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2023年の半導体不況、底は脱出したように見えるが

SIA(米半導体工業会)は、4月の世界半導体販売額は先月比0.3%増の399.5億ドルになったと発表したが、まだ回復したとは言えない。3カ月の移動平均で表されているからだ。単月の数字を算出すると、4月は前月よりも63億ドルのマイナスである。ただし、不況の底は脱出した兆候がみられる。それは半導体を消費する最大地域である中国市場の動向から推定できる。

Worldwide Semiconductor Revenue / SIA, WSTS

図1 世界半導体の販売額と1年前との変化 出典:SIA、WSTS


SIAの発表は3カ月の移動平均で表されていることを考慮すると、毎年3月は第1四半期の最終月であり、駆け込み需要が必ず生じる。WSTS(世界半導体市場統計)の数字を1984年まで遡っても同じ傾向がみられる。このため3月も4月も前月比で上向いていることは毎年同じであり、だからといって回復基調を表している訳ではない。

3カ月の移動平均は、過去の歴史的な推移を見るのには適しているが、将来の傾向を見るのには適していない。それは過去3カ月のデータの平均値を表しているのにすぎないからだ。
4月の移動平均値は、2月、3月、4月の平均値を表しており、ここにも3月の数字を含んでいる。つまり3月のピーク値を4月も含んでいるのである。ということは3月の移動平均値には1月、2月、3月の数字を含んでいる。毎年3月にはピーク値が来る。その影響は5月まで引きずる。このため3月の影響がなくなる6月になって初めて回復しているかどうかの判断材料となる。

1年前の前年同月比で比較すると、4月の世界半導体販売額は21.6%減となっており、減速状態は依然として続いている。3月から0.3%増という意味は、4月も3月とさほど差はないということであり、底の状態が依然として続いている。ただし、これ以上は凹まないことになる。

この4月の単月実績はどうか。SIAもWSTSもまだ4月単月の数字を発表していない。しかし移動平均値から推定はできる。3月の移動平均値は1月、2月、3月の平均であり、4月の移動平均値は、2月3月、4月の平均を表しているからだ。これらの差をとれば、1月単月の数字がわかっているから4月の単月の数字を算出できる。つまり次式で計算する;

4月単月値=(4月の移動平均値-3月の移動平均値)+1月の単月値=37.57B


2022年4月(単月)の販売額は47.96Bであるから、2023年4月単月の数字は1年前の21.7%減となる。また、2023年3月の単月値43.88Bと比べると2023年4月の単月値は3月の数字よりも6.31B低い。ただ、3月よりも4月の方が低いことも毎年の季節要因である。

これからの世界半導体市場はどうなるか。地域別の情報も重要だ。特にひどい地域は、最大の半導体消費国である中国であり、前年同期比31.4%減である。そこで、中国市場の落ち込みを11月から見たのが図2である。


半導体中国市場販売額 / セミコンポータル

図2 中国市場における半導体販売額と前年同月比の傾向 出典:SIAの発表した数字をセミコンポータルがまとめた


中国市場が結局、前年同月比でマイナス30%以上から抜けきっておらず、まだ回復にはほど遠い。図2を見る限り少しずつ戻りつつあるように見えるが、4月まではまだ回復基調とは言えそうにない。3カ月の移動平均値で表されているため、3月の駆け込み需要の影響を引きずっているからだ。3月の数字を引きずらない6月の数字を見なければはっきりしたことは言えない。ただ、2023年後半には回復するだろうという見方をするアナリストは多い。

(2023/06/09)
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