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産総研がEUVリソ装置を導入、民間利用を促す

産業技術総合研究所がEUVリソグラフィを導入して5nm以下のプロセス開発を支援する、と22日の日本経済新聞が報じた。これはIntelとの共同で整備する先端半導体の研究開発拠点に導入する。1000億円を投じるという。一方、日本にファウンドリ工場を新設するとしていた台湾のPSMCがSBIとの提携解消について理由を述べている。また、QualcommとArmとの係争が激化している。

産総研の新しい施設の建設地は、つくば市などの関東圏になるという。先端開発の経験者を100人規模で雇用するとしている。一般企業に開放し、企業が利用料を支払って、EUVを利用できるようにする。「投資資金は政府からの助成金や先端半導体の支援向けに積み立てる『ポスト5G基金』などを活用する。資金の一部を企業からの出資でまかなう案もある」と日経は報じており、先端プロセスを研究開発で利用したい企業を支援する形になる。

産業技術総合研究所 石村和彦理事長兼CEO

図1 産業技術総合研究所 理事長兼最高執行責任者の石村和彦氏


産総研では、研究開発した技術を民間に活用して広め、少しでも自立していけることを目指し、石村和彦理事長兼最高執行責任者(図1)の就任以来、民間利用を進めてきた(参考資料1)。そのための組織であるAISTソリューションズを設立し、オープン化を進めている。EUVは1台で数百億円にもなるうえ、そのメンテナンスにも費用がかかるため、一つの企業や機関で全てを賄うことができない。ファウンドリの巨人TSMCはEUVに大きなコストを支払っているが、台湾に4000名規模の駐在員がいるほどメンテナンスなどにコストも人員もかかるようだ。

ちなみに、ASMLの2024年第3四半期における売上額75億ユーロ(1ユーロは165円)の内、装置売り上げが59億ユーロ、残りが16億ユーロとなっている。この装置以外の16億ユーロ(約2400億円)がサービス収入だ。つまり四半期だけの保守・管理・調整などの現場でのサービス収入である。つまりASMLが世界企業からメンテナンスなどのサービス収入でも16億ユーロを四半期に稼いでいることになる。


台湾のPowerchip系のファウンドリPSMCは日本のSBIホールディングス(HD)と共同で、日本でファウンドリ事業を展開する予定であったが、9月下旬、その提携を解消した。その理由がこのほど明らかになった。23日の日経によると、「日本政府による10年間の量産継続要求」と「SBIHDが事業計画を示さなかったこと」を原因に挙げたという。

最初の理由に関しては、「建設計画の前提となる補助金支給の条件として、日本の経済産業省がPSMCに10年以上の量産継続を保証するよう求めたと強調した。工場の主要株主になる予定のないPSMCが量産を保証することは、台湾の法令に違反すると主張した」と報じている。2番目の理由に関しては、「SBIHD側が資金調達や販売などの実現可能な事業計画を示さなかった、とも言及した」と伝えている。PSMCの第3四半期における決算発表の席で、これらの事実を話したわけだが、同社の売上額が前年同期比12%増の116億台湾元(1台湾元は4.8円)で最終損益は28億台湾元の赤字だった。経営環境の厳しさからも日本への投資を断念したようだ。


米通信社Bloombergによると、今後60日以内に係争が決着しなければArmはQualcommに対してライセンスを解消するという最後通牒を突きつけた。QualcommはAI PC用のSoC「Snapdragon X」シリーズをIntelやAMDよりも先行して開発しており、AI PCをいち早く市場に出せる要因となっていた。このSoCは、Apple を退社して立ち上げたスタートアップNuvia社が開発したものだが、そのNuviaを2021年にQualcommが買収した。この時、NuviaへのライセンスがQualcommに転用されたことで、ArmはQualcommを訴えていた。Qualcomm側は、Nuvia買収でライセンス利用権限も自動的に移行したと考えていた。両者の間の行き違いが解消せず、今回の最後通牒となったようだ。

参考資料
1. 「AIST Solutions、半導体ICの民主化を進めるOpenSUSIを設立」、セミコンポータル、(2024/04/23)

(2024/10/28)
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