ファブレス半導体Nvidia、株価上昇で再び時価総額、世界一に
先週、Nvidiaの株価が上昇し、Nvidiaの時価総額が再び世界一となった。半導体企業の時価総額が世界一を11月17日現在もキープしている。Nvidiaの好調さを見ているAMDもデータセンターへ大きく舵を切りゲーム向け市場からは撤退する可能性が高くなった。東京エレクトロンがAppliedやASMLと同様、中国比率を減らしつつある。ラピダスにEUV装置が12月に到着する。

図1 世界企業の時価総額ランキング(2024年11月17日現在) 出典:CompaniesMarketcap
11月17日現在のNvidiaの時価総額は3.482兆ドル(約522兆円)となり、Apple やMicrosoft、Amazon、Google、Meta(Facebook)などを抜いて世界一に再び返り咲いた(図1)。半導体企業として、Intelでさえなしえなかった初の快挙である。2024年6月に一時的だが世界一になった後、株価を下げ時価総額でApple、Microsoftの次の3位をキープしていた。このため新聞や一部のメディアではNvidiaの株価はまもなく落ちる、という予測もあった。
しかし成長産業である半導体が落ちるわけがない、と筆者は信じており、半導体企業は時価総額のトップ100社ランニングで上位に入ってくるはずだと考えている。案の定、この1〜2週間の間は再びハイテク株、特に半導体株が値上がりしており、Nvidiaは再び世界一の企業に返り咲いた。
時価総額2189億ドル(32.8兆円)で50位のAMDは、全従業員の4%を削減するというニュースが11月15日の日本経済新聞にも載り、まるで調子が悪いのかと思わせるような見出しだが、実はそうではない。10月29日に発表された2024年6〜9月期の決算報告では前年同期比18%増の68億ドルの2桁成長の売上額で、好調だったはずだったのになぜだろうか。営業利益も非GAAPで17.2億ドル(利益率25%)と好調だった。
決算報告の内容を注意してみるとその理由がわかる。最も好調だった部門はデータセンター向けで、前年同期比122%増(2.22倍)の35.49億ドル、クライエント部門(パソコン)のそれは同29%増の18.81億ドルだったが、ゲーム用部門が同69%減の4.62億ドルと大きく減少したのである。Nvidiaの決算でも実はゲーム用はもはや伸びていない。そこで、AMDでは消費者向けのゲーム機用パソコン販売やマーケティング部門が人員削減の対象となった、と日経はBloombergの記事を引用した。AMDはゲーム機から撤退するかもしれない。そのための人員整理だろう。
また、2023年における半導体製造装置トップのASMLは、2030年12月期の売上額目標を最大600億ユーロに据え置くというニュースを15日の日経が報じた。これはASMLが10月15日に発表した24年6〜9月期決算では好調だったのにも拘わらず、受注額が減少していると発表したことで、株価が下がった(参考資料1)。このことを受けて、短期的に受注額が下がっても、長期的には従来通り成長するというメッセージを出したのである。
受注額は中国への輸出を期待しなかったために減少したのであろうと容易に想像できる。というのは、Applied Materialsが24年8〜10月期の売上額において中国比率を1年前の23年8〜10月期44%から四半期ごとに45%、43%、32%、今期の30%へと徐々に落としており、東京エレクトロンも7〜9月期には前四半期の49.9%から41.3%に落としている。1年前は42.8%から前四半期までは中国比率が上がる一方だった。ASMLの中国比率は前四半期の49%から今期は47%に落ちている。
この先も中国比率は落としていくだろうが、半導体製造の需要は長期的には、米国や日本、欧州、東南アジアへと拡大しており、中国向けの減少をカバーするため、2030年には目標額を据え置いたものと思われる。
ASMLのEUVリソグラフィ装置が12月中旬にラピダスの工場に向けて、北海道の千歳空港に到着する、と15日の日経北海道版が報じた。EUVリソグラフィ装置の国内導入はこれが初めてという。複数の大型貨物機にシステムを分けて運ぶ。ラピダスの工場を組み立てることになる。Intelが高NAのEUV装置をオレゴン工場に導入した様子をIntelはオンラインで発表している(参考資料2)。広島のMicronの工場にはまだEUV装置は入っていないようだ。
参考資料
1. 「ASMLの業績が絶好調なのに株価が下がった理由」、セミコンポータル、(2024/10/21)
2. 「高NA EUVリソグラフィ装置第1号をIntelオレゴン工場に導入、組み立てた」、セミコンポータル、(2024/04/19)