UWB通信のリアルタイム位置検出やレーダーで復活を狙うQorvo
かつて超高速のデータレートを誇ったUWB(Ultra-Wide Band)通信が復活する兆しを見せている。UWBは中心周波数6GHzあるいは8GHzで周波数帯域が500MHzあるいは1.5GHzを利用し、480Mbpsの高速通信する技術だったが、Wi-Fiの高速化に押され姿を見なくなった。しかし、高周波・高データレートの通信用途ではなく、位置検出やレーダー応用(図1)として再登場しそうなのだ。
図1 位置情報を伝えるタグや幼児の車内置き去り防止など応用は広い 出典:Qorvo
高いデータレートの用途ではもはやWi-Fiにかなわないが、デジタルデータを利用するのではなく、単なる電波として利用するのだ。広い帯域の中に細かいパルスを大量に含むUWB通信は、距離測定や位置検出に極めて都合が良い。センチメートル単位の精度が得られるからだ。このため、iPhoneやアンドロイドフォンをはじめとするスマートフォンに採用され、大切な品物にタグをつけ、その位置を知らせる通信に使われるようになってから少しずつ見直され始めた。
一新されたUWB通信が目指す応用(図1)には、タグに取り付け荷物を常に監視するトラッキング、自動車内での幼児の置き去り防止、スマホを利用するクルマのデジタルキー、玄関などのドアの鍵、自律走行するロボット、医療機器のRTLS(リアルタイム位置検出)などがある。なかでも病院内での医療機器や医療器具を病室内外に移動させる場合のRTLSはセンチメートル単位の正確な位置をリアルタイムで知ることができることで強い需要がある。また、ArmのCortex-Mシリーズを搭載した32ビットマイコンを利用するため、RFIDなどのタグと比べてセキュリティは高い。
とはいっても中心周波数が6GHzあるいは8GHzと高く、その帯域も500MHz(あるいは1.5GHz)と広いため、高周波での送受信を行うRF部分と、制御するマイクロコントローラ(マイコン)部分をSiP(システムインパッケージ)のような2チップ構成で製造されてきた。しかし、製品単価は高止まりしており、普及することが難しかった。
このほど米Qorvoは、マイコンとRF送受信部分を1チップのSoCという形で設計し、製品化した。新製品「QPF5100Q」と「QM35825」は、ArmのCortex-M33をCPUコアとし、256KBのSRAMや2MBのフラッシュメモリを用いたマイコンである。認証回路を搭載し、また大事なデータや情報はTrustZoneで区切られているため、セキュリティは高い(図2)。QPF5100Qには大きな回路ブロックとして、マイコンの他にCAN-FDコントローラと、送信回路とデュアル受信回路を1チップのCMOS SoCで実現している。製品名の最後に「Q」が付くのは自動車用途である。

図2 RF送受信機を集積する自動車向けのSoC「QPF5100Q」 出典:Qorvo
レーダーを使った子供の置き去り検出や、測距技術にはQM35825が向く(図3)。車載向けではないため、CAN-FD回路を入っておらず、レーダー回路や測距機能などが集積されている。測距機能のアルゴリズムやファームウェアをサポートしている。

図3 測距回路を集積したレーザーによるセンシングに向いたSoC「QM35825」 出典Qorvo
顧客によっては、設計が難しいアンテナを設計することもあるという。UWBの基本周波数は6GHzであるためアンテナはプリント回路基板上に描く。これまでのBluetoothやRF-IDのタグと違い、セキュアな回路を複数集積した32ビットマイコンで処理するためレキュリティレベルは高い。UWBを復活させようと、Qorvo Japanの大久保喜司カントリーマネージャーは意気込んでいる。


