Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 技術分析 » 技術分析(半導体製品)

フィジカルAIのSiMa.ai、災害時などでエッジAIの有効性を実証

エッジAIが軽いCNN(畳み込みニューラルネットワーク)で済むという考えは、現実的な応用には向きにくくなってきた。エッジAIにもLLM(大規模言語モデル)を組み込む便利さがデモなどで示されるようになってきたからだ。分厚いマニュアルがなくても作業が簡単にやり取りできるようになる。AIチップ開発の米SiMa.ai(シーマエイアイと発音)は、災害時やミッションクリティカルな大事な場面でのエッジAIメリットをデモで示した。

4月上旬、東京ビッグサイトで開催されたIT Week 2026では、専用AIチップを開発しエッジでLLMを使った事例をSiMa.aiと、日本でフィジカルAIを展開するためにパートナーシップを組んだ富士ソフトがいくつかのデモを見せた。フィジカルAIは、クラウドとは接続しないエッジでのAI実装が前提になりつつある。


MLSoC Modalix / SiMa.ai

図1  AIチップMLSoC Modalixの基本アーキテクチャ 出典:SiMa.ai


「フィジカルAIやエッジAIの事例を考えてみると、クラウドにつながないケースが実はかなり多い。実際、クラウドときちんとつながれて業務を遂行できる例はオフィスにいる時だけではないか」。こう述べるのは富士ソフトでSiMa.aiのフィジカルAIソリューションのソフトウエアを開発してきた富士ソフトの組込/制御ビジネスユニット インダストリ事業本部インダストリービジネス事業部IND営業部第1営業グループ課長の草薙晴久氏。ドローンやロボット、自動運転のクルマなどはいつもインターネット上のクラウドコンピュータとつながっているわけではない。もちろん、クラウド利用だとレイテンシの問題もある。

SiMa.aiと富士ソフトは、このほど日本におけるフィジカルAIの展開加速に向けて基本合意書を締結した。組み込みシステム(コンピュータと同じようにCPUとメモリ・ストレージ、周辺などで構成されながらコンピュータではないシステムのこと)業界におけるソフト開発で定評のある富士ソフトは、SiMa.aiにとって強力なソリューション開発者となりうる。SiMa.aiは、生成AIのLLMを使ってエッジ側だけで対話できる実力のAIチップ「MLSoC Modalix」(図1)を開発しているファブレス半導体のスタートアップ(参考資料1)。

IT Weekで見せたデモは、災害時においてどう行動すべきかを音声で問い合わせて、生成AIが回答するというデモと、クルマの修理工が分厚いマニュアルを用意することなく、音声で問い合わせて生成AIが答えるというデモである。

災害時は多くの場合パニックになり何をどうしたらいいのかわからなくなる。そこで現在の状況を口頭で説明して、音声あるいはテキストで適切な回答をもらい落ち着いて実際の行動につなげることができるようになる。特に災害時は通信がつながらないことが多く、クラウドでは対応できない。エッジでの対応は不可欠となる。

また、クルマの下にいて修理などの作業しているときにクルマの状態を説明し、対策を聞く場合でも、テキストだけではなく音声で回答してもらえるというメリットは、作業的にもプラスになる。分厚い修理マニュアルを持っている必要はなくなり、ヘッドフォンの装着だけですむ。


生成AI開発ボックス

図2 生成AI開発ボックスはエッジで使う


デモで示した開発ツールは、小さな箱(図2)でパソコンともつなげられ、即座に答えが音声で返ってくる。箱の中身は、さまざまなインタフェースを設けたPoC(実証実験)用のマザーボード上にSiMa.aiのチップを実装したドーターボードを載せ、チップ上にファンを回した格好となっている。会場では標準的なケーブルでパソコンと接続し、箱全体の消費電力は13Wと低い数字を示していた。箱の価格は20万円程度だという。

参考資料
1. 「音声で訊ねて音声で答えるエッジ生成AIチップをSiMa.aiが開発」、セミコンポータル、(2025/11/27)

(2026/04/15)
関連キーワード: コンピューティング , セミコンポータルによる分析 , 技術分析 , 技術分析(半導体製品)
ご意見・ご感想