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2016年アナログICランキングに見る買収・栄枯盛衰の歴史

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Analog Devices(ADI)のLinear Technology (LTC)買収や、ルネサスエレクトロニクスのIntersil買収、ON SemiconductorによるFairchild買収など、アナログICの業界再編により、2016年の勢力地図が変わる可能性が高い。市場調査会社のSemiconductor Intelligenceは2016年のアナログICメーカーのランキングを予想、SemiWikiが過去のランキングも掲載している。

表1 2016年のアナログ半導体のランキング 出典:SemiWiki
https://www.semiwiki.com/forum/content/6217-shakeup-analog-rankings.html

表1 2016年のアナログ半導体のランキング 出典:SemiWiki


それによると(表1)、2016年には1位のTexas Instruments(TI)は変わらないが、2位にADIが入り、Infineon Technologiesは3位に後退、同様に2015年に3位だったSkyworksが4位に下がりそうだ。5位STMicroelectronics、6位Maxim、7位NXP Semiconductorは変わらないが、8位だったLTCが消えたため、9位のON Semiconductorが8位、10位のルネサスが9位にそれぞれ順位を上げる。昨年圏外だったMediaTekは10位に入ると見る。

アナログICの世界では、昔から買収は頻繁に行われていた。トップのTIでさえ、アナログに注力すると決めた1995年以来、Silicon Systems、Unitrode、Burr-Brown、Chipconなどアナログ半導体メーカーを次々と買収し、アナログの中で弱い製品を強化してきた。2位のADIは、LTCを買収し大型企業のM&Aとして話題を呼んだが、2年前にもマイクロ波の得意なHittite Microwaveを買収している。

さらに表1の1995年のトップ10社の企業の内、今でもそのままの社名で生き残っているのは、STとTI、ADIの3社だけ。Philipsの半導体部門はNXPとして切り出され、Siemensの半導体部門はInfineonとなった。さらにMotorolaの半導体は、ON SemiとFreescaleに分かれ、Freescaleは昨年NXPに吸収合併され、名前が消えた。また三洋電機の半導体はON Semiに売却され、これも名前が消えた。NECの半導体部門はNECエレクトロニクスとなり、さらにルネサスに組み込まれた。

アナログ半導体の新興勢力として1995年にはなかったSkyworks Solutionsは、2002年にAlpha IndustriesとConnexantのワイヤレス部門が合体してできた。Connexantは旧Rockwell Internationalの半導体部門がスピンオフした会社。無線回路に必須のRFICが数多くのスマートフォンに採用されたことから、急成長した。MaximはDallas Semiconductor、Volterraを吸収しただけではなく、VitesseとZilogの製品ラインも組み入れた。

ルネサスが買収したIntersilは数奇な運命を持つ。最初のIntersilは、Robert Noyce氏やGordon Moore氏と共にFairchild Semiconductorを創立したJean Hoerni(ジャン・ホーニ)氏によって設立された。Robert Noyce氏やGordon Moore氏 は言うまでもなくIntelの社長を務めた人たち。Hoerni氏はプレーナプロセスの発明者として知られており、Shockley研究所をNoyce、Moore両氏と共に去り、Shockley氏が「裏切りの8人」と言ったエンジニアの一人である。その後、1981年にGEがIntersilを買収し、GEの傘下に入った。筆者は1985年頃、東京にやってきたJean Hoerni氏に会っている。人の好さそうな年配のエンジニアという風貌だった。
 
AT&Tからトランジスタ技術のライセンスを受け、1960年代に半導体事業を始めたGE(General Electric)は、RCA(Radio Corporation of America)の半導体部門を1986年に買収した。その後1988年には軍事用半導体に強かったHarris SemiconductorがGEの半導体部門を買収した。Harrisも古くからの実績を持ち1960年代にRadiation社を買収することで半導体に参入していた。ところが1999年、Harrisは半導体部門を手放し、Intersilとしてスピンオフさせた。これが今のIntersilの基礎になっている。

参考資料
1. 2015年のアナログICランキング、やはりTIがダントツ (2016/06/01)

(2016/09/30)

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