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TSMCが400億ドル以上の設備投資を決めた

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TSMCが2022年の設備投資額は400〜440億ドル(4.56兆円〜5兆円)になりそうだ、という見通しを発表した。1月14日の日本経済新聞が報じたように過去最高額の投資となる。前日の13日にはSEAJが2022年度の日本製半導体製造装置の販売額は、これも過去最高で5.3%増の3兆5500億円になりそうだと予測した。ロボットアームに強い安川電機など好調な企業は多い。

TSMCはここ1〜2年、設備投資を増額している。2021年は300億ドル、2019年は149億ドルだった。設備投資の結果、売上額も増え、2019年の346億ドルから2021年には568億ドルへと増加した。今回の発表は、2021年第4四半期における決算報告(図1)の場で発表された(参考資料1)。

Revenue by Technology / TSMC

図1 TSMCの第4四半期の売上額は前年同期比24%増の157億ドル 5nm製品売り上げを伸ばした 出典:TSMC


投資は、N5(5nmノード)、N4P(4nmノード級)、N4X(4nmノード級改)、N3(3nmノード)、N3E(3nm拡張)、N2(2nmノード)などのプロセス技術開発に70〜80%を使い、残りの10〜20%をスペシャルティ技術(CMOSイメージセンサなど)に、10%を先進パッケージングやマスク製作用の設備に使うという。3nmプロセスノードまではFinFET技術を使う。N3プロセスノードの量産は1年後と見ている。

今回の半導体不足の教訓から、自動車メーカーをはじめ大量に使う、パソコンやスマートフォンメーカーはある程度在庫を確保し始めているため、間もなく半導体不足は解消されその後、供給過剰になると警告する業界アナリストはいる。しかし、TSMCのMark Lu会長は、もちろんそのような一時的な落ち込みは承知の上で、今後数年間にわたってCAGR(年平均成長率)15〜20%成長し続けることから大きな投資に踏み切ったと述べている。TSMCにはすでに伸び続けている成長のエンジンがある;すなわちスマホとHPC(スーパーコンピュータや高速コンピュータの高性能コンピューティング)、IoT、自動車である。

これまでTSMCは大きな投資は数年に一度のペースでしか行ってこなかった。しかし、2020〜22年の3年間は大きな投資を続けている。その読みは、さらにその先の成長を見ていることに他ならない。IoT、AI、5G、自律化の大きなITのメガトレンドに沿って育成されるデジタルトランスフォーメーション(DX)やデータセンターコンピュータ、自動運転、知能ロボット、スマホなどの応用機器は、当分の間成長し続ける。

短期的な供給過剰は、すぐに解消され、またすぐ供給不足に陥る。これがこれまでの半導体の歴史だった。シリコンサイクルは、需要と供給の単純な繰り返しではなく、成長しながら繰り返すという曲線をこれまで描いてきた。だから、供給過剰になった底は数年前のピークよりも売上額(市場)が伸びているのである。決して元には戻らない。元よりも高い底値で繰り返すという、成長続けるシリコンサイクルであることをTSMCは理解している。だから大きな投資を行うのである。

SEAJは、2022年度だけではなく2023年度もプラス成長で、前年度比4.2%増の3兆7000億円となる見込だと発表した。やはり5G、スマホ、データセンター、AI、自動運転などが設備投資をけん引すると見ている。

半導体向けの産業ガス関連事業に、エア・ウォーターが500億円投資すると14日の日刊工業新聞が報じた。国内半導体メーカー向けガス供給設備やガス精製装置、熱制御機器の生産能力をあげるという。2030年までに同事業の売上額を現状の2倍に引き上げるとしている。

安川電機が2021年3〜11月期の連結決算の結果、売上額は3573億円、純利益が前年同期比2.2倍の307億円だったと発表した。12日の日経が報じたように、EVの普及に伴い、電池の組み立て工程にロボットの導入が進み、中国では5G基地局や太陽光発電などからの引き合いも強いという。

半導体不足に対して、日産自動車は10年先を見据えた先行開発から新車の搭載に必要な量産技術を確立するまで一貫してサプライヤーと協業する仕組みを構築した、と日刊工業が報じた。次世代の自動運転などはサプライヤーとの共同開発が欠かせないとの思いからだ。サプライヤーと長期協業する仕組みとして「アライアンスイノベーションパートナー(AIP)」を立ち上げ、サプライヤーの選定を始めたとしている。

参考資料
1. Financial Results -2021Q4, TSMC

(2022/01/17)

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