低消費電力・低コストのIoT通信Sigfox業者UnaBizがビジネスを本格的に開始
超低消費電力、低コストのIoTセンサデバイスを、Sigfox通信を使ってトラッキングするような応用を狙って、UnaBizが新ビジネス「Sub 0Gプログラム」をスタートした。KDDIと京セラの資金調達に成功した同社(参考資料1)が狙うのは物流の分野だ。Sub 0Gとは、データレートの低いIoTを意味する表現である。なぜか。
セルラー通信が4G(第4世代)から5G、さらには6Gへと高度化・高速化するのと対照的に、データレートは低くても消費電力の低さと低コストを求めるIoTシステムもある。データレートは数十kbpsや数kbpsと遅いが消費電力の低いことをむしろ積極的に売りにできる。このため、セルラー電話の2G、1Gよりもさらに遅い0G、さらにはサブ0Gという表現をした。ひたすらデータレートを遅くしても消費電力の低さを追求するのである。
UnaBiz社は、データレートの遅いIoTセンサ向けのSigfox通信ネットワークを買収で手に入れている。同社はIoT向けの通信業者であるが、実際にビジネスにつなげるためには、IoTデバイスの試作製造、利用ユーザーへの支援と確保、さらに通信の利用、といったビジネスのバリューチェーンを構築する必要がある。今後の顧客にも示すためにも意義がある。
図1 追跡する荷物や荷物を載せる台座などに張り付けるIoTデバイス
今回、UnaBizは、「Sub 0Gプログラム」と称するビジネスを立ち上げた。ここでのIoTデバイス(図1)は、ソリューションプロバイダーとして仏Linxens社、テクノロジーサプライヤーとしてオランダNXP Semiconductorと台湾HolTek、英Zinergy、と文字通りグローバルな企業の組み合わせで作っている。
グローバルな企業同士の製品やサービスで構成するIoTデバイスは図1にあるような薄いラベルタイプの製品である。いわゆる名刺サイズの大きさであり、この中に温度や湿度センサに加えて、照度センサまで備えマイコン(マイクロコントローラ)とSigfoxネットワークへの通信用半導体、さらにバッテリなどを収めている。Sigfox通信用半導体はNXP、マイコンはHoltek、バッテリはZinergyが受け持ち、システムインテグレータはLinxensとなる。ただし、UnaBizブランドのスマートタグもある(図2)。
図2 スマートタグではUnaBizブランドの製品もある 出典:UnaBiz
さまざまな企業が参加するビジネスだが、中でも英国ケンブリッジを拠点とするZinergy社は、紙のように薄くて曲げられるプリンテッドエレクトロニクス技術で作るZn(亜鉛)ベースのバッテリである。Li(リチウム)と違い、安全で環境負荷が少ないというメリットがある。バッテリそのものを印刷で作るため、ロール-ツー-ロールの量産設備で製造している。Znベースのため、曲げたり切ったりしても、Liと違って燃えることはない。
低コストで動作するトラッキングサービスとはいえ、顧客の大事な荷物を預かる物流分野では、温度と湿度、さらに照度センサまで付けたIoTデバイスの情報は、RF-IDとは情報量が違う。輸送中の荷物がきちんと温度や湿度管理されているか、あるいは途中で誰かが荷物を開封していないか(照度センサでチェック)などを常にチェックしながら、荷物を追跡(トラッキング)する。
顧客のコンピュータで荷物の状況をトラッキングするためには、Linxensが実装したカード型の薄いIoTデバイスをSigfoxネットワークに接続されることにより顧客のコンピュータで荷物の状況を見ることが可能になる。UnaBizは通信ネットワークのビジネスを担うことで収益を得ることができる。
参考資料
1. 「KDDIと京セラなどの出資を受け、低消費電力のIoTシステムを広げていくUnaBiz」、セミコンポータル、(2024/03/18)