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ON Semiの新潟工場売却、キオクシアの連続黒字など半導体ニュースが活発

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1週間ほど前、米中堅半導体のON Semicondutorが新潟工場の売却を検討していると発表した。また、キオクシアは、2020年4〜6月期における売上額が2675億円、営業利益が147億円と前四半期(2020年1〜3月)の121億円に続き黒字を確保したことを発表した。5GでもADIがIntelと組む、ルネサスがRFアンプを発表する、など活況が続いている。

新潟工場の売却により、製造拠点を最適化し、高度に差別化されたパワー半導体やアナログ、センサ製品への注力を強化する、とニュースリリースは述べている(参考資料1)。新潟工場は車載品質の認定を受けた工場であり、品質管理基準IATF16949に準拠しているという。

ON Semiの新潟工場は、旧三洋電機のウェーハプロセス工場で、パワー半導体の製造が主体だった。2018年10月に旧富士通セミコンダクターの会津工場の株式を20%追加し、ON Semiは60%の株式を持つようになった。この時に会津工場の名称を「会津富士通セミコンダクターマニュファチャリング」から「オン・セミコンダクター会津」に変更した。ON Semiは会津の200mm工場を主力に据えるようで、2018年10月のプレスリリース(参考資料2)では、2020年前半をメドに出資比率を100%に引き上げる計画だと述べていた。2020年8月17日現在ではまだ100%に引き上げたという発表は行っていないが、どうやら製造の主力をパワーだけの新潟から、パワーだけではなくアナログやセンサも含めた会津に注力するようだ。

ON Semiは、GlobalFoundriesから買った米ニューヨーク州イーストフィッシュキル工場(旧IBM Microelectronics)で300mmウェーハプロセスの生産をこの第2四半期に開始した。同社の2020年第2四半期における売上額は前年同期比10%減の12億1350万ドルで、前期比では5%減だった。車載用途に強いON Semiだが、今年前半のクルマ市場のブレーキ(工場での稼働停止など)によって、車載に力を入れてきた半導体企業はどこも昨年よりも業績が悪い。しかし、近い将来のEV化をはじめとしてカーエレクトロニクス市場への未来に向けた投資を今行っている半導体メーカーは多い。

その一つ富士電機は、2023年までに1200億円を投資する、と8月14日の日経産業新聞が報じた。「従来主に鉄道向けだった電気式部品をトヨタ自動車の自動運転のEVに初めて納入する。新型コロナウイルスの影響で産業向け機器が落ち込む中、EV需要を成長のカギと位置づける」と同紙は述べている。同社の2019年度(2020年3月期)の売上額は前年度比1.6%減の9006億円と目標の1兆円になかなか届かない。しかし、2021〜22年のEVの立ち上がりに合わせ、クルマ用のパワー半導体に期待している。

フラッシュメモリが好調だ。キオクシアの売上額は、前四半期比で4.3%減だが、13日の日経によると、前年同期比では25%増だった。新型コロナウイルスの影響でスマートフォン向けのNANDフラッシュの出荷量がわずか(1桁%台前半)に減少したが、販売単価はわずか(1桁%台前半)に増加したとしている。同社の北上工場が、この期にウェーハ出荷に寄与したという。

NANDフラッシュと比べて小容量だが、高速のNORフラッシュも好調のようだ。13日の日経は、ワイヤレスイヤホンで片耳64Mビットあるいは256Mビットの製品が使われているという。音楽用途ではリアルタイム性が求められるため、NORフラッシュの需要は根強い。また車載用途でも容量よりもNORフラッシュの高速不揮発性が求められている。

5G用途では、Analog DevicesとIntelが5G基地局向け無線のプラットフォームを開発することで合意した。ADIはRFのトランシーバー(送受信回路)が得意、IntelはFPGAのArria 10によるベースバンドロジックを開発する。特に基地局はエッジとコアをつなぐO-RANインターフェイスが注目されており、ADIはSDR(ソフトウエア無線)によるデジタルフロントエンド機能にも長けており、ここにプログラム可能なFPGAを使ってフレキシブルな無線プラットフォームを低コストで最適化する。Intelはさらにコア基地局の仮想化市場も狙える。

ルネサスは5GのRF受信回路用アンプ「F1490」をサンプル出荷したと発表した。これは1.8GHz〜5.0GHzまでをカバーする広帯域アンプとなっており、IDTのブランドで販売する。基地局のアンテナに近いMIMOアンテナ用RF回路に使う。ただし、ルネサスはレーザーやAPDなど発光・受光化合物半導体工場を停止すると発表しており、RF回路の送受信スイッチなどの高速GaAs半導体の生産についてはコメントしていない。


参考資料
1. オン・セミコンダクター、新潟県の製造拠点売却を検討 (2020/08/09)
2. オン・セミコンダクター、会津富士通セミコンダクターマニュファクチャリングへの出資比率を引き上げ (2018/10/01)

(2020/08/17)

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