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TI、データセンターに向け最大6kWまで並列接続できる電子フューズIC

Texas Instrumentsは、並列接続により最大6kWまでの電力を扱うことのできる電子フューズ(eFuse)IC、「TPS1685」を開発した。これによりますます電力を消費するデータセンターの電源を確保できるようになる。一般のeFuseをただ単に並列にしても、MOSFETのオン抵抗や配線パターンの抵抗やコンパレータのしきい電圧のバラつきなどによって、弱い部分に電流集中が起こりやすくなる。しかしこれを防いだ。

設計初期から、信頼性の高いインテリジェントな保護機能 / Texas Instruments

図1 6個まで並列接続できるeFuse IC 出典:Texas Instruments


TPS1685そのものは1kWを扱えるが、eFuseにはパワーMOSFETが集積されており、ドレイン-ソース間に電流が通過することで出力され、各種のPMICに電力を供給する。これまでのeFuseと同様、出力電流は2Aから20Aまで調整できる上に、データセンターの電源向けに48Vを扱えるようになっている。このためほぼ1kWを扱うことができる。

そしてこのeFuseを6個並列接続すると、最大6kWまで電力を扱うことができる。しかも、単純に並列接続するだけでよい(図2)。6個のうちの一つをシステム全体の電流を監視する主要コントローラとし、さらに、ここにアクティブ電流共有テクノロジー技術を導入する。


6kwを超える高電流負荷に対応する高度なスタック / Texas Instruments

図2 システム全体の電流を監視して全体の電流を均一に共有する 出典:Texas Instruments


このテクノロジーは、MOSFETのオン抵抗Ronをダイナミックに調整することで各eFuse間での電流共有をバランスさせることができる。すなわち、一つのeFuseに流れる電流がかなり大きいとすると、ゲート電圧を調整してそのRonを大きくして電流を減らすことで、全てのデバイスの電流はより均等に再配分されるという訳だ。各eFuseの電流そのものは過電流保護回路のしきい値近くでアクティブな電流共有が行われるため、より小さい電流での不要な電力損失を避けることができる。この結果、大電流を流す動作中でも熱分布を均一にすることができ、長期間の信頼性を高めることができる。

TPS1685には、もう一つの特長がある。eFuseに短い過電流が流れた時でも正常に働いてほしいのに、回路ブレーカーが働いても電源が落ちてしまうことがある。そこで、過電流ブランキングタイマーと呼ぶ技術を導入した。これは、例えばパルス幅1msの過渡電流が流れても出力電流はそのまま通過させ、2.2ms以上のパルスの過渡電流なら止めるのである。このパルス幅の設定はユーザーができる。

このeFuseにブランキングタイマー機能を集積しているため、回路基板上に大電流に対応する部品点数を減らすことができる。また出力につながる各種PMIC(DC-DCコンバータやバックコンバータ、LDOなど)の電力規模などに合わせて最適化することができる。

その他の特長として、異常なパルスなどを記録するログ用のブラックボックスと呼ばれるメモリ(SRAM)も集積している。集積されている状態監視機能はシステムのレジリエンスを高める役割を持つ。

TIはまた今回のeFuseICに加え、ゲートドライバとパワートランジスタを集積したGaN パワー ICも3種発表した(「LMG3650R035」と「LMG3650R025」、「LMG3650R070」)。いずれも業界標準のTOLLパッケージを採用した。パワートランジスタGaN FETは耐圧650Vで、効率は98%以上と高い。過電流保護や短絡保護、過熱保護など高度な保護機能も集積しており、TIはデータセンターなどのサーバー用電源を狙っている。

(2025/04/09)
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