TSMCの会長兼経営最高責任者(CEO)、C.C.ウェイ(魏哲家)氏は、2025年第4四半期決算説明会で、「AI需要の先行きに不安を持つ向きもあるが、当社AI関連顧客やそのまた顧客にインタビューした結果、AI需要は今後も確実に増加継続すると確信を得た」とし、同社の2026年売上高は前年比30%と強気の予測を発表した。決算結果については、すでに津田編集長が報告しているので(参考資料1)、ここでは決算発表会でのウェイ会長の発言の中から特に注目される発言をいくつか取り上げて、著者の補足コメントと共に紹介しよう。

TSMC Earnings Conference

図1:TSMC2025年第4四半期決算説明会で機関投資家の質問に答えるC.C. Wei(魏哲家)TSMC会長兼CEO(中央) 出典:筆者がTSMC決算説明会中継ビデオよりスクリーンショット, 2026年1月15日


AIブームはバブルにあらず
Q:AIブームはバブルではないのか?AI需要は今後も継続するのか?
A:多くの機関投資家から今後もAI需要は本当にあるのか尋ねられたが、私(ウェイ会長)も投資家同様にとても不安だった。なぜなら、設備投資に年間約520億〜560億米ドルを投資することにしているので、慎重に行わなければ、TSMCにとって間違いなく大きな痛手となるからである。当然のことながら、私は過去〜4ヵ月間、顧客やそのまた顧客と多くの時間をかけて話し合ってきた。そして顧客の要求は現実のものだと確信するに至った。そこで、クラウドサービスプロバイダ全員とも話をした。実際、AIが彼らのビジネスに本当に役立っているという証拠を見せてくれた。ハイパースケーラは、ソーシャルメディアやソフトウェアが役立ち、顧客が継続的に増加していると皆一様に自信をもって述べていた。これより、私は、AI需要が今後とも継続して増加するという確信を得た。

筆者コメント:TSMC会長によれば、世界中のほぼすべてのAI関連企業は、TSMCの顧客であり、これらの顧客やそのまた顧客多数から生の声を聴くことで、AIブームがバブルではなく、需要が継続的に増加する確信を得たとしている。今後、設備投資を増額し、台湾のみならずグローバルに工場展開する根拠となっている。AIチップは、今後とも数年にわたり供給が需要に追い付かぬ状況で、熊本第2工場も原案のマチュア技術ノードによる車載用から先端技術ノード(2nm?)によるAI用に切り替える検討が行われているようである。このため、第2工場の建設は、昨秋以来ストップしている。同工場建設には経産省から補助金を得ることになっているが、霞が関情報によれば、生産品目の変更に際しては再交渉が必要なようである。ましてや南のTSMC熊本と北のラピダス千歳では成熟技術ノードと最先端ノードですみ分けることで調整されてきたからなおさらであろう。


TSMCは今後さらに成長を狙う
Q:2026年の見通しは?
A:2026年を迎えるにあたり、関税政策や部品価格上昇の影響による不確実性とリスクが存在することは認識しており、特に消費者関連市場や価格重視の最終市場セグメントにおいてはその影響が顕著である。堅調なAI関連の需要に支えられ、ファウンドリ2.0業界(参考資料2)は2026年に前年比14%の成長を遂げると予測している。TSMCは自社の最先端、高度なパッケージング技術に対する旺盛な需要に支えられ、業界の成長率を引き続き上回る業績を達成できると確信している。力強い成長の年となり、通期売上高は米ドルベースで約30%増加すると予想している。

筆者コメント:ファウンドリ2.0というのは、TSMC 独自の定義で、従来のファウンドリ業界の定義である前工程の生産受託から、後工程のパッケージング、テスト、そしてマスク製造、さらにはメモリ製造を除くすべてのIDMが手掛ける範囲まで対応領域を拡大した概念で、同社のフェンデル・ファンCFOによると、「設計から製造まで一貫して手掛けるIDMがファウンドリ市場に参入してきており、ファウンドリという境界があいまいになっているため、新たに定義した概念」だという。AI需要を背景に、設計から最終製品に近い状態まで一貫して提供することで、サプライチェーンの効率化と新たなビジネスチャンスを生み出す動きを指している。2026年にファウンドリ2.0の成長率は14%に対して、TSMC自体は2倍の30%成長すると予測している。

Q:AI需要とTSMC業績の長期的見通しは?
A:AI市場の最近の動向は引き続き非常に好調である。2025年には、AIアクセラレータからの売上が総売上の10%台後半を占めたと思われる。今後、コンシューマ、エンタープライズ、そしてAIセグメント全体でAIモデルの採用が拡大すると予測される。これにより、より多くのコンピューティング能力が求められ、最先端シリコンに対する堅調な需要を支えるだろう。
計画フレームワークに基づき、AIアクセラレータからの収益成長の予測を、2024年から2029年の5年間で50%台半ばから後半の年平均成長率(CAGR)に近づくように引き上げた。技術差別化と幅広い顧客基盤に支えられ、2024年からの5年間で、全体的な長期売上高成長は米ドルベースで25%のCAGRに近づくと予想している。

Q:米国への更なる投資計画は?
A:TSMCの海外拠点に関する決定はすべて、株主価値の最大化を目的としており、顧客のニーズに基づいていることをまずは強調しておく。米国アリゾナ州には、既に6つの前工程工場と2つの後工程(Advanced Packaging)工場、それに生産技術のR&Dセンター建設を決めており、第1工場(Fab21 Phase1)はすでに2024年第4四半期に量産体制に入っている。第2工場(P2)の建設はすでに完了しており、2026年にはツールの搬入と設置を行う。3番目の工場(P3)の建設はすでに開始しており、4番目の工場と最初の先進パッケージング工場については建設許可を申請中である。
さらに、アリゾナ州の計画を拡張して、複数年にわたるAI関連の非常に強い需要に柔軟に対応できるように、既存工場群の近接地に大きな土地の購入を完了し、将来に備えている。


TSMC Arizona fab

図2:(左)建設が次々と進むTSMC米国アリゾナ工場(Fab21)。手前中央がP1, 奥がP2(右)アリゾナでの工場配置レイアウト 出典:TSMC


筆者コメント:台湾メディアの報道によると、アリゾナの既存工場の近接地に900エーカー(約110万坪)の工場用地を、公開入札を通じて約1億9700万ドルで購入した。うわさでは、将来更に5つ以上の工場を建設する予定だという。

ところで、米国商務省は1月15日、台湾との相互関税交渉が合意に達したと発表した。その中で、商務省は、米国で新たに半導工場を建設する台湾企業に対し、建設期間中は計画する生産能力の最大2.5倍までは関税なしで輸入することができることにした。割当量を超えた場合、通商拡大法232条による関税を下回る優遇税率が適用される。工場完成後も生産能力の1.5倍まで関税なしで輸入することができるとした。これは、米国で先端半導体工場増設中のTSMCにとって極めて有利な関税措置となっており、トランプ大統領に対するTSMCの米国投資のアピールが奏功したといえる。

参考資料
1. 「TSMCの2025年第4四半期決算、予想より上振れ、HPC需要依然強い」、セミコンポータル、(2026/01/1)
2. 服部毅、「TSMCがFoundry 2.0を提唱、設計から後工程まですべてを網羅する新コンセプト」、マイナビニュースTECH+、(2024/07/23)

国際技術ジャーナリスト 服部 毅
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