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手軽な価格で画像認識AIが使えるAIエンジン付きのプロセッサ

ルネサスエレクトロニクスは、手ごろな価格で画像認識AIが使える新しいAIアクセラレータを集積したミッドレンジのプロセッサ「RZ/V2N」をドイツのニュルンベルグでのEmbedded World 2025で展示した。2台のカメラ画像を取り込める上に、クルマのドライブレコーダーや自動走行ロボットのカメラ、監視カメラなどコンピュータビジョンに対応する。3月19日に発売する。

図1 ルネサスが提供するミッドレンジのAI画像認識エンジン搭載のプロセッサ「RZ/V2N」 出典:ルネサスエレクトロニクス

図1 ルネサスが提供するミッドレンジのAI画像認識エンジン搭載のプロセッサ「RZ/V2N」 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスは、昨年2月にこのシリーズの最もハイエンドな製品「RZ/V2H」を出荷してきたが、1年間に2.3倍もの商談規模が拡大していたという。そこで、性能的には若干落ちるが手ごろな価格のAIエクセラレータ付きのミッドレンジプロセッサ「RZ/V2N」を今回製品化した。性能がやや落ちると言っても、2台のカメラ映像を画像認識できる能力を持っており、しかも4Kの高解像度画像処理できる能力を持つ。

クルマの前方にあるクルマなどを認識するドライブレコーダーや自動走行ロボット、ダブルアングルの画像を撮影できる産業用AIカメラなどの応用を狙っている。しかもバッテリ動作にも対応しながら、ハイエンドのRZ/V2Hと同様の10TOPS/WというAI性能を持つ。

この新製品のパッケージ面積は15mm角とRZ/V2Hよりも38%小さく、実装面積を小さくできる。しかも2台のカメラから映像を取得し、2系統のAIとH.264/265のビデオコーデックでエンコーディング処理しても2.6Wしか消費しないことから、ファンなして使える。このためシステムを小型化し、またコストを抑えることができる。

またカメラを2台使えることから、ダブルアングルの画像を捉えることができる(図2)。1つのカメラと比べて空間認識性能が向上し、人の動線解析や転倒を高精度に検知できる。別の応用では、駐車場の台数監視とナンバープレートの認識を1チップで行うことができる。

図2 2カメラからの映像を処理しても消費電力は最大2.6W 出典:ルネサスエレクトロニクス

図2 2カメラからの映像を処理しても消費電力は最大2.6W 出典:ルネサスエレクトロニクス


AIのエンジンとなるのが、DRP(Dynamic Reconfigurable Processor)-AIだ。これは動的に必要な演算器のみを切り替えられるというAI専用プロセッサで、この中にDRPとAI-MACの機能がある。DRPは、事前学習やプーリング層などの動作をダイナミックに切り替えるためのプロセッサである。AI-MACはCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を行う多数のMAC演算器を集積している。演算は8ビット固定となっている。

また、AIは、ビジョン系トランスフォーマーモデルにも対応し、CNNモデルと組み合わせたTOPFormerモデルだという。CNNで問題とする画像が何であるかを認識し、トランスフォーマーで全体の関係性を示すことで、速度と精度のバランスをとっているのだとしている。AI性能は、ゼロの多いスパース演算で 最大 15 TOPS(Trillion Operations per Second)、密な演算では4TOPSという推論性能だ。

演算処理主体のArm Cortex-A55を4コアとマイコン制御用のCortex-M33シングルコアをCPUとして集積しており、マイコンなのかSoCなのかと質問すると、MPU(マイクロプロセッサ)と扱ってほしい、という答えが返ってきた。SoC(System on Chip)はカスタム向けASIC的なASSP(Application Specific Standard Products)だと定義しているからだという。新製品の価格についてはコメントしていない。

(2025/03/18)
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