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ベルギーIMEC、ヘルスケア向けの無線センサーデバイスを開発、実用化目指す

ベルギーの研究開発機関IMECが、関連機関のHolst Centreと共同で、人間の心臓や脳の状態をモニターするワイヤレスセンサーデバイスの開発に注力している。このほど米国ミネソタ州ミネアポリスで開かれたIEEE EMBC(Engineering in Medicine & Biology Conference)において、無線モニタリングデバイスを相次いで発表した。

一つは心臓の状態を連続7日間モニターでき、患者は日常生活を犠牲にすることなく歩きながらモニターできるネックレスタイプのデバイスである。このデバイスには、IMEC独自開発の低消費電力のアナログASICを信号読み出しに使い、市販の低消費電力の無線/マイクロプロセッサのプラットフォームを用いている。


IMECが開発したネックレスタイプの無線心臓モニター

IMECが開発したネックレスタイプの無線心臓モニター


このプロセッサに、ウェーブレットベースの心拍検出アルゴリズムをプログラムしており歩行可能な心臓モニタリング装置にありがちなブロックノイズなどに対処できる。このアルゴリズムによって、ノイズの多い環境において速い心拍を計算する場合でも正確に行うことができる。

マイクロプロセッサはもう一つ使っており、こちらは低消費電力ながら10メートルの距離内ならこのモニターからのデータを無線で飛ばすことができる。また、受信装置にコンピュータが入っていない場合に備えてメモリーモジュールを外付けすればデータログをとることができる。

心拍アルゴリズムによって感度は99.8%と高く、予測は99.77%当たるとしている。Human++プログラムを使い、IMECとHolst Centerはこれまで培ってきたナノエレクトロニクスとナノテク技術をベースにヘルスケアをもっと効率よくもっとすぐれたものに発展させていけるとしている。このネックレスは心臓欠陥の恐れがある人々を正確に診断し確実な治療へとつなげることができる。

もう一つのデバイスは、病院では検出できないような睡眠異常を早期に発見するためのヘッドマウント型無線センサーデバイスである。ベルギーのCharleroi, Andre Vesale病院の大学病院センター(CHU)において、このシステムを使い睡眠の実験を行った。この技術を使えば、睡眠モニターを家庭にいながら使うことができ、無呼吸症候群の検出などに効果を発揮する。


IMECが開発した無線の睡眠モニター

IMECが開発した無線の睡眠モニター


安眠できないことは重大な健康問題である。米国の人口の10%が睡眠時に無呼吸症の疑いがあるといわれ、世界中で10億人が睡眠中に慢性鼻づまりになった経験があるといわれている。このワイヤレスデバイスは、頭に着用し眠りながら睡眠状態をモニターする。ヘッドバンドと3つのセンサー群からなる。脳の状態をモニターするための脳造影図用のセンサー2チャンネルと、眼球運動記録図用のセンサー2チャンネル、あごの筋肉の状態を見るための筋電図用センサー1チャンネルからなる。これら5つのチャンネル信号が睡眠状態を検出するのに必要と言われている。IMECが独自に開発した、生体電圧を読み出すための低消費電力ASICによってこの5つの信号を増幅しフィルタリングする。

測定された5つの信号を無線で記録用コンピュータに飛ばすため、頭から体への配線や記録用の配線は要らない。このデバイスは12時間連続動作する。

この睡眠実験には健康な男女12人の協力で行い、睡眠図を描き睡眠時間のパーセンテージなどの統計データを導出した。実験ではこのデバイスとリファレンスの装置を並列に動作させ、比較実験した。統計処理と比較実験から、今回の無線デバイスが実用化できることがわかったとしている。

(2009/09/03)

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