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KDDIと京セラなどの出資を受け、低消費電力のIoTシステムを広げていくUnaBiz

シンガポールのUnaBiz社がKDDIと京セラコミュニケーションシステムなどからプレシリーズCラウンドにおいて2500万ドルの資金調達に成功した。UnaBiz社は、累積で1350万台のIoTデバイスを接続した企業であり、IoT専用のネットワークLPWA(Low Power Wide Area)事業者Sigfoxを2022年に買収したIoTプロバイダーである。さらなる低消費電力化の追求を最大のミッションとしている。

UnaBiz社 Henri Bong CEOとAlexis SussetCTO

図1 UnaBiz社CEOのHenri Bong氏(左)とCTOのAlexis Susset氏(右)


今回の日本からの資金調達によって、日本企業がIoTソリューションを国際的に展開するためのゲートウェイとなった、と京セラコミュニケーションはコメントしている。フランスのSigfoxの超低消費電力のネットワークを利用するIoTデバイスは、国内外で信頼されるだろうとKDDIはコメントしている。京セラは、日本におけるSigfoxのオペレータであり、KDDIはIoTの接続業者であるソラコムを育てたという実績があり、IoTへの理解が深い。

UnaBizが目指すものは何か。同社CEOであるHenri Bong氏(図1の左)は、セルラーネットワークが2G、3G、4G、5Gとひらすらデータレートの高速化をたどってきたのに対して、UnaBizは消費電力ゼロを目指してひたすらまい進するゼロGを目指しているという。

UnaBizは2016年にシンガポールに拠点を置くスタートアップである(図2)。2020年にフランスのSigfoxを買収したことにより、IoTサービスプロバイダーでありネットワークプロバイダーにもなった。シンガポールの会社がなぜ日本で資金調達できたか。日本には大手企業によるIoTの実績が出来ているからだ。日本の大手はいつも実績を気にするため日本で実績のあることはビジネスとしてやりやすい。


UnaBizの沿革 / UnaBiz

図2 2016年に設立しこれまで資金調達で実績を積んできた 次の目標は5000万ドルの調達 出典:UnaBiz


例えばユーティリティの分野では日本瓦斯に140万台以上のスマートメーター向けデバイスを納入した実績がある。ニチガスはスマートメーターを設置しているが、海外でも南アフリカの財務省が水道のスマートメーターとしてUnaBizのデバイス1500万台の入札を決定した。

スマートメーターだけではなく、フィンタイプのアンテナを設計・製造している原田工業にも50万台ほど納入したという。自動車業界の資産管理のソリューションとして利用されている。海外ではホームセキュリティでも盗難防止の観点から700万台の納入実績があるとしている。

アセットトラッキングの資産管理の点からは位置情報でも使われたことがあった。最初はネットワークの基地局3点による三角測量の原理を用いた簡易な方法で位置を検出していたが、誤差が1kmもあり位置精度が悪かった。そこで、ネットワークの三角測量だけではなくGPSやWiFiを組み合わせて精度を求めた。しかし、これらは消費電力が大きいため、Wi-FiのMACアドレスを送受信してきたデータを機械学習させて、その学習を元に推定する方法を開発した。消費電力の大きなWiFiは受信するだけで、IoTエッジ側からは消費電力の低いSigfoxを利用して送るという方法を使って測位することにした。まだβ版だが、ブリジストンのTPMS(タイヤの圧力管理システム)やDHLのトラッキング、大きな荷物を載せるパレットを提供する日本パレットプールなどに使われているという。

カード型のIoTデバイスには薄いバッテリが内蔵されており、消費電力の小さなチップで動く。これまでのLPWAに加え、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)にも対応するチップも使い消費電力とコストをさらに下げた、とCTOのAlexais Susset氏(図1の右)は言う。例えば2024年1月にSTMicroelectronicsが発売したIoTモジュール「STM32 SiPモジュール」はライセンス不要の周波数900MHz帯で動作し、世界各国で通信免許が要らない。


マイルストーンと展望 / UnaBiz

図3 次はAIを活用したサービスへとつなげる 出典:UnaBiz


今回、KDDIと京セラコムからの出資によって、UnaBizはさらなる成長を狙う。Bong氏は、現在の1350万台の接続数から1億台の接続数を目指すという。UnaBizの目指す0Gシステムを今後、中東にも展開すると主に、日本企業の多い東南アジアで日本企業を顧客として増やしていきたいという。シンガポールには100棟のビルに使われており、フランスの巨大スーパーマーケットのカルフールにもSigfoxが使われてきた。さらに次の目標とするシリーズCで5000万ドルの資金調達を目指したいとしている。

(2024/08/09)
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