TI、DLPディスプレイ用のコントローラなどチップセットを刷新
Texas Instrumentsは、DLP(Digital Lighting Processing)ディスプレイのコントローラ(図1)とDMD(Digital Micromirror Device)などのチップセットを一新させた。DMDはMEMS技術を使って、画素ごとに微小なアルミのミラーを操作して光を反射させるプロジェクタに使う半導体チップ。この度4KのUHD(Ultra-High Definition)ディスプレイ駆動チップセットを発売した。

図1 Texas Instrumentsがリリースした4K UHD向けのDLPコントローラとDMDデバイス 出典:Texas Instruments
DLPは光を反射させる微小のミラーを使うプロジェクタ向けのデバイスであるため、解像度を上げても輝度はそれほど劣化しないという特長がある。このため映画館での解像度の高い映像投影に多く使われている。市場調査会社PMA Researchによると、世界中の映画館では10スクリーンの内、9スクリーンにDLPプロジェクタが使われているという。1987年にDLPディスプレイ技術を考案したTIのLarry Hornbeck氏は、2015年に「2014年アカデミー科学技術功労賞(オスカー像)」を受賞している。DLP技術は映画館や家庭用のプロジェクタだけではなく、クルマのHUD(Head up Display)や3Dプリンタ、レーザーリソグラフィ装置などへと用途が広がっている。
今回開発した新しいDLPチップセット(図2)は、6〜10年ぶりの刷新だ、とDLP製品担当ビジネスラインマネージャーのCarlos David Lopez氏が述べるように、長い間モデルチェンジされていなかった。新しいチップセットは、ディスプレイコントローラ「DLPC8445」と、DMDデバイス「DLP472TP」、そしてLEDドライバ+PMICの「DLPA3085」という3チップからなる。
図2 4K UHDスクリーンを実現する新DLPディスプレイ用チップセット 左からDLPコントローラ、DMDデバイス、LED ドライバ+PMIC 出典:Texas Instruments
これらの内、特にディスプレイコントローラは前世代製品よりも90%小さくなり(図1)、しかも性能は向上した。表示される遅延時間は1ms以下と短く、最大240Hzというフレームレートで高速に動くバイクやクルマを鮮明に捉えることができる。しかも従来通りの4K UHDという解像度を投影する。パッケージサイズは前世代品が31mm×31mmだったのに対して9mm×9mmと極めて小さくなり、プリント回路基板を小型にできる。
また、対象とするDLPに使うDMDのディスプレイ用のチップサイズは対角0.47インチで、DLPディスプレイコントローラもこのサイズを制御するように設計されている。DMDに光を当てるLEDドライバは、LED1個当たり最大16Aの電流を流せる。DMDデバイスは時分割でR, G, BのLEDを駆動するため、このドライバにはR, G, Bのスイッチとシーケンスを制御する。PMIC(Power Management IC)部分は2個の降圧コンバータと1つの8ビットプログラマブルな降圧コンバータや各種の保護回路で構成されている。
DMDデバイスそのものは、最大1800ルーメンという明るい輝度を放ち、マイクロミラーのピッチ(画素ピッチ)は5.4µmと微細である。マイクロミラーのアレイサイズは1920×1080だが、最大ディスプレイ解像度は4K UHD(3840×2160)だというから、解像度も時分割駆動しているようだ。入力最大のフレームレートは60Hzである。ということは、DLPコントローラの高速性能が上がったことがカギだといえそうだ。
図3 ホームエンターテインメントにおいてより没入感に満ちた画像を楽しめる 出典:Texas Instruments
このDLP技術を刷新したことで、投影する大型ビデオゲームを実現できるようになるため、ゲームセンターやホームエンターテインメントなど、巨大なモニターでゲームやテレビ映画などを楽しむことができるようになる(図3)。チップの小型化に基づく基板の小型化などで、投影するプロジェクタが小型になるため、キャンプ場やビーチなどで巨大なスクリーンでの娯楽が可能になると、Lopez氏は述べている。