ソフトウエア定義のクルマからAI定義のクルマへ、を標榜するArm
毎年11月ごろ東京で開催されるArmのイベントは、今年「Arm Unlocked 2025」という名で、オートモーティブ、クラウド/インフラ、エッジAIという三つの分野に分けそれぞれの基調講演があった。三つともカバーできないが、少なくともオートモーティブに関しては記者会見を開いた。Arm側が力を入れていることがわかる。SD-V(ソフトウエア定義のクルマ)からAID-V(AI定義のクルマ)へ、という言葉が多用された(図1)。

図1 AI定義のクルマではAIをクルマのいたるところに使うようになる 出典:Arm
ソフトウエアでクルマの機能を更新、追加などが可能になることは、これからのクルマ作りでは当たり前、その上でAIを活用したクルマが今後さらに多くなっていく。「AIはイノベーションの中心になる」とArmのSimon Teng氏は言う。さらに将来は、AIモデルをこれまで以上に追加するようになる、という姿をイメージしている。「それはクルマにAIがたくさん搭載されるのを見ているからだ」、とArmオートモーティブ事業部門プロダクト&ソリューション担当VPのSuraj Gajendra氏は述べる。その例として乗客モニタリングを挙げる。乗客が誰であるかをAIが判断するだけなく、健康状態もチェックすることで失神などによる事故を防ぐことができる。
これからのクルマ作りはアーキテクチャが大きく変わるだろうと同氏は見ており、そのためにはエネルギー効率を高め、多くのセンサも必要になる、と見ている。こういった要求に対して基本的なプラットフォームとなるのが、クルマ用の巨大なIPである、「Arm Zena CSS」だ(図2)。CSSは、巨大なIP、Compute Sub-Systemの略。

図2 Arm Zena CSSは16CPUコアをはじめ安全仕様のCortex-R82AEなども集積している 出典:Arm
Armから見ると、クルマ用の巨大なIPはCPUコアが16個ものメニーコアになると、ユーザーにとって設計が極めて難しくなるための支援といえる。クルマ用のArm Zena CSSをリリースする前に、同社はAIデータセンター向けにArm CSS Neoverseを出荷してきた。そのCPUコア数は累計で10億個を超えている。クルマ用でもやはり巨大なIPが望まれているようだ。Arm Unlocked Tokyoでホンダと日立の合弁企業であるASTEMO社との対談の中で、「システム作りではソフトウエアも考慮したハードウエアが大切であり、Armにはそれを期待している」とASTEMO社は要望している。
AID-Vに対しても、「AIをハードウエア(半導体チップ)に集積すると新しい能力が付加される」とASTEMOは述べており、クルマにAIを搭載することがこれからは増えていくものと見られる。
クルマの中でAIを駆使するのは、図1にあるようにADAS(先進ドライバ支援システム)だけではなく車内状況のインフォテインメントIVI(In-Vehicle Infotainment)やエレクトロニクスを駆使するE2E、というあらゆるところだ。ADASではスマート診断、衝突防止、障害物検出、白線維持、速度制御などに使われる。IVIでは自然言語認識、性能の最適化、パーソナル化の進化、アクティブメンテナンスなどがあり、E2Eではコード生成や生成AIによる設計、AI支援の学習など多い。
ArmはNvidiaの大量のGPU同士を接続するためのインターフェイスであるNVLinkをArm Zena CSSにも搭載するだろう。というのは、ArmはNeoverseプラットフォームにNVLinkを搭載すると11月18日に発表しているからだ。NvidiaのGPUをArm Neoverse CSSに大量につなげるようになる。ArmにとってはCSS Neoverse、NvidiaにとってもGPUをそれぞれ大量に提供できるため、ウィンウィンの関係になる。同様なことがクルマ用のZena CSSでも起きると考えるのは自然だろう。


