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米MTIマイクロ、カートリッジ式携帯機器向け燃料電池を今年後半に発売

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メチルアルコールのカートリッジ方式の燃料電池を米国東海岸にあるベンチャー、MTI Micro社が今年後半に市場へ投入する。携帯機器用の燃料電池は、自動車への応用と違い、メチルアルコールを燃料とする。しかもメチルアルコールと反応する水は使わない100%メタノール方式である。

MTIマイクロが今年後半市場へ出すカートリッジ方式の燃料電池充電器

MTIマイクロが今年後半市場へ出すカートリッジ方式の燃料電池充電器


米ニューヨーク州アルバニーに本社を持つ燃料電池のベンチャー企業、MTIマイクロフュエルセル社は、携帯機器向けに超小型の燃料電池の開発を進めてきたが、このほど小型の燃料電池充電器や電動工具に組み込む燃料電池の改良にめどを付けた。この手のひらサイズの充電器はUSB端子を使いiPhoneなど携帯機器の充電に使える。カートリッジのメタノールの容量は25ccで、カートリッジ1個で8〜10回充電できると、同社CEO兼社長のPeng Lim氏は語る。

燃料電池市場は現在、ドイツのSFC Smart Fuel Cell社が先陣を切り、東芝がモバイル機器向けに続いているが、SFC社の製品はアウトドアレジャー用で充電器が大きい。東芝の充電器はメタノール液を自分で注入するタイプの充電器だ。

これに対して、MTIの充電器は東芝と同じような大きさではあるが、プリンタのインクカートリッジと同様なカートリッジで燃料が空になるとカートリッジを差し込む形をとる。カートリッジの容量が25ccなので、米国内の航空機内に持ち込める。充電器と予備のカートリッジを持っていれば数日の出張なら使える。しかも使用温度範囲はこれまでの最高の0℃〜40℃と広い。温度範囲を広げられた要因について、Lim氏は特許の認可を待っているため詳しいことはいえないが、主に電子制御回路の工夫とアルゴリズムの改良によると述べた。


使用温度範囲が広いMTIマイクロの製品

使用温度範囲が広いMTIマイクロの製品


その他の性能や信頼性についても、改良が進み2年前よりも向上した。エネルギー密度は2年前の62mW/cm2から100.25mW/cm2へと上がり、エネルギー密度は1.3Wh/ccと従来並みを確保した。自然放出によるパワーの減少も2008年7月の測定時よりも改良され、当時の保持時間が15%減少時で2700時間だったが、今年は5%減少時で6000時間にもなった。これは開放電圧寿命試験においても6000時間はクリヤーしている。


パワー密度が改善

パワー密度が改善


同社は現在、OEM6社と共同で製品開発を進めており、最初の製品がこの充電器になるか、あるいはコードレスの電気ドリルのようなパワー工具になるか、微妙なところだという。さらに遠隔操作用のデバイス(センサーやデータロガー、常時モニター用カメラなど)に組み込む用途もその次くらいに出せるだろうとしている。いずれの場合も、OEM次第であり、MTI社が決めることではない。

(2010/03/08)

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