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米政権関連|インテルCEO、大統領会談;Nvidia&AMD、15%対中輸出税

トランプ大統領および米政権関連の動きが、半導体業界にもインパクトを与えている現下&直近の週である。インテルのリップ・ブー・タンCEOについて、軍と関係のある中国企業との関係を問われた件で、トランプ大統領が同CEOに辞任を迫ったが、今週早々両者の会談が行われた結果、修復が行われた模様で、インテルへの米国政府の出資が検討されるまでに至っている。もう1つ、AI半導体の中国向け販売について、NVIDIAとAMDに対して輸出ライセンスと引き換えに売上げの15%を米国政府に支払うことで合意したことが確認されている。巨大な中国市場が開ける方がこの条件でもメリットが大きいという判断とされている。当面目が離せないやりとりとなっている。

≪応酬&取引≫

インテルのリップ・ブー・タンCEOの1件、先週末8日時点の状況である。

◇Trump May Push Intel CEO Out, Observers Say (8月8日付け EE Times)
→トランプ米大統領は、軍と関係のある中国企業との関係疑惑を理由にインテルのリップブー・タンCEOに辞任を迫り、インテルへの圧力を強めた。
 タンCEOは不正行為を否定する一方、インテルは米国の国家安全保障と国内半導体製造へのコミットメントを強調している。

◇Intel CEO responds to ‘misinformation’ and Trump threat in letter to employees (8月8日付け CNBC)
→1)*インテルのリップ・ブー・タンCEOは従業員へのメモの中で、「常に最高水準の法的・倫理的基準に従って業務を遂行してきた」と述べた。
  *このメモは、ドナルド・トランプ大統領がTruth Socialへの投稿でタンCEOに対し「即時」の辞任を求め、「強い葛藤を抱えている」と述べた後に発表された。
  *辞任要求は、Tom Cotton上院議員(アーカンソー州選出、共和党)がタンCEOと中国企業との関係、そしてそれが安全保障に及ぼす潜在的な影響について質問した時期と重なった。
 2)中国との関係をめぐりトランプ大統領が即時辞任を求めた中、インテルのリップ・ブー・タンCEOは自身の誠実さを擁護し、利害関係を否定した。タンCEOは、インテルが米国の安全保障に尽力していることを明言し、政治的圧力にもかかわらず取締役会は同社の変革計画を支持していると述べた。

◇Intel CEO says he has board’s support as Trump calls for his resignation (8月9日付け Taipei Times)
→インテルのリップ・ブー・タンCEOは、取締役会の支持を得て、利益相反を理由としたトランプ大統領の辞任要求を否定した。タンCEOは、この疑惑を「誤報」と呼び、米国の国家安全保障と倫理基準へのコミットメントを強調した。

週が明けて早々、タンCEOがトランプ大統領との会談を行い、以下の業界各紙の取り上げである。

◇Trump flip-flops on Intel CEO, calls him ‘success’ days after demanding resignation (8月11日付け CNBC)
→1)*トランプ大統領は月曜11日、Truth Socialへの投稿で、インテルのリップ・ブー・タンCEOと会談したことを明かした。
  *「彼の成功と台頭は素晴らしい物語だ」とトランプ大統領は記した。
  *この会談は、大統領がタンCEOの辞任を求めた数日後に行われた。
 2)ドナルド・トランプ大統領は、インテルのリップ・ブー・タンCEOと主要閣僚らと会談し、米国のテクノロジーリーダーシップについて協議した。先週、中国との関係をめぐる懸念からタンCEOの辞任を求めたトランプ大統領の姿勢は軟化しており、インテルの株価は時間外取引で2%上昇した。

◇Intel chief heads to White House following Trump's demand for resignation (8月11日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→*インテルのリップ・ブー・タンCEOは月曜11日にドナルド・トランプ大統領と会談すると報じられている。
 *アメリカ最大の半導体メーカーのリーダーが、最高司令官との最近の論争について対応しようと準備を進める中、重要な会談が迫っている。

トランプ大統領がタンCEOおよび同氏の取り組みを称賛する雰囲気が伝えられ、インテルの株価も上昇している。

◇Trump reverses position on Intel CEO after White House meeting―Intel CEO Tan, Trump have a "candid" meeting (8月12日付け Silicon Republic (Ireland))
→インテルのリップブー・タンCEOは、トランプ大統領が中国企業とのつながり疑惑を理由にタンCEOの辞任を求めたのを受け、ドナルド・トランプ大統領と会談した。会談は「率直」かつ「建設的」だったと評され、米国の技術と製造業の発展に向けたインテルのコミットメントに焦点が当てられた。会談後、トランプ大統領はタンCEOの成功を称賛し、継続的な協力を示唆した。インテルの株価は時間外取引で3%上昇した。

◇Trump holds high-stakes meeting with Intel CEO after calling for his resignation (8月12日付け Reuters)
→ドナルド・トランプ米大統領は、インテルのリップ・ブー・タンCEOに対し辞任を求めた数日後の月曜11日に同CEOと会談し、タンCEOを称賛し、会談を「非常に興味深いもの」と評したと述べた。
 インテルの株価は時間外取引で3%上昇した。

◇トランプ氏、インテルCEO「素晴らしい」 手のひら返しで株価6%上昇 (8月13日付け 日経 電子版 06:08)
→米インテルの株価が12日の米株式市場で前日終値に比べ約6%上昇した。リップブー・タンCEOが自身に辞任を求めていたトランプ米大統領と11日に面会した。トランプ氏が面会後にSNSへの投稿でタン氏と連携する方針を示したことで、辞任圧力が緩和したという見方が広がった。トランプ氏は11日、SNSでタン氏と面会したと明かした。

米国政府がインテルに出資する検討&協議の関連が、以下の通りである。今後の進捗&展開に注目するところである。

◇US government talking about taking a stake in Intel (8月14日付け Electronics Weekly (UK))
→ブルームバーグの報道によると、米国政府はインテル社への出資について同社と協議している。

◇Intel Shows Its Cutting-Edge 18A Process Is Ready for Non-x86 SoCs in a Live Demo, Aiming to Attract Fabless Customers Like Apple That Rely on ARM―Intel debuts 18A process for non-x86 SoCs (8月14日付け Wccftech)
→Intelは、x86系以外のシステムオンチップ(SoC)を用いたライブデモで18Aプロセスを実証し、ArmおよびRISC-Vアーキテクチャへの該プロセスの対応力を強調した。デモでは、7つのCPUコアと他社製のPCIeコントローラIPを搭載し、4Kビデオストリーミングを含む様々なワークロードを実行するチップが披露された。

◇Intel stock climbs 7% on report Trump administration is considering stake in chipmaker (8月14日付け CNBC)
→1)*トランプ政権は、経営難に陥っている半導体メーカー、インテルに対し、米国政府による株式取得を目指して同社と協議を進めていると、ブルームバーグが木曜14日に報じた。
  *インテルの株価は7%上昇し、年初来の上昇率は19%となった。
  *同社の株価は2024年には60%下落し、過去最悪の年間パフォーマンスとなった。
 2)トランプ政権が米国の半導体工場への資金提供のため、政府による株式取得を検討しているとの報道を受け、インテルの株価は7%上昇した。リップ・ブー・タンCEOは、事業拡大と過去の挫折を経験する中で、国家安全保障へのインテルのコミットメントを強調した。

◇トランプ米政権、インテル出資視野に協議 米報道で株価7%上昇 (8月15日付け 日経 電子版 07:31)
→米ブルームバーグ通信は14日、トランプ米政権が米インテルへの出資を視野に同社と協議していると報じた。金額は明らかになっていない。計画が遅れている米オハイオ州の新工場の建設を支援する可能性がある。報道を受け、インテルの株価は14日の米株式市場で前日終値に比べ約7%上昇した。

◇Intel Soars as Trump Considers US Stake in Chipmaker―Reports: US government considers a stake in Intel (8月15日付け Bloomberg)
→米国政府は、オハイオ州に建設予定のインテル半導体工場を支援するため、インテルの株式取得について協議していると報じられている。この工場は財政問題により遅延している。ブルームバーグによると、この動きは、インテルのLip-bu Tan CEOとドナルド・トランプ大統領の会談を受けてのものだという。トランプ大統領は以前、タン
 CEOの解任を求めていた。インテルは声明で、「米国の技術・製造業におけるリーダーシップ強化に向けたトランプ大統領の取り組みを深く支援することに尽力している…しかし、噂や憶測についてはコメントしない」と述べた。これらの報道を受け、インテルの株価は上昇した。

◇トランプ米政権、インテル政府出資に半導体補助金の活用検討 米報道 (8月16日付け 日経 電子版 08:20)
→米ブルームバーグ通信は15日、トランプ米政権がインテルへの政府出資を巡り、同社への半導体補助金の活用を検討していると報じた。2022年に成立した「CHIPS・科学法」で定めた補助金の枠組みから、出資金額の少なくとも一部をまかなう方向で協議している。

次に、AI半導体の対中国輸出についてであるが、米中の摩擦が続く中、NvidiaおよびAMDについて15%の対中輸出税支払い合意に至った関連が以下の通り続いていく。

◇Nvidia claps back against Chinese accusations its H20 chips pose a security risk (8月10日付け CNBC)
→エヌビディアは、同社のH20 AIチップが国家安全保障上のリスクをもたらす、あるいは遠隔操作可能な「キルスイッチ」を搭載しているという中国国営メディアの主張を否定した。米国の輸出規制にもかかわらず、エヌビディアは中国へのH20の販売を再開し、米中半導体摩擦の激化の中で自社の技術を守り抜いた。

◇What Trump’s Nvidia and AMD China deal means for the world (8月11日付け CNBC)
→1)*ホワイトハウスは、NVIDIAとAMDが中国向けチップ販売による収益の15%を米国政府に支払うことで合意したことを確認した。
  *アナリストらは、この合意はAMDとNVIDIAの両社にとって、巨大な市場へのアクセスを得ることになり、依然としてプラスになると指摘している。
  *アナリストらはCNBCに対し、ドナルド・トランプ大統領政権が策定したこの取り決めは「異例」だと語った。
 2)NVIDIAとAMDは、AIチップの輸出許可と引き換えに、中国での売上高の15%を米国政府に分配する。トランプ大統領が仲介したこの合意は、中国市場へのアクセスを再び確保するものの、長期的な事業および地政学的な不確実性を高める可能性もある。

◇Nvidia and AMD agree to pay 15% of China AI chip sales to US: FT―Report: Nvidia, AMD to pay US 15% of China chip sales (8月11日付け Fierce Electronics)
→NVIDIAとAdvanced Micro Devices(AMD)は、輸出ライセンスの取得と引き換えに、特定の先進チップの中国向け販売売上げの15%を米国政府に支払うことで合意したと報じられている。この合意により、NVIDIAはH20チップ、AMDはMI308チップを中国に販売できるようになる。商務省は先週、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOとドナルド・トランプ大統領の会談を受け、これらのチップのライセンス発行を開始した。

◇Nvidia and AMD to pay 15% of China chip sales revenues to the U.S. government, FT reports (8月11日付け CNBC)
→1)*フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、両社はチップ販売による売上げの15%と引き換えに、NVIDIAのH20チップとAMDのMI308チップを中国で販売するための輸出ライセンスを取得する。
  *フィナンシャル・タイムズ紙によると、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは先週トランプ大統領と会談した。
  *トランプ大統領は先週、企業が「米国内で製造」しない限り、半導体とチップの輸入に100%の関税を課すと述べていた。
 2)NVIDIAとAMDは、NVIDIAのH20チップとAMDのMI308チップの輸出ライセンスを取得するため、中国における特定のチップ販売による売上げの15%を米国政府に支払うことで合意した。この合意は、ホワイトハウスが関税を戦略的に活用していることを反映している。

◇Nvidia, AMD Revenue-Sharing Deal with U.S. Called Unique―The deal comes as Trump has also said he aims to levy a tariff of up to 100% on chip imports in the U.S. in the coming weeks. (8月12日付け EE Times)
→1)EE Timesに話を聞いたアナリストによると、NVIDIAとAMDが中国での売り上げの15%の税金を米国政府に支払うという「ユニークな」合意を結んだようだが、これにはおそらくホワイトハウスによる輸出規制緩和の合意も含まれているようだ。
 2)エヌビディアとAMDは、輸出規制の緩和と引き換えに、中国での売上高の15%を米国政府に譲渡することで合意したと報じられている。これにより、限定的なAIチップの販売が可能になる。アナリストたちは、この稀有な「逆関税」合意は前例がなく、金融面と地政学面で重大な影響を及ぼすと指摘している。

◇White House says it’s working out legality of Nvidia and AMD China chip deals (8月12日付け CNBC)
→1)*トランプ政権はNVIDIAに対する15%の輸出税の詳細を詰めている最中で、同様の取引を他の企業にも適用する可能性があると、ホワイトハウスは火曜12日に発表した。
  *「現時点では、この2社が対象となっている。将来的には他の企業にも拡大する可能性がある」と、ホワイトハウス報道官のKaroline Leavitt氏は述べた。
  *貿易に詳しい弁護士や専門家は、政府が輸出ライセンス料を徴収する方法を規制する既存の法律があるため、トランプ大統領の合意は複雑になる可能性があると警告している。
 2)トランプ政権は、中国向けの半導体販売に関連して、NVIDIAとAMDに対する15%の輸出税を最終決定しており、他の企業にも適用範囲を拡大する可能性がある。輸出ライセンスを付与するこの合意は、既存の貿易法の遵守状況について法的審査を受けることになる。

◇Trump says he’s open to letting Nvidia sell a downgraded version of its most advanced chip to China (8月12日付け CNBC)
→1)*ドナルド・トランプ大統領は、NVIDIAがBlackwellシステムのダウングレード版を中国に販売することを許可する意向を示した。
  *Blackwellは、NVIDIAが現在AI向けに設計した最先端システムである。
  *トランプ大統領は、Blackwellに関してNVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏と会談する予定だと示唆した。
 2)トランプ大統領は、米国への売上高を15%削減する代わりに、NVIDIAがBlackwell AIチップのダウングレード版を中国に販売することを許可する意向を示した。この販売は、性能が30〜50%低下する可能性がある。これは、中国の米国技術への依存を維持する狙いがある。

◇米政権、対中半導体で企業に「上納金」 経済安保にもディールの危うさ (8月12日付け 日経 電子版 06:06)
→トランプ米大統領は11日、米半導体大手に中国輸出を認める見返りに売り上げの15%を米政府に支払う仕組みを始めると明らかにした。中国が軍事的に利用する懸念から導入した半導体の輸出規制を巡って、企業と「ディール(取引)」し国の収入を増やす手法は危うさをはらむ。

◇NVIDIA、中国「バックドア」懸念に反論 ファーウェイと攻守逆転 (8月13日付け 日経 電子版 07:14)
→中国当局が米エヌビディアのAI半導体を巡り、バックドア(裏口)と呼ぶセキュリティー上の懸念を強めている。エヌビディア側は反論している。米国側が中国通信機器大手の華為技術を同様の理由で排除した前回のトランプ米政権時と、攻守は逆転した。米ブルームバーグ通信によると、中国当局は自国企業にエヌビディア製のAI半導体「H20」を使わないよう求めた。

◇エヌビディア対中輸出に暗雲 中国、セキュリティー懸念表明 AI半導体内製化に自信 (8月14日付け 日経)
→米エヌビディアの中国事業に暗雲が垂れ込めてきた。トランプ米大統領は4月に禁止したAI半導体の対中輸出再開を認めたものの、中国側がセキュリティー面の懸念を理由に国内利用に待ったをかけた。安全保障をめぐる大国間の対立が、世界のAI開発をけん引するエヌビディアの戦略を揺らしている。
 米ブルームバーグ通信によると、中国当局は自国企業にエヌビディア製のAI半導体「H20」を使わないよう求めた。特に政府関連や国家安全保障に関連する業務で使用しないよう強く要求したという。

いろいろな問題点を孕んだ合意と並行して、米中の摩擦&応酬が続いている。

米国政府が絡む上記の内容は、いろいろ波乱要因があって、今後の進み具合に逐次注目するところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□8月11日(月)

上記の内容も然り、トランプ大統領に関わる内容が以下続くこの1週間である。

◇U.S.-China high-stakes tariff truce extension hangs in the balance as deadline looms―US-China tariff truce extension uncertain as cutoff looms (CNBC)
→1)*トランプ大統領は延長に応じるかどうかについてほとんど示唆しておらず、世界二大経済大国間の緊張が再び高まるのではないかという懸念が高まっている。
  *正式な関税延長は依然として不透明だが、専門家の間では、トランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談が今後数ヶ月以内に北京で開催されるとの見方が広がっている。
  *貿易協定では、中国が米国製品の購入拡大、特にエネルギー、農産物、そして半導体やチップ製造装置の購入拡大を約束する可能性がある。
 2)米中両国間の現在の関税停戦の期限は急速に近づいているが、双方から延長の正式な発表はない。中国は最近の協議を受けて楽観的な見方を示し、追加関税の90日間の停止期間を延長する意向を示しているが、最終決定はドナルド・トランプ大統領に委ねられており、大統領はまだ自身の立場を明確にしていない。

□8月12日(火)

利下げ観測、インフレ懸念など上げ下げがあって、締めでは一時最高値も見られた今週の米国株式市場である。

◇NYダウ、反落し200ドル安 CPI発表を前に利益確定売り (日経 電子版 06:11)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前週末比200ドル52セント(0.45%)安の4万3975ドル09セントで終えた。金融政策を見極める上で重要な物価指標が発表されるのを前に、高値圏にあったハイテク株などに利益確定売りが出た。トランプ米大統領の関税政策を巡る不透明感も投資家心理の重荷だった。

◇対中関税を90日再延期、トランプ氏が大統領令署名 米報道 (日経 電子版 06:15)
→トランプ米大統領は11日、対中関税の一部を再び90日間延期するための大統領令に署名した。複数の米主要メディアが伝えた。11月上旬まで現在の累計30%の追加関税率を維持し、中国と貿易協議を続ける。トランプ氏は署名に先立ち米国産の大豆をもっと輸入するよう中国に圧力をかけた。

◇日経平均株価が最高値更新 マネー膨張、関税影響を楽観 (日経 電子版 18:31)
→日経平均株価が1年1カ月ぶりに最高値を更新した。米国との関税交渉が進展し、企業業績への影響が見通しやすくなったとして、投資家は再びリスク資産を購入している。金融緩和などで世界的に膨らんだマネーも株高を支えている。
 日本企業は2026年3月期、6年ぶりに減益になる見通しだ。将来の業績回復まで見込んだ前のめりの株買いは、米景気変調などで逆回転するリスクをはらむ。

□8月13日(水)

◇米国、7月CPIも急上昇回避 宙に浮く「関税インフレ」論 (日経 電子版 05:49)
→米労働省が12日公表した7月の消費者物価指数(CPI)は前月比で0.2%上昇し、市場予想通りの結果となった。企業は関税の価格転嫁を進めつつあるが、物価全体の急上昇には至っていない。目に見えない関税の影響は見極めが難しく、かみ合わない議論が続いている。

◇NYダウ、反発し483ドル高 物価上昇への警戒和らぐ (日経 電子版 06:10)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比483ドル52セント(1.09%)高の4万4458ドル61セントで終えた。朝発表の7月の米CPIがおおむね市場の想定通りとなった。物価上昇への過度な警戒が和らぎ、幅広い銘柄に買いが膨らんだ。

□8月14日(木)

上記のAI半導体の扱いが、他分野にも展開の可能性である。

◇米財務長官、他産業にも「上納金」モデル 安全保障に見返りの波紋 (日経 電子版 02:00)
→ベッセント米財務長官は13日、米半導体大手に中国輸出を認める見返りに売上高の15%を米政府に納めさせる仕組みについて「やがて他の産業でもみられるようになる」と述べた。発表したばかりの対中輸出の「上納金」モデルが他産業にも広がる可能性を示した。

◇NYダウ続伸、463ドル高 S&P500は利下げ期待で連日最高値 (日経 電子版 07:09)
→13日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比463.66ドル(1%)高の4万4922.27ドルで引けた。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げをするとの観測が強まり、株を買う動きが優勢となった。

◇トランプ氏、米ロ会談「2回目が重要」 進展あればゼレンスキー氏も (日経 電子版 07:46)
→トランプ米大統領は13日、15日の米ロ首脳会談で協議が進展すれば「直ちに」ウクライナのゼレンスキー大統領を加えた3首脳による会談を開くと表明した。プーチン氏との初回協議で停戦合意は難しいとの見方を示し「2回目が重要だ」と語った。

□8月15日(金)

◇NYダウ小反落、11ドル安 卸売物価が重荷もS&P500は連日高値 (日経 電子版 06:02)
→14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに小幅反落し、前日比11ドル01セント(0.02%)安の4万4911ドル26セントで終えた。朝発表の7月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回る伸びとなり、インフレ懸念が改めて広がった。
 もっとも、9月の利下げ観測は根強かった。売り一巡後は下げ渋り、ダウ平均は小幅に上昇する場面もあった。

□8月16日(土)

肝心の半導体関税の扱いに、今後の注目である。

◇トランプ氏、半導体関税を近く公表 将来「200、300%にも」 (日経 電子版 00:03)
→トランプ米大統領は15日、記者団に半導体関税を近く公表する意向を改めて示した。「200%や300%になるかもしれない」と、将来的に税率を引き上げていく考えを明らかにした。

◇NYダウ小幅反発、最高値を一時上回る 半導体関税懸念で終値は届かず (日経 電子版 05:30)
→15日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比34ドル高の4万4946ドルで終えた。前日、著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが保有を明らかにした米医療保険大手株が上昇し一時、2024年12月につけた史上最高値を上回った。トランプ米大統領が来週にも半導体に関税を課す考えを示すと上げ幅を縮め、終値では最高値に届かなかった。

◇米ロ首脳、ウクライナ侵略で和平合意できず アラスカで会談 (日経 電子版 09:24)
→トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領は現地時間15日昼(日本時間16日早朝)、米アラスカ州アンカレジで会談した。トランプ氏は会談後の共同記者会見で「生産的だった」と総括しつつ、ロシアが侵略するウクライナの停戦で合意できなかったと明かした。


≪市場実態PickUp≫

【TSMC関連】

引き続き好調な業績、そして6インチ事業の段階的廃止、とともに注目する内容である。

◇Sales at TSMC surge 26 percent on AI spending (8月9日付け Taipei Times)
→TSMCは、AIチップの堅調な需要に支えられ、7月の売上高が26%増加したと発表した。為替変動の影響を受けながらも、TSMCの売上高は米国の関税免除とスマートフォン業界の力強い回復の恩恵を受け、年初来で38%増加した。

◇TSMC July revenues up 25.8% forecasts 30% growth for the year―TSMC saw July revenue surge, projects 30% annual growth―TSMC’s July revenues of $10.9 billion were 22.5% up m-o-m and 25.8% up y-o-y (8月11日付け Electronics Weekly (UK))
→TSMCは、7月の売上高が前年同期比25.8%増の$10.9 billionに達したと発表した。今年7月までの売上高は、2024年の同時期比37.6%増の$70.1 billion。同社は通期で30%の売上高増加を見込んでいる。

◇TSMC to phase out 6-inch wafer business in 2 years (8月12日付け Focus Taiwan)
→TSMCは、2年以内に6インチウェハ事業を段階的に廃止し、8インチ事業を統合し、先端生産能力に$20 billion以上を投資する予定である。同社は、AI需要の急増を背景に、2025年の売上高成長率を堅調に維持している。

◇TSMC 6-inch Wafer Fab Exit Affirms Strategy Shift―TSMC is practicing Intel’s “Only the Paranoid Survive” mantra by shedding legacy fabs and moving to larger wafers.―TSMC is shedding legacy fabs and moving to larger wafers.―TSMC to phase out 6-inch wafer production by 2027 (8月13日付け EE Times)
→1)TSMCは、窒化ガリウム(GaN)パワーエレクトロニクス業界に衝撃を与えたウエハー製造からの撤退を発表した後、台湾の巨大ファブが今後2年間で6インチウエハー製造を段階的に廃止する計画を発表し、新たな衝撃を与えた。同社は昨日終了した取締役会でこの決定を下した。
 2)TSMCは、コスト効率と運用効率性の向上を目指し、大型ウェーハへの注力戦略の一環として、2年以内に6インチウェーハの生産を段階的に廃止する計画だ。同社は顧客に対し、Fab 2の生産を2027年に停止することを通知した。TSMCは中国のファブからの価格圧力に直面し、生産効率の最適化による長期的な成長を目指している。
 3)TSMCは2027年までに6インチウェハの生産を段階的に廃止し、より大規模で効率的なファブにリソースをシフトする。同社は、既存の工場を最先端のIC組立拠点へと転換し、世界的な競争の中で長期的な成長、効率性、そして回復力を強化することを目指している。


【中国半導体関連】

自給自足、自立化を引き続き図っている中国のさまざまな実態があらわされている以下それぞれの内容である。

◇China’s SMIC downplays impact of Trump’s plan to impose 100% tariff on chip imports (8月8日付け South China Morning Post)
→1)SMICの第2四半期の売上高のうち、中国が84.1%を占め、南北アメリカ地域が12.9%を占めた。
 2)SMICは、米国が提案している100%の半導体関税による潜在的な影響について、堅調な国内需要と米国へのエクスポージャーの少なさを理由に軽視した。成長の鈍化と利益の減少にもかかわらず、同社の工場はフル稼働しており、売上高の84%以上を中国が占めている。

◇China’s efforts to consolidate its fragmented semiconductor sector facing setbacks―China's semiconductor consolidation faces hurdles (8月11日付け New Electronics)
→1)フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、中国は分散化した半導体セクターの統合に向けた取り組みで挫折に直面しているという。
 2)中国は、半導体セクターを国営による支配的な企業体に統合しようと試みているが、合併交渉が所有構造や企業価値評価をめぐって行き詰まり、困難に直面している。注目すべき失敗例としては、Empyrean TechnologyによるXpeedicの買収が挙げられる。

◇Tech war: Huawei to unveil tech to cut China’s reliance on HBM chips, report says (8月11日付け South China Morning Post)
→1)中国の主要なメモリチップメーカーは進歩を遂げているものの、マイクロンやSKハイニックスといった米国や韓国のライバル企業には依然として遅れをとっている。
 2)ファーウェイは、上海フォーラムでChina UnionPay(中国銀聯)と提携し、AI推論における外国産高帯域幅メモリ(HBM)チップへの依存を軽減する画期的な技術を発表する。米国の輸出規制が続く中、自給自足型のAIハードウェアエコシステムの構築を推進する。

◇China’s chip investment falls in first half of 2025 while equipment funding surges: report (8月12日付け South China Morning Post)
→1)調査会社CINNOによると、この変化は中国の自立型サプライチェーン構築への取り組みを反映しているという。
 2)中国の半導体投資は2025年上半期に9.8%減少し、4,550億元となった。しかし、ウェハ製造を中心とする資金調達と材料投資の増加により、装置支出は53%増加し、サプライチェーンの自立と次世代技術への取り組みが浮き彫りになっている。

◇ファーウェイ、AIの推論効率20倍に 来月から新技術提供 (8月14日付け 日経)
→中国通信機器大手の華為技術は生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)の推論の効率を最大で約20倍高める技術を開発した。9月から一般向けに提供する。米国政府が半導体などの輸出を規制するなか、技術の内製化を進めて対応する。

◇DeepSeek、新AIモデル開発遅れ ファーウェイの半導体が原因か (8月14日付け 日経 電子版 19:34)
→中国のAI新興、DeepSeekが新たなAIモデルの開発に苦戦している。本来は5月に投入する予定だったが遅れている。中国通信機器大手の華為技術の半導体でモデルを訓練したが、思うように性能が上がらないもようだ。


【高帯域幅メモリ(HBM)関連】

AI関連需要に不可欠のデバイス、HBMについて、これもいろいろな切り口、関連する内容を取り出している。

◇What’s Different About HBM4―New DRAM standard aims to solve a critical bottleneck. (8月11日付け Semiconductor Engineering)
→ケイデンスのgroup director for product management、Frank Ferro氏は、膨大な処理能力にもかかわらず、メモリ帯域幅のボトルネックがAIトレーニングの妨げになっていると警告している。同氏はHBM4がHBM3に対してどのようなメリットがあるかを詳しく説明し、将来のデータセンターにおけるハイパースケーラーの増大するデータ移動ニーズを満たすためのさらなるイノベーションの重要性を強調している。

◇Exclusive: SK Hynix expects AI memory market to grow 30% a year to 2030―SK Hynix: HBM chips market for AI will be up 30% annually until 2030 (8月11日付け Reuters)
→*カスタムHBM市場、2030年までに数百億ドル規模に
 *SKハイニックス、テクノロジー企業のAI支出増額を予測
 *SKハイニックスとサムスンは100%の関税対象にはならないと貿易特使が表明
韓国のSKハイニックスの幹部はロイター通信とのインタビューで、AI向けに設計された特殊なメモリチップの市場が2030年まで年率30%で成長すると予測していると述べた。
AI向け高帯域幅メモリ(HBM)の世界的成長に関する楽観的な予測は、数十年にわたり石油や石炭などのコモディティのように扱われてきたこの分野における価格上昇圧力への懸念を一掃するものだ。

◇Will Samsung's chip recovery momentum extend to HBM?―Analysts tie Samsung's chip hopes to HBM timeline ―Timing of HBM3E supply, cost of HBM4 to determine memory recovery (8月11日付け The Korea Times (Seoul))
→1)サムスン電子は半導体事業に回復の兆しを見せており、市場の注目はNVIDIAのAIアクセラレータ向けHBM、3EチップのタイムラインとHBM4市場における競争力に集中している。HBM4の供給は、2026年にNVIDIAの次世代AIプロセッサで主流になると予想されており、サムスンはタイムリーな供給を確保するため、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)設備への投資を進めている。
 2)サムスンの半導体事業は、米国ファウンドリからの大型受注により回復基調にあり、その焦点はNVIDIAのAIプロセッサ向けHBM3EおよびHBM4チップに移っている。アナリストはHBM3Eの遅延の可能性を予測しているが、高度な1c DRAM技術は、コスト上昇にもかかわらず、サムスンの競争力を高める可能性がある。

◇Micron walks away from China's mobile NAND market, opening doors for rivals―Micron's withdrawal from China NAND market could help rivals (8月13日付け DigiTimes)
→マイクロン・テクノロジーはモバイルNANDフラッシュ市場から撤退し、中国での事業規模を縮小する。この動きはサムスン電子とYMTCに有利に働くだろう。この米国の半導体メーカーは、HBMの急成長に乗ろうとしている。


【現下の半導体市場関連】

AIが席巻する一方、捉えどころが難しく、先行き不安定と概観されている現下の半導体市場について、これまたいろいろな切り口、勝手ながらの以下取り出しである。改めて知る実態でもある。

◇Samsung’s Chip Investments in the U.S. Expected to Exceed $50 Billion After Massive Deals With Tesla and Apple; Taylor Fab to Open at the End of October―Samsung could reach $50B in US investments (8月10日付け Wccftech)
→サムスン電子は、アップルやテスラとの最近の契約締結を背景に、米国への投資を最大$50 billionまで増額する計画だと報じられている。同社は2ナノメートル製造ラインと先進パッケージング施設の開発に注力し、TSMCに次ぐ米国第2位の半導体メーカーとしての地位を強化する。テキサス州テイラーにあるサムスン工場は10月に生産を開始する予定だ。

◇DRAM supply tightens as prices soar―Report: DRAM prices to surge amid supply constraints (8月12日付け Electronics Weekly (UK))
→1)TrendForceによると、DRAMの供給が逼迫しており、第3四半期には契約価格が急騰すると予想されている。
 2)TrendForceによると、DRAMの供給が逼迫しており、全セグメントで価格上昇につながっている。第2四半期に18〜23%上昇したコンシューマー向けDRAM価格は、第3四半期には85〜90%急騰すると予想されている。DDR4の供給不足が続いているため、PCメーカーはDDR5の採用を加速させざるを得ず、その結果、DDR4の価格が上昇し、数量が減少するとレポートは述べている。TrendForceは、2026年にはDDR5の普及が進むにつれて、サーバー市場におけるDDR4の需要が緩和すると予測している。

◇DDR4 and LPDDR4 supply tightens as shortages drive price surge (8月13日付け New Electronics)
→TrendForceの新しい調査によると、DDR4市場は依然として供給不足の状態が続いており、2025年下半期まで価格の大幅な上昇が続いていることが示されている。

◇7月の台湾IT19社、8.4%増収に鈍化 AIは好調、スマホ一服 (8月13日付け 日経)
→世界のIT大手に半導体やデジタル製品を供給する台湾メーカー主要19社の7月の売上高合計は前年同月比で8.4%増だった。米エヌビディアなどに供給するAI向けのサーバーや半導体の販売好調が続いた。スマートフォン向けなどの需要が一服して伸び率は鈍化した。日本経済新聞が台湾IT関連の主要19社の売上高を調べたところ、7月の合計額は1兆5241億台湾ドル(約7兆5000億円)だった。17カ月連続の増加となった。

◇AI to Dominate Demand in 2025, While the Electronics Industry Faces Slow Growth in 2026, Says TrendForce (8月13日付け TrendForce)
→TrendForceは、2025年のエレクトロニクス市場の成長はAIサーバーに左右される一方、消費者向けデバイスはインフレ、イノベーションの停滞、そして地政学的リスクの影響で停滞すると予測している。前倒しの受注は上半期の売上高を押し上げるものの、第4四半期の減速リスクがあり、2026年は低成長の統合期に入ると予想される。

◇Semiconductor Intelligence forecasts 13% growth―Semiconductor market forecast to see 13% growth for full year (8月15日付け Electronics Weekly (UK))
→WSTSによると、2025年第2四半期の世界半導体市場は$180bnで、2025年第1四半期から7.8%増、2024年第2四半期から19.6%増となった。
 Semiconductor Intelligenceによると、2025年第2四半期は、6四半期連続、前年同期比18%以上の成長を記録した。
※第2四半期半導体売上げランキング

US$B
Nvidia
45.0
Samsung SC
19.9
SK Hynix
15.9
Broadcom
14.9
Intel
12.9
Micron
9.3
Qualcomm (IC)
9.0
AMD
7.7
Mediatek
4.9
TI
4.4


【AI(人工知能)関連】

ちょっと目を離すと、景色が一変している、とあらわされるAI関連。この1週間でも以下にその一部。並行、走りながらの随時注目である。

◇The Painful Reality Of Scaling Cloud AI―GenAI workload demands are growing orders of magnitude faster than transistor density. (8月12日付け Semiconductor Engineering)
→生成AIの爆発的な成長はインフラに負担をかけ、コスト、エネルギー消費およびハードウェアの故障を急増させている。大規模な学習と推論は信頼性と経済性に課題をもたらし、AIのパフォーマンスニーズを維持するための画期的なハードウェアの緊急需要を浮き彫りにしている。

◇ChatGPTの新モデルに「冷たくてつらい」の声 共感力低下に失望 (8月12日付け 日経 電子版 07:47)
→米オープンAIの対話型AI「ChatGPT」を動かす新型モデルに対し、利用者の間で共感力が高かった旧モデルの存続を求める声が広がった。AIに性能の高さだけでなく心理的なつながりを求める人が増え、AIとの関係性が新たな段階に入ったことを浮き彫りにしている。

◇マスク氏「Apple提訴」でアルトマン氏と舌戦 OpenAIの政権接近に焦り (8月13日付け 日経 電子版 05:47)
→米起業家イーロン・マスク氏が米オープンAIへの対抗意識を一段と強めている。オープンAIのサム・アルトマンCEOがトランプ米政権に急接近しているためだ。オープンAIのアプリが「米アップルの配信ストアで優遇されている」と批判し、アルトマン氏と舌戦を続けている。マスク氏は11日、X(旧ツイッター)上でアップルに対して法的措置をとると表明した。

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