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吹っ切れたルネサス、3社のウィニングコラボ開発ボードを続々提供

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シリコンバレーのアイデアを採用、超ドメスティックな企業からグローバル企業へと脱皮し始めたルネサス。ここ1〜2年、業績は振るわなかったが、ようやく最近、車載向け、産業向けとも成長への道筋がはっきりしてきた。買収したIDTのアイデアがここにきてルネサスを変えるようになってきたようだ。

ルネサスは、経営トップによる数合わせの買収を重ね、残された社員はやる気を奪い取られた。「ルネサスさんは、モノを売る気があるのでしょうか?」という声も聞かれた。IntersilとIDTを買収したことで、ないがしろにされたルネサス育ちの社員のモチベーションは大きく下がっていた。

買収したIntersilとIDTは実は全く違う企業文化を持つ会社だ。Intersilは半導体企業の老舗を引き継ぎ、Harris Semiconductorなどを経て、昔ながらのマインドを捨てきれなかった会社だが、PMIC(パワーマネジメントIC; 電源用のIC)や照度センサなど、地味だが欠かせないアナログICを作る会社だった。一方のIDTは、データセンターやスーパーコンピュータなどのHPC(High Performance Computing)向けのタイミングクロックICで実績があり、常に変化し続けてきたシリコンバレー魂を持つ会社である。しかし、ルネサスとの製品ポートフォリオのシナジーをほとんど持たない。

だが、のんきなルネサスの社風を変えたのは、海外勢の人たちだった。産業向け製品のIoT・インフラ事業部にはIDTとIntersilからの執行役員を据え、シリコンバレーの風を取り入れた。保守的なIntersilから来た役員でさえ、MarvellやAMCCなどの経験者でシリコンバレーそのものの流儀を持ってくる。自動車向けは元々日本市場が強く、しかも高品質へのこだわりが強いため、ルネサス育ちを執行役員に据えているが、ここでもシリコンバレー魂の影響を受けている。

ルネサスを最初に変えたのは、今年の4月、新型コロナウイルスによる人工呼吸器の不足に対して、人工呼吸器向けの開発ボードを世界に先駆けていち早く提供したことだ。人工呼吸器の大手、アイルランドのMedtronic社がその仕様を無償で公開したことを知るやいなや、その後10日程度で対外発表にこぎつけたのである。IDTが主導して開発してきた、このリファレンスデザインは、息の吸込みと吐き出しを検出するIDTの流量センサ、ルネサスのマイコン、ポンプのアクチュエータとなるモータ駆動ICとパワートランジスタ、そしてIntersilのPMICを多数搭載しており、3社のコラボの塊となった。


COVID19後に向けたソリューション - WINNING COMBO

図1 クルマ用のソリューションに3社のコラボを導入 出典:ルネサスエレクトロニクス


さらに10月末に開かれたクルマ用半導体の記者向けオンライン会見では、3社のコラボを利用する「ウィニング・コンボ」を車載エレクトロニクスに適用する例を述べた(図1)。新しい車載エレクトロニクスの将来方向を示すドメインコントローラやゲートウェイの設計、ADASとEVという車載エレクトロニクスで最も成長率の高い分野にフォーカスすると述べた。これまでの日本のメーカーが触れてこなかったADASソフトウエアの再利用を強化し、低コストで信頼性の高い製品を作る手法を紹介した。ソフトIPとライブラリを再利用しやすい形に揃え、ソフトウエアの後位互換性をしっかり確保しておく。ただし、ソフトの著作権に関しては顧客のものであるからこそ、セキュアに管理し、顧客からの次世代製品の開発要求に活かす。

EV(電気自動車)向けの半導体製品でも旧Intersilのバッテリ管理IC、IDTの信号処理技術などを組み合わせ、ADASとEV向けの製品ポートフォリオを再確認した。例えば、EVに搭載するバッテリの個々のセル間のバラつきを補正するバッテリ管理ICでは、旧Linear Technology(現Analog Devices)やON Semiconductorなどと比べ後発ゆえに、バラツキを初期精度±2mV、長期ドリフトの抑制でも15年で±6mV以内、と極めて精度を高くし競争力を付けた。このため、マージンを広くとることができ、航続距離をその分伸ばすことができるようになる。


当社のバッテリマネジメントソリューション

図2 後発ながらバッテリ管理ICの高精度化で競争力を付けた 出典:ルネサスエレクトロニクス


クルマ向け半導体だけではない。産業向けでも3社コラボのウィニング・コンボのプロジェクトを進めている。旧IDTとIntersilとルネサスの製品を開発ボードに搭載したHMIや組み込みビジョンシステム向けのリファレンスデザインをリリース、AIを活用するIoT機器で顔や物体の検出、画像処理、監視カメラ、外観検査装置など産業向け機器の開発期間を短縮するサービスを提供すると11月に発表した。ここではルネサスのSoCであるRZ/G2シリーズをはじめSOCのクロックを制御するIDTの製品やPMICなどを搭載、ハイエンドデザインで、4Kビデオを含むビジョンシステムを構成できる。

ルネサスはまた、Arm Cortex-Mシリーズのマイコンコアを搭載した32ビットマイコン「RAファミリ」のパートナーが50社以上も参加するRAパートナエコシステムの拡大にも努めている。ここではむしろ日本の顧客開発のために日本語で対応するソリューションを多数集め、顧客がすぐにでもマイコンを利用できる体制を強化している。

(2020/11/12)

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