順調に回復している半導体製造装置市場
2019年11月の日本製および北米製半導体製造装置市場は、それぞれ前月比2.3%増、1.9%増の1849億3200万円、21億2110万ドルになりそうだという見込みをSEAJ、SEMIが発表した。これらの数字は3カ月の移動平均値を取ったもの。
図1 日本製および北米製半導体製造装置の販売額の推移
この1年間で見ると、北米製半導体製造装置は、2019年3月を底にして、少しずつ上昇指向で推移しているが、日本製のそれは6月を底としてじわじわ上昇している。8月のこれらの数字と傾向から、「世界半導体装置が底を打った模様」と伝えて以来、9月には「底を打ったことはほぼ確実」に変わり、10月には「底から上向きへ」、11月は「回復基調続く」と着実に回復してきた様子を伝えた。
2018年のピークはメモリバブルであったために、需要以上に売れてしまった結果、19年にはその反動がやってきた。20年は回復基調ではあるが、すぐにはメモリバブル時の数字には届かない。21年になって18年を追い越す、とみるのはごく自然の見方である。もちろん、それ以降の成長は止まらない。新しい半導体への要求が次々と出てくるからだ。
AIや5G、自律化、IoT、セキュリティといったITのメガトレンド向けに新たな半導体を必要とする分野は広がっている。新たな半導体が新たな製造プロセスを要求すれば、当然半導体製造装置にも新たな需要が生まれる。ソフトウエアの時代、仮想化の時代だからハードウエアはどうでもよい、という極論を述べる人たちがいるが、ハードウエアが正常に動く、という前提でソフトも仮想化もある。この前提が崩れたら、ソフトや仮想化も崩れる。
ハードウエア(半導体チップ)が正常に動作するためのテクノロジー開発はとても重要。セキュリティに関しても同様で、これまではソフトウエアでセキュリティに対処してきたが、ハッカーとのイタチごっこが続いてきた。やはりハードウエアでのセキュリティのカギは欠かせない。セキュリティ重視の半導体チップは、新しい市場となりうる。チップ上のトランジスタのバラツキをチップ固有のID(Identification)とするPUF(Physically Unclonable Function)技術も使われ始めている。ITのメガトレンドの先には社会全体を、地球規模で変革するデジタルトランスメーションが控えており、これらも半導体の大きな市場となる。半導体の未来はこれからでも十分に広がっていく。
参考資料
1. 半導体製造装置販売は、回復基調続く (2019/12/04)