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米中の分断が現実化、Appleが5000億ドル投資、テキサスにサーバ工場を設立

先週はニュースが立て込んだ。Nvidiaの決算報告(参考資料1)をはじめ、Appleがテキサス州に新工場を設立するというニュースや、Amazonが生成AIを導入した音声アシスタント「アレクサ・プラス」などがあった。さらにWestern DigitalがNANDフラッシュ部門であるSanDiskをスピンオフさせ、ナスダック証券取引所に上場させた。

Nvidiaの売上推移

図1 Nvidiaの四半期ごとの売上額 1Q26の金額は予想なので薄く青で表現した 出典:Nvidiaの発表した数字を元にセミコンポータルがグラフ化


Nvidiaの第4四半期の売上額が前年同期比78%増の393億ドルと史上最高額を記録したが、前四半期での決算報告では第4四半期の売上額を375億ドルと見ており、18億ドルも上振れした。次の四半期予想でも、430億ドルとこれまた市場最高額を予想していることからNvidiaの成長は止まっていない。しかもこれまでの四半期先の予想は常に上振れしており、430億ドルもコンサバティブな予想と見ることができる。にも拘わらず株価は下落した。

米中の分断は現実的になってきた。Appleは新しいサーバ向けの工場を米国テキサス州に今後4年間で5000億ドルを投資して設立すると発表した。Appleと関連の部品会社(サプライヤー)は、同州ヒューストンに新工場を作り、自社の生成AI「Apple Intelligence」向けのサーバを生産する。さらにミシガン州にも新拠点を作り、半導体設計における米国での研究開発(R&D)投資を拡大する。Appleはこれまで、iPhoneやiPad、Macパソコンなどの生産は台湾鴻海精密工業らの中国工場で作っていた。今回の生成AI用のサーバは米国に回帰することになる。

分断は中国でも同様で、アリババ集団は今後3年間でクラウドとAIの基板に少なくとも3800億元(約7兆8000億円)を投資する、と2月25日の日本経済新聞が報じた。スタートアップのDeepSeekが西側諸国へ与えた影響を見て、中国は中国発の生成AIに自信を深めている。呉泳銘(エディー・ウー)最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、人間の知的労働と肉体労働を代替することで、AIが世界の産業構造を根本的に作り替えるとの見方も示した。2024年10〜12月期に、設備投資などの資本的支出を前年同期比3.6倍の317億元とした。四半期だけで、24年3月期通期(320億元)に匹敵する規模に引き上げた。

日本でも国産クラウドを作るという動きが進んでいる。富士通は生成AI向けクラウドサービスの提供を、2025年度中に始めると27日の日経が報じた。富士通が運営する国内のデータセンターで運用し、秘匿性の高い情報も安全に保管するという。米サーバ大手のSupermicro ComputerのGPUサーバ(Nvidia のGPUを組み込んだボードを利用したサーバ)や、日本語に特化した富士通の大規模言語モデル(LLM)「Takane(タカネ)」などをセットで提供する、としている。ただ、Supermicroのサーバのマザーボードに中国製のスパイチップが搭載されていたという疑惑が2018年10月にBloombergから出されており、その報道の真偽に決着がついていないようだ。

日経の記事は、「富士通は機密性の高い情報を安全に保管しながら生成AIサービスを利用したいという企業・団体の需要に応え、米テック企業に対抗する」と結んでいるが、中国軍が仕掛けたと言われるスパイチップについては触れていない。

生成AIの今後注目される応用の一つは、AIスピーカー(アシスタント)だが、新型モデル「アレクサ・プラス」をAmazonが発表した。発表会場のニューヨークで新型機を披露し、報道陣の前で周辺のピザ屋を教えてもらうなど、アレクサと流ちょうな会話を繰り広げた、と2月28日の日経は報じた。新型は「アレクサ」と1度呼んで起動すればどんな会話にも対応し、分かりやすく指示しないと「すみません、よくわかりません」と答えて会話が続かない旧型から飛躍的に進歩したという。生成AIはテキストベースの入力だが、入出力をテキストから音声へと変換することで可能になった。

24日にWestern DigitalがSanDiskを上場させ、終値ベースの時価総額は約70億ドル(約1兆500億円)になったと26日の日経が報じた。SanDiskはキオクシアと同じ工場でNANDフラッシュを生産しているが、21日にSanDiskを切り出した時の参考価格は1株50.37ドルだった。24日の上場では一時的に53ドルまで上昇したが終値は48.6ドルとなった。

参考資料
1. 「Nvidia、半導体史上最高の1305億ドル年間売上額、成長はまだ止まらない」、セミコンポータル、(2025/02/28)

(2025/03/03)
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