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理研の快挙、半導体技術者はそれをどう生かすか

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1月29日、理化学研究所が発表した万能細胞作製の新手法は、日本中を勇気づけた。この研究のユニットリーダーである小保方晴子氏の写真が理研のトップページをすでに飾っている。半導体エンジニア・マネジャーにとって、今回の発表から学ぶことは何か、自社に活かせることは何か、を考える良い機会になる。

この研究は、動物の細胞に刺激(ストレス)を与えることで、再生できる細胞に変えようというもの。理研のプレスリリースによると正確には、体細胞が多能性細胞に変わると表現する。トカゲは尻尾を切られてもあるいは自ら切っても、後から生えてくるが、人間の体はどこか切断されたら決して再生しない。しかし、今回の研究は、人間の体でさえも、体細胞に刺激を与えれば、再生する可能性が出てくる、という訳だ。

小保方氏の最初のNatureへの投稿では、生物学の常識に対して激しい言葉で否定されたという。しかし、同氏はくじけず実験し直し、刺激を変え、実験データを何度も取り直し、4回目の投稿で初めて論文が採用されたという。そこで今回の発表になった。

日本中を驚かせたことは、研究成果だけではない。弱冠30歳という若さで研究ユニットのリーダーであり、しかも女性研究者であったことも、テレビや新聞、インターネットなどが取り上げた要因となった。小保方氏へのメディアの取材お断りの文言が広報部門から出ている。

ある研究者によると、理研では小保方氏の所属する「理研発生・再生科学総合研究センター」以外の組織でも、チームリーダーには若手研究者が多いという。もちろん研究実績のある人という条件は付く。ただし、日本の組織としては30歳くらいの若手研究者がマネージャーになることは珍しい。さらに、理研という組織は、定年まで研究者が過ごすところでもないらしい。理研に数年いて、産業技術総合研究所に移り、その後大学に戻って准教授・教授として研究する、というケースも多い。理研のシステムは、いわば良い意味での成果主義となっている。一部の企業が導入した、年寄りの給料を下げるための見かけ上の成果主義ではない。研究に対する評価システムも確立しており、研究者の育成に成功した組織と言えよう。

この話題は、半導体とは直接関係ないかもしれない。しかし、半導体産業は、あらゆる産業・分野へと広がり、生物や医学の分野でさえ、もはや関係ないとは言えなくなってきている。かつてベルギーの半導体研究所IMECを訪れた時、バイオ関係の研究をしているのを見て、CEOのLuc Van den hove氏になぜバイオの研究をしているのかを聞いた。同氏は「バイオに対する私たちの命題は、『がん治療に対して半導体技術者は何ができるか』ということだ」と語った。すなわち、半導体技術をがん治療に役立てる、のである。

では、今回の小保方氏の研究に対して、半導体技術は何ができるかを考えるチャンスではないだろうか。例えば、細胞に刺激を与えて万能細胞を作るという原理なら、電気刺激でも良いはずだ。人間の体には微弱な電流が流れており、脳からの指令に対して筋肉が動くように作られている。しかも電解液が体内を覆っている。だからこそ、電流・電圧・デューティなどさまざまな電気的パラメータを変えてみると、万能細胞をもっと簡単に作れるかもしれない。このようにして半導体の市場を広げたり、新しい市場を開拓したりするというやり方は、世界の勝ち組の戦略そのものである。

半導体産業にとって後ろ向きの話題であるが、ルネサスの300mmプロセスラインの鶴岡工場をソニーが買い取ることで合意した、と双方が29日に発表した。譲渡金額は75億1000万円。ソニーにとっては、CMOSイメージセンサの生産能力を安い価格で増強できる。

(2014/02/03)

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