前Intel CEOのPat Gelsinger氏がVCに転身
Intelの前CEO(最高経営責任者)であったPat Gelsinger氏が来日、今度はVC(ベンチャーキャピタル)のジェネラルパートナーとして、有望なスタートアップ企業を引き連れてきた。VC「Playground Global」の共同創業者兼ジェネラルパートナーのPeter Barrett氏と共に4社のスタートアップは、日本の半導体業界とパートナーシップを組みたいとの思いがある。
図1 VCのPat Gelsinger氏(左から2番目)とPeter Barrett氏(真ん中)を中心にスタートアップたち 左端はSnowcapのAnna Herr氏、右端はxLightのNicholas Kelez氏、右から2番目がAyarLabsのMark Wade氏
Playgroundは、その名の通り「(大人の)遊び場」という気持ちでベンチャーキャピタルを運営しているとGelsinger氏は言う。2015年に米シリコンバレーのパロアルトで設立し運用資産は12億ドルのVCである。Gelsinger氏は半導体に強い人間だけに、今回の来日にやはり将来の半導体に関係するスタートアップ4社を連れてきた。
これからの半導体を使うコンピューティング技術は、三位一体(Trinity)となってさまざまな問題を解くだろうとして、従来型のコンピュータ、AI、そして量子コンピュータを提案している。それを実現するために必要な新材料をマテリアル・インフォマティックスなどのコンピュータを駆使したシミュレーションによって見つける手もある。しかも、日本は化学材料の得意な国であり、日本に来たのは化学企業とパートナーシップを組み、新材料を開発したいからだ。
今回4社のスタートアップの内、一つはxLight社だ。EUVの先の光源として自由電子レーザー(波長2nm〜60nm)を使うという提案だ。現在の波長13.5nmのEUVよりもっと短い波長のリソグラフィ装置を創ろうという話である。かつてのX線リソグラフィは、シンクロトロンを利用する装置で、直径数kmもの加速器を用意して数カ所から光を取り出す巨大な装置であり、半導体用には使われなかった。しかし「Spring 8」加速器として化学分析に使われている。自由電子レーザーでもやはり電子を加速するための装置は必要だが、半導体工場の横に設置するユーティリティ程度の大きさで済むとCEO兼CTOのNicholas Kelez氏は語る。
もう一つは、超電導技術を使ったコンピュータを作るSnowcap Compute社だ。これに使うデバイスはSQUIDではなく、ジョセフソン接合を利用する新デバイスだという。しかも半導体のCMOSと同様な振る舞いをするデバイスらしい。シリコンのCMOSをそのまま置き替えるような超電導デバイスで作るコンピュータであり、量子もつれを利用する特殊な量子コンピュータではない。いわばCMOSの超電導デバイスのようなものだと、同社のCSO(Chief Science Officer)であるAnna Herr氏は述べる。
超電導のプラットフォームを作り(図2)、現状のCMOSプロセスと同様の28nmプロアセスでジョセフソン接合デバイスを作り、30GHzのクロック周波数で動作できるだけではなく、シリコンCMOSプロセスと同じ300mmウェーハ設備をそのまま使えるとしている。4.5Kという比較的高温で動作させて、冷却設備も含み0.05Wという消費電力しか食わないという見通しを得ている。約2万個のダイを積み重ねてコンピュータを作っても1kWしか消費しないため、コンピュータとして使える見通しが立っている。従来のコンピュータでもデータセンターでは冷却の消費電力が大きいため、超電導デバイスのために冷却する方式でも十分成立するとHerr氏は言う。

図2 超電導のテストチップ 出典:Snowcap Compute
後の2社は、シリコンフォトニクスやレーザー、受光器などからなるCo-Packaged Opticsを製造するAyar Labsと、フォールトトレラントな量子コンピュータを作るPsiQuantum社である。これらの企業は最初から海外企業とのパートナーシップを組むことで商品化を早めようとしている。いずれのコンピュータも材料開発がカギを握るため、日本企業とのコラボに期待している。




