6月世界半導体販売高、月次最高さらに更新;関税&摩擦、不安定性要因
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より6月そして4−6月四半期の世界半導体販売高が発表され、6月は、3月以降4ヶ月連続の前月比増とともに月次最高を更新、$59.9 billionと大台に迫っている。AI(人工知能)関連需要が大きく牽引する見え方であるが、今後の推移に引き続き注視を要するところである。加えて、米国政府、トランプ大統領の相互関税、そして分野別の半導体関税の一連の動きが、AI半導体輸出はじめ米中摩擦関連と相まって、先行きの見通しに向けて不安定性要因となっている。地政学インパクトに揺れる情勢とともに、世界各国・地域それぞれの対応&動きについて、半導体業界の視点からも推移に目が離せない現時点である。
≪見通せない先行き≫
今回の米国・SIAからの発表が、次の通りである。
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○グローバル半導体販売高、第一四半期から第二四半期で7.8%増;6月販売高、前月比1.5%増―6月販売高、Asia PacificおよびAmericas市場での力強さが引っ張って、前年同月比19.6%増 …8月4日付け SIA/Latest News
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2025年第二四半期のグローバル半導体販売高が$179.7 billionで、第一四半期比7.8%の増加と発表した。2025年6月のグローバル販売高が$59.9 billionで、2024年6月の$50.1 billionに比べて19.6%の増加であり、2025年5月の販売高を1.5%上回った。
月次販売高は、WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)機関が集計し、3ヶ月移動平均を表している。SIAは、売上高で米国半導体業界の99%を代表し、米国以外のチップ企業のほぼ3分の2を代表している。
「今年の第二四半期の世界半導体販売高は引き続き好調で、第一四半期比で8%増、前年同期比でも約20%増となった。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏。「前年同期比の市場成長は、アジア太平洋地域と南北アメリカ市場における売上高の増加が牽引し、今年後半に向けて世界全体での年間成長が見込まれている。」
地域別では、6月の前年同月比で、Asia Pacific/All Other (34.2%), the Americas (24.1%), China (13.1%), およびEurope (5.3%)で増加したが、Japan (-2.9%)では減少した。6月の販売高前月比では、Asia Pacific/All Other (5.8%)およびChina (0.8%)で増加したが、Americas (-0.2%), Europe (-0.7%), およびJapan (-1.7%)で僅かに減少した。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Jun 2024 | May 2025 | Jun 2025 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 14.77 | 18.36 | 18.33 | 24.1 | -0.2 |
Europe | 4.18 | 4.43 | 4.40 | 5.3 | -0.7 |
Japan | 3.78 | 3.73 | 3.67 | -2.9 | -1.7 |
China | 15.25 | 17.10 | 17.24 | 13.1 | 0.8 |
Asia Pacific/All Other | 12.13 | 15.39 | 16.28 | 34.2 | 5.8 |
計 | $50.10 B | $59.01 B | $59.91 B | 19.6 % | 1.5 % |
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市場地域 | 1- 3月平均 | 4- 6月平均 | change |
Americas | 18.45 | 18.33 | -0.6 |
Europe | 4.23 | 4.40 | 3.9 |
Japan | 3.77 | 3.67 | -2.7 |
China | 15.36 | 17.24 | 12.2 |
Asia Pacific/All Other | 13.77 | 16.28 | 18.2 |
$55.58 B | $59.91 B | 7.8 % |
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※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2025/08/June-2025-GSR-Table-and-Graph-1.pdf
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この発表を受けた業界各紙の取り上げは、本欄を埋めている時点、見当たらない状況である。
2021年、2022年と相次いで年間半導体販売高の最高を更新して、2023年は減少に転じたが、2024年はAI需要が牽引してまたも過去最高を更新するとともに、$600 Billionの大台に初めて載せた経緯となっている。
パソコン、スマホなど従来の主要応用分野の本格回復がいまだ道半ばという見方が優勢な中、AIが大きく引っ張る現下の市場がどう推移するか、今後に注目するところである。照らし合わせの意味合いで、2022年以降の以下の見方を続けることにする。
以下、米国・SIAの月初の発表時点の販売高、そして前年同月比および前月比が示されている。
2024年11月に記録した単月販売高最高の$57.82 Billionから、2ヶ月連続若干落として、この2025年1月は$56.52 Billionとなっている。依然最高水準にあることは以下のデータよりわかるが、今後に向けては現下の市場特性の見極めを要するところである。
2月の販売高としては史上最高を記録しているが、以下に示す通り、前月比で3ヶ月連続減少しており、今後に注目するところである。3月は若干持ち直して、前月比減に歯止めを施す見え方となっている。四半期の締めで集中駆け込みの可能性もあり、引き続き推移に注視を要する。4月も引き続き盛り返して、2024年11月の最高に迫る水準である。今後も増勢が維持されるかどうか、注目である。
5月は$58.98 Billionと、以下で分かる通り、昨年の11月を上回って、月次最高となり、たぶんに史上最高の月次水準になる覚えである。このAIが引っ張る増勢の今後に注目するところである。
そして、6月は$59.91 Billionで、またも月次最高、どこまでいくか、という見方&期待であり、$60 Billionの大台に迫っている。
販売高 | 前年同月比 | 前月比 | 販売高累計 | |
2022年 1月 | $50.74 B | 26.8 % | -0.2 % | |
2022年 2月 | $50.04 B | 26.1 % | -1.4 % | |
2022年 3月 | $50.58 B | 23.0 % | 1.1 % | |
2022年 4月 | $50.92 B | 21.1 % | 0.7 % | |
2022年 5月 | $51.82 B | 18.0 % | 1.8 % | |
2022年 6月 | $50.82 B | 13.3 % | -1.9 % | |
2022年 7月 | $49.01 B | 7.3 % | -2.3 % | |
2022年 8月 | $47.36 B | 0.1 % | -3.4 % | |
2022年 9月 | $47.00 B | -3.0 % | -0.5 % | |
2022年10月 | $46.86 B | -4.6 % | -0.3 % | |
2022年11月 | $45.48 B | -9.2 % | -2.9 % | |
2022年12月 | $43.40 B | -14.7 % | -4.4 % | $584.03 B |
2023年 1月 | $41.33 B | -18.5 % | -5.2 % | |
2023年 2月 | $39.68 B | -20.7 % | -4.0 % | |
2023年 3月 | $39.83 B | -21.3 % | 0.3 % | |
2023年 4月 | $39.95 B | -21.6 % | 0.3 % | |
2023年 5月 | $40.74 B | -21.1 % | 1.7 % | |
2023年 6月 | $41.51 B | -17.3 % | 1.9 % | |
2023年 7月 | $43.22 B | -11.8 % | 2.3 % | |
2023年 8月 | $44.04 B | -6.8 % | 1.9 % | |
2023年 9月 | $44.89 B | -4.5 % | 1.9 % | |
2023年10月 | $46.62 B | -0.7 % | 3.9 % | |
2023年11月 | $47.98 B | 5.3 % | 2.9 % | |
2023年12月 | $48.66 B | 11.6 % | 1.4 % | $518.45 B |
2024年 1月 | $47.63 B | 15.2 % | -2.1 % | |
2024年 2月 | $46.17 B | 16.3 % | -3.1 % | |
2024年 3月 | $45.91 B | 15.2 % | -0.6 % | |
2024年 4月 | $46.43 B | 15.8 % | 1.1 % | |
2024年 5月 | $49.15 B | 19.3 % | 4.1 % | |
2024年 6月 | $49.98 B | 18.3 % | 1.7 % | |
2024年 7月 | $51.32 B | 18.7 % | 2.7 % | |
2024年 8月 | $53.12 B | 20.6 % | 3.5 % | |
2024年 9月 | $55.32 B | 23.2 % | 4.1 % | |
2024年10月 | $56.88 B | 22.1 % | 2.8 % | |
2024年11月 | $57.82 B | 20.7 % | 1.6 % | |
2024年12月 | $56.97 B | 17.1 % | -1.2 % | $616.70 B |
年間最高更新 | ||||
2025年 1月 | $56.52 B | 17.9 % | -1.7 % | |
2025年 2月 | $54.92 B | 17.1 % | -2.9 % | |
2025年 3月 | $55.90 B | 18.8 % | 1.8 % | |
2025年 4月 | $56.96 B | 22.7 % | 2.5 % | |
2025年 5月 | $58.98 B | 19.8 % | 3.5 % | |
2025年 6月 | $59.91 B | 19.6 % | 1.5 % |
上記の2022年からの推移について、各年の締めをどうあらわしているか。
2022年から2024年の最終週のイントロ部分を取り出して、以下示している。コロナ禍が明けて、AI需要が台頭してくる推移を、改めての見直しである。
「後半急減の半導体市場、米中摩擦等国益の中核としての半導体:2022年」
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新型コロナウイルスによる累計感染者数は金曜30日夕方時点、世界全体で6億5956万人に達し、7日前から約359万人増と、前週比53万人減である。ほぼ1年前の12月25日午前時点では2億7875万人であった。現在は、中国で感染急増の一方、入国時の強制隔離撤廃など規制緩和が行われようとしており、その中国からの入国受け入れで各国の対応が分かれているところである。
米中摩擦、コロナ禍が引き続く中、ロシアがウクライナに侵攻、各国・地域の防衛意識が否応なく高まって、安全保障に向けた国益の中核を担う半導体のプレゼンスが一層注目された2022年である。2021年に史上最高を大幅に更新した販売高は、2022年前半はその増勢を維持したものの、後半は急な減少が見られているが、年間最高更新は確実な現時点の見方である。以下、この1年の半導体業界の動きを振り返っていく。
米国・SIAからの月次世界半導体販売高データ関連が、以下の通りである。年間販売高の最高を大幅に更新した2021年の増勢が維持された2022年前半であるが、7月あたりから市況の変わり目が取り沙汰され、メモリ半導体はじめ急激な減少が見えてきて、販売高が漸次減少に向かう後半となっている。
「底打ち漸増&新年回復期待の半導体市場、AI半導体が急伸牽引:2023年」
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この3月までは新型コロナウイルスによる世界の累計感染者数を追っていたが、米国、中国はじめ年初に非常警戒措置解除方針が打ち出され、我が国でも「5類」への引き下げが5月8日に政府決定されて、用心しながらも3年あまりぶりコロナ前に戻ってきている現時点である。世界半導体販売高は、2022年後半からの低落が、2月に底を打って以降小幅に戻してきており、年間販売高は9.4%減と見込まれ、新年早期の本格回復が待たれている。米国の対中国半導体輸出規制を巡る動きは、米国側が中国との度重なる接触を図る中で引き続く一方、世界各国・地域それぞれに経済安全保障確立に向けた半導体の製造強化が一層活発化しているこの1年である。AI半導体が、Chat GPTが引っ張って、本年半ば以降販売高が急増、半導体市場の本格回復を支える柱と期待されている。このような2023年の半導体業界を振り返っていく。
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)からの月次世界半導体販売高データ関連が、以下の通りである。締めてみると年間最高を更新した2022年の世界半導体販売高であるが、2023年に入って早々2月には2022年後半以降の低落が底を打って、その後今に至るまで小幅な増加が続いている。
パソコン、スマホ市場がやっと上昇に向かう気配が見られており、AI半導体の急伸があって、2024年での早期本格回復の期待が強まる現時点である。
「AIが牽引、地政学インパクトの渦中で販売高最高の半導体市場:2024年」
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2024年も残りわずか、半導体関連の動きを振り返ってみる。AI関連需要が大きく引っ張っていく一方、引き続く米中摩擦はじめ地政学インパクトの渦中に置かれた2024年の半導体市場の様相である。世界半導体販売高で見ると、出だし低迷気味であったが、特に半ば以降増勢に転じて、月次最高を更新、年間販売高がこれまで最高の2022年を上回るのは確実な情勢である。半導体業界の景観も、AIをリードするNvidiaはじめ、TSMCおよびSK Hynixなどの好調さの一方、長年の業界の盟主、インテルの厳しい状況と大きな変容が見られている。新しい半導体市場圏としてインドおよび東南アジアの国々の取り組みが始まって、今後の進展に注目するところである。
以上のような見方であるが、本年、2025年はどうなるか。AIが引っ張る中での半導体投資の1つの見方である。
◇世界半導体投資3年ぶり増の計19兆円 AIけん引、25年度主要10社―【イブニングスクープ】 (8月4日付け 日経 電子版 18:00)
→世界の半導体投資をAI向けがけん引している。主要10社の2025年度の設備投資は$135 billion(約19兆9200億円)と、前年度から7%増える見通し。各国・地域が半導体産業の支援や誘致に動き、22年度以来、3年ぶりのプラスとなる。企業別では生成AI向けの製品や顧客を多く持っているかが明暗を分けた。
次に、先行きの不安定要因として、関税および摩擦関連の動きを取り出している。
まずは、トランプ大統領の一挙一動にかかる関税関連について、主に半導体の視点から以下の通りである。
◇Chip tariff would pose major challenge (8月4日付け Taipei Times)
→1)交渉:半導体は台湾の産業・経済発展において極めて重要な役割を果たしており、米台間の貿易不均衡の大きな要因となっている。
2)ドナルド・トランプ米大統領による半導体への関税導入の脅威は、ICT製品が対米輸出の70%以上を占める台湾に深刻な影響を与える可能性がある。この動きは、台湾の堅調な貿易黒字とTSMCの投資計画に支障をきたす恐れがある。
3)ドナルド・トランプ米大統領による半導体への関税導入の脅威は、ICT製品が対米輸出の70%以上を占める台湾に影響を及ぼす可能性がある。台湾経済は半導体に大きく依存しており、潜在的な関税導入は貿易黒字と将来の投資を脅かす可能性がある。
◇Trump says he’ll announce semiconductor and chip tariffs (8月5日付け TechCrunch)
→トランプ大統領は半導体への関税導入計画を発表し、米国のハードウェアおよびAIセクターに混乱をもたらす可能性がある。半導体製造は進展しているものの遅延が続く中、米国は以前の規則を撤回した後、AIチップの輸出制限を決定した。
アップルのTim Cook CEOも同席しての半導体関税の発表であるが、細かくは随時確認を要するところである。
◇Trump says he will impose 100 percent tariff on semiconductors―Semiconductor imports face 100% tariff (8月6日付け The Hill)
→ドナルド・トランプ大統領は、全ての半導体輸入に100%の関税を課す計画だが、米国で製造する企業は免除されると述べた。アップルのTim Cook CEOも同席し、「米国で製造している、あるいは米国で製造することを約束している企業には関税はかからない」とトランプ大統領。
◇Trump says he will put 100 percent tariff on semiconductors―Trump sets 100% tariff on foreign semiconductors―The president made the announcement at a White House event with Apple CEO Tim Cook. (8月6日付け Politico)
→ドナルド・トランプ大統領は、国内生産を促進するため、輸入半導体に100%の関税を課すと発表した。ただし、米国で半導体を製造する企業は例外となる。これは、Appleのティム・クックCEOがiPhone向け半導体への関税を回避するために$100 billionを投資すると表明したことを受けた措置だ。TSMCは、Appleを主要顧客としてアリゾナ州の工場で既に生産を開始しており、サムスン電子はテキサス州の工場の完成を間近に控えている。米国は昨年、主にアジアとEUから$60 billion以上の半導体を輸入した。
◇Apple and Trump detail $100 billion U.S. spending expansion, including $2.5 billion for an iPhone glass factory (8月6日付け CNBC)
→1)*アップルは水曜6日、今後4年間で米国企業とサプライヤーに$100 billionを追加投資すると発表した。
*同社は、ケンタッキー州でiPhoneのガラスを製造しているコーニングとの大規模な拡張に$2.5 billionを投資すると発表した。
*同社は、この投資により、海外企業が米国製部品をより多く購入するインセンティブが生まれると述べている。これは、アップルが2月に発表した$500 billionの投資計画に続くものだ。
2)アップルのティム・クックCEOとトランプ大統領は、今後4年間で米国企業に$100 billionを投資すると発表した。この計画には、半導体製造、ガラス製造、および先端技術に重点を置き、米国製部品と工場の拡張が含まれる。
◇半導体関税「100%に」トランプ氏が表明 米国に工場なら優遇か (8月7日付け 日経 電子版 09:00)
→トランプ米大統領は6日、近く公表する見込みの半導体関税について「米国に輸入されるすべての半導体におよそ100%の関税をかける」と述べた。米国内に工場をつくると約束した企業には負担軽減措置を設ける考えも示唆した。
ホワイトハウスの記者会見で明らかにした。アップルのティム・クックCEOも同席した。
◇New Levies on India add Stress to Apple Tightrope (8月7日付け EE Times)
→*AppleのCEO、ティム・クック氏はトランプ大統領をなだめ、半導体への追加関税を回避するために$100 billionの米国追加投資を発表した。
*Appleは、綿密に構築されたサプライチェーンが再び米国の積極的な関税政策の標的となり、インドへの新たな高額関税が戦略的多角化の取り組みを覆す恐れに直面している。Appleが前進していくには、根強い不安定さを乗り越えるために、抜本的な柔軟性、地域エコシステムへの積極的な投資、そして洗練された政治的関与が求められる。
◇Trump vows 100% tariff on chips, unless companies are building in the U.S. (8月7日付け CNBC)
→1)*ドナルド・トランプ大統領は、半導体およびチップの輸入に100%の関税を課すと述べたが、「米国内で製造している」企業は対象外とした。
*関税免除の対象となるために企業が米国でどの程度の製造を行う必要があるかなど、計画の詳細は現時点では明らかにされていない。
*この発言は、トランプ大統領がアップルが今後4年間で米国にさらに$100 billionを投資するというコミットメントを誇示した後に行われた。
2)ドナルド・トランプ大統領は、米国内で製造している企業を除き、輸入半導体およびチップに100%の関税を課すと発表した。この措置は企業に生産の現地化を迫るものだが、具体的な適用基準は依然として不透明である。
◇Apple、米国に追加投資15兆円 iPhone関税回避に市場期待 (8月7日付け 日経 電子版 08:13)
→米アップルは6日、部品の米国生産などに$100 billion(約14兆7300億円)を追加投資すると発表した。トランプ米政権が掲げる製造業の米国回帰に足並みをそろえた。6日の株式市場ではスマートフォン「iPhone」への追加関税が回避できるとの期待が膨らみ、株価が一時、前日終値より6%ほど上昇した。
◇Apple、関税回避へトランプ氏と「交渉」 15兆円追加投資を表明 (8月7日付け 日経 電子版 17:15)
→第2次トランプ米政権の発足後、米アップルが2度目の米国投資を発表した。部品生産などに追加で$100 billion(約14兆7000億円)を投じる。その見返りとして半導体関税を回避できる可能性が高まった。トランプ大統領のディール(取引)の対象は、国家だけでなく巨大テック企業にも広がり始めた。
TSMC・アリゾナなどにも注目である。
◇TSMC ‘spending US$300bn’ in Arizona: Trump (8月7日付け Taipei Times)
→トランプ大統領は、TSMCがアリゾナ州に$300 billionを投資する可能性があると発表した。これは、同社のこれまでの米国への投資額のほぼ倍増となる。トランプ大統領はまた、半導体への関税導入を示唆し、台湾への潜在的な経済的影響に対する懸念を高めている。
◇What the world’s biggest chipmakers are doing to stave off Trump’s tariffs (8月7日付け CNBC)
→1)*ドナルド・トランプ米大統領は、米国への半導体輸入に100%の関税を課すことを提案した。
*しかし、トランプ氏は、企業が「米国内で製造しているか、あるいは疑問の余地なく製造を約束している」場合、「関税は課されない」と述べた。
*TSMCからNVIDIAに至るまで、大手半導体企業は米国への数十億ドル規模の投資を約束しており、投資家はこれが新たな関税による最悪の影響を緩和するのに役立つと考えている。
2)トランプ大統領が提案した半導体輸入への100%関税は、大手半導体企業を厳しい目線にさらしている。米国に多額の投資を行っているTSMC、サムスン、およびグローバルファウンドリーズといった企業の株価は上昇した。投資家はこれらの企業が関税による最悪の影響を回避できると期待しているからだ。
その他の関連である。先行きの不透明性もあらわされている。
◇China’s top chipmakers to see small impact from Trump’s 100% tariff on imports: CLSA (8月8日付け South China Morning Post)
→1)税関データによると、2025年上半期の中国から米国への半導体輸出額は$983.7 millionに達し、前年比11%減少した。
2)中国の大手半導体メーカーであるSMICとHua Hong(華虹)は、潜在的な対抗措置によって恩恵を受け、米国の半導体関税による深刻な影響は回避される可能性が高い。CLSAの報告書は、米国へのIC輸出が減少しているにもかかわらず、関税の影響は最小限にとどまると示唆している。
◇100% tariff likely to shift more Taiwanese chipmaking to US: Expert (8月8日付け Taipei Times)
→トランプ大統領が提案した半導体輸入への100%関税は、台湾を拠点とする半導体生産を海外に移転させ、米国の施設への世界的な投資を促す一方で、サプライチェーンのコストを上昇させ、電子機器の価格を上昇させ、市場の需要の不確実性を生み出す可能性があると専門家は警告している。
◇Impact of US’ chip tariffs still unclear: official (8月8日付け Taipei Times)
→Yen Huai-shing通商代表部副代表は、米国が提案した半導体への100%関税については、調査が継続中のため、まだ完全に評価することはできないと述べた。台湾の半導体を含むICT輸出への潜在的な影響は依然として不透明である。
次に、摩擦の関連であるが、AI半導体のセキュリティリスクについての米中の応酬はじめ、以下の通りである。
◇Nvidia denies back-door features in its H20 chips after Beijing raises security concerns (8月1日付け South China Morning Post)
→1)AI分野における米中技術競争の激化を受け、NVIDIAはワシントンと北京の双方の満足を得るのに苦労している。
2)中国のサイバースペース規制当局が潜在的なセキュリティリスクを懸念したことを受け、NVIDIAはH20チップに「バックドア」が存在するとの疑惑を否定した。しかしながら、NVIDIAは技術面での信頼をめぐるワシントンと北京の緊張の高まりに直面しており、中国での事業に影響が出ている。
◇エヌビディア製 米が位置追跡案 用途や使用先監視、中国は懸念 (8月2日付け 日経)
→米エヌビディアのAI半導体を巡って、米中の応酬が再び激しさを増してきた。米国が迂回輸出を防ぐために、中国向けのAIチップには位置情報を追跡できる機能を盛り込もうとしているためだ。米中は貿易協議でエヌビディア製半導体の対中出荷を再開する方向で事実上合意したばかりだが、新たな火種が生じたことで交渉が難航する可能性が出てきた。
◇Nvidia rejects China’s H20 GPU security concerns amid renewed US export controls―Nvidia rejects claims of hidden tracking in H20 GPU (8月3日付け Notebookcheck (Austria)/Reuters)
→NVIDIAは、中国のサイバースペース規制当局が同社のH20 AI GPUに隠された追跡機能やバックドアが含まれていると非難していることを断固として否定した。同社はサイバーセキュリティを最優先事項と強調し、同社の製品はリモートアクセスやリモート制御を許可していないと述べた。
◇China’s Nvidia Probe Warns U.S. Not to Track Chips (8月4日付け EE Times)
→1)数週間前にドナルド・トランプ米大統領が中国への輸出を許可したエヌビディアH20 GPUに対する中国の調査は、中国のAI発展に不可欠な米国製チップに追跡ハードウェアを義務付けないよう米国議会に警告するものだと、ワシントンD.C.のAlbright Stonebridge Groupのパートナー、Paul Triolo氏がEE Timesに語った。
2)トランプ大統領が最近輸出を承認したNVIDIAのH20 GPUsに対する中国の調査は、米国のテクノロジー政策、特に提案中のチップセキュリティ法案への反対を示唆している。これは、両国がAI開発と自立を競う中で、テクノロジー戦争における緊張を浮き彫りにしている。
◇Nvidia’s set to regain some China access. But it still faces eroding AI chip market share (8月4日付け CNBC)
→1)*エヌビディアはH20チップの中国市場への販売再開を確約されているにもかかわらず、Bernsteinは、同社の中国市場シェアが前年の66%から2025年には54%に低下すると予測している。
*H20チップが4月に市場から締め出されて以来、中国のライバル企業は進出を続け、顧客を獲得し続けている。
*国家安全保障上の懸念を理由にエヌビディアを召喚した北京当局の最近の動きも、同社にとってさらなる逆風となる兆候の可能性がある。
2)エヌビディアのH20チップは、輸出規制の緩和に伴い中国に戻ってくる可能性があるが、アナリストはファーウェイなどの中国チップメーカーとの競争激化により市場シェアが低下すると予測している。新たな機会があるにもかかわらず、米国の技術規制と中国の監視が成長を制限する可能性がある。
◇Nvidia H20 GPUs reportedly caught up in U.S. Commerce Department's worst export license backlog in 30 years - billions of dollars worth of GPUs and other products in limbo due to staffing cuts, communication issues―US export license delays stall Nvidia's H20 GPU to China―Officials claim this is the worst commerce backlog in over 30 years. (8月4日付け Tom's Hardware)
→1)NVIDIAが中国企業にH20 GPUsを販売しようとする試みに対する新たな痛手として、米国商務省が出荷開始前に必要な主要な輸出ライセンスの承認を遅らせていると非難されている。ロイター通信が取材した当局者によると、これは過去30年以上で最悪のライセンス申請の滞納であり、数十億ドル相当のGPUsやその他の製品が宙に浮いた状態となっている。
2)米国商務省による輸出許可の承認の遅れにより、NVIDIAはH20 GPUsを中国企業に販売する取り組みが阻害されている。過去30年間で最悪の受注残により、数十億ドル相当のNVIDIA製品が宙に浮いた状態となり、海外の輸出先に届けられずにいる。
◇[News] NVIDIA Reportedly Plans RTX 50 Series Price Cut in China This Month amid Weak Sales (8月4日付け TrendForce)
→NVIDIAは、需要の低迷と過剰在庫のため、中国におけるRTX 50シリーズの価格を引き下げる可能性がある。同時に、低スペックのRTX 5090DDの発売も準備している。一方、中国当局はNVIDIAのH20チップに潜在的なセキュリティ上の懸念があるとして、同社を召喚した。
◇Nvidia says its AI chips don’t have a ‘kill switch’ after Chinese accusation (8月5日付け CNBC)
→1)*NVIDIAは、同社のAI向けデータセンターGPUsに、チップを遠隔操作で無効化できるハードウェア機能(通称「キルスイッチ」)が搭載されているという中国の非難を否定した。
*NVIDIAの最高セキュリティ責任者(CSO)は、「NVIDIAのGPUにはキルスイッチやバックドアは搭載されておらず、搭載されるべきでもない」と述べている。
*このブログ記事は、中国サイバースペース管理局が先週、NVIDIAに対し、いわゆるセキュリティ上の脆弱性に関する資料の提出を求めたのを受けて掲載された。
2)NVIDIAは、同社のデータセンターGPUsに「キルスイッチ」またはバックドアが搭載されているという中国の非難を否定し、そのような機能はサイバーセキュリティの原則に違反すると強調した。これは、AIチップ輸出をめぐる地政学的緊張と国家安全保障上の懸念が高まっている中での発表である。
◇China fears Nvidia chips could track, trace and shut down its AIs (8月5日付け Asia Times)
→1)中国は、NVIDIAのH20 AIチップにバックドアが存在するとの懸念を表明した。これは、米国が過去にHuaweiの5G技術に疑念を抱いたことと同義である。
2)中国政府は、H20 AIチップに遠隔操作を可能にするバックドアが含まれている可能性があるとの懸念を受け、NVIDIAを召喚し、その潜在的なセキュリティリスクについて説明を求めた。NVIDIAはこの主張を否定しているが、専門家は、中国企業によって悪用された場合、こうしたチップがリスクをもたらす可能性があると警告している。
AI半導体の違法輸出の摘発など、関連する内容が相次いでいる。
◇U.S. charges two Chinese nationals for illegally shipping Nvidia AI chips to China (8月5日付け CNBC)
→1)*米司法省によると、被告らは2022年10月から2025年7月にかけて、数百万ドル相当の先端チップおよびその他の技術を中国に違法に輸出した。
*違法輸出品には、NVIDIAの高性能汎用プロセッサ「H100」が含まれていた。これは、同社のAI用途向け最先端チップである。
2)中国国籍のChuan Geng容疑者とShiwei Yang容疑者(いずれもカリフォルニア州在住)は、数千万ドル相当のNVIDIA製AIチップを中国へ違法に輸出したとして逮捕された。米国の輸出規制を回避し、マレーシアを中継地点として利用していた。重罪で起訴される見込みだ。
◇‘No kill switches and back doors’: Nvidia reasserts security of its AI chips in blog post (8月6日付け South China Morning Post)
→1)チップに脆弱性を埋め込むことは「世界のデジタルインフラを損ない、米国の技術に対する信頼を損なう」とNVIDIAは述べている。
2)NVIDIAはブログ記事で、バックドアやスパイウェアの疑惑を否定し、AIチップのセキュリティについてユーザーに安心感を与えた。同社は信頼とセキュリティの重要性を強調し、中国の規制に関する懸念とAIチップ販売をめぐる米国の圧力の両方に対処した。
いろいろな動きが錯綜している現時点であり、当面随時更新の注目である。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□8月2日(土)
トランプ大統領の関税関連への動きが、ここでも以下続いていく。
◇米関税、打撃緩和へ自衛策 ドイツ、対米投資を絞り込み/ベトナム、中国との関係を強化 (日経)
→トランプ米大統領が各国・地域に課す相互関税の新税率を固めた。自国に製造業を呼び戻そうとするが、貿易相手は対米投資の絞り込みや中国との関係強化によって関税が生み出す摩擦に対抗しようと探る。トランプ関税が雇用や財政に及ぼす打撃を和らげる自衛策も今後の焦点となる。
□8月5日(火)
関税懸念の一方、利下げ期待があって、上げ下げ交互した今週の米国株式市場である。
◇NYダウ急反発585ドル高、好業績が防波堤に 8割が市場予想超え (日経 電子版 06:10)
→4日の米株式市場でダウ工業株30種平均は6営業日ぶりに反発し、前週末比585ドル高の4万4173ドルで引けた。市場予想を下回った7月の雇用統計を受けてダウ平均は前週末に500ドル超下げたが、企業が相次いで好業績を残していることが防波堤となり、下げを取り戻した。
□8月6日(水)
米国の貿易の実態も、見極めを要するところである。
◇米貿易赤字、台湾・ベトナムが中国超え トランプ政権は「迂回」警戒 (日経 電子版 06:13)
→米国の貿易赤字の構造が大きく変化している。米商務省が5日発表した貿易統計によると、6月は対中国の貿易赤字がおよそ21年ぶりの低水準となった。一方で、ベトナムや台湾に対する赤字額は過去最大となり、それぞれ中国を上回った。トランプ米政権は「迂回輸出」の増加を警戒している。
◇NYダウ、反落し61ドル安 米関税措置への懸念で主力株に売り (日経 電子版 06:17)
→5日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比61ドル90セント(0.14%)安の4万4111ドル74セントで終えた。米政権による関税政策が景気を冷やすとの懸念が根強く、ハイテクを中心に主力株に売りが出た。半面、米連邦準備理事会(FRB)が近く利下げに動くとの観測は米株相場を下支えした。
トランプ米大統領は5日の米CNBCの番組で、輸入する半導体に対し早ければ来週中にも分野別の関税措置を発表すると述べた。
◇相互関税の特別措置、米官報でも対象はEUのみ 「日米合意」と食い違い (日経 電子版 09:50)
→トランプ米政権は5日、相互関税の新税率に関する大統領令を連邦官報で公表した。新たに設ける予定の「税負担軽減措置」について、対象はEUに限られると明記した。日本政府は「日本も対象になることで米側と合意した」としており、米国側に事実関係を確認する方針だ。
□8月7日(木)
トランプ米大統領による新たな相互関税制度が、7日に発効している。
◇Staggering U.S. Tariffs Begin as Trump Widens Trade War―The duties, which the president announced last week, took effect for about 90 countries just after midnight.―New US tariffs take effect, upending trade ties (The New York Times)
→ドナルド・トランプ米大統領による新たな相互関税制度が8月7日に発効し、米国の輸入関税が大幅に引き上げられたことで、スイス、台湾、およびEUといった長年の貿易パートナーとの関係が緊張している。この関税導入は、米国の貿易政策における歴史的な転換点となり、数十年にわたる交渉による自由化政策を、各国への徹底的な報復措置へと転換させるものだ。
◇米関税発動、25年世界経済は同時減速へ トランプ氏「強気」がリスク (日経 電子版 05:44)
→米政府が大規模な相互関税を7日発動し、世界経済には一段と下押しの圧力がかかる。米国は当面1%成長に沈み、日本や中国も減速に向かう見通しだ。4月以降に高まっていた景気後退への過度な悲観は和らいだが、それがトランプ米大統領の強気を支え、新たな高関税を招く皮肉な構図が続く。
◇NYダウ反発81ドル高 Apple5%高、消費関連銘柄も上昇 (日経 電子版 05:48)
→6日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比81ドル38セント高の4万4193ドル12セント(速報値)で終えた。米国内での生産を拡大するために$100 billionの追加投資を決めたと伝わったアップルが大幅に上昇し、ダウ平均や主要株価指数を支えた。
◇25年度実質成長率0.7%に下方修正 米関税はGDP0.3〜0.4%下押し (日経 電子版 18:29)
→内閣府は7日、2025年度の国内総生産(GDP)の実質成長率が0.7%になるとの見通しを公表した。米国が発表した一連の関税政策の影響を加味し、1月の前回見通しの1.2%から下方修正した。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は26年度に黒字になると試算した。
□8月8日(金)
◇NYダウ反落、224ドル安 労働市場とインフレの悪化懸念 (日経 電子版 06:21)
→7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比224ドル48セント(0.50%)安の4万3968ドル64セントで終えた。米経済を巡る先行き不透明感が根強く、景気敏感や消費関連株を中心に売りが優勢になった。
ソフトウエア関連株が下げたことも、指数の重荷となった。
□8月9日(土)
我が国の関税負担の確認、とことん突き詰めを要している。
◇米相互関税の負担軽減措置「日本も対象」 ホワイトハウスが修正認める (日経 電子版 05:58)
→米相互関税の負担軽減措置を巡り、米ホワイトハウスは8日、日本も対象とするよう米大統領令を修正することで両国が合意したと明らかにした。
7日に日本政府が説明した内容を米政府側も認めた。
ホワイトハウス当局者が日本経済新聞の取材に対し「日本にもEUと同じ措置を適用する」ように米国が修正することで両国が合意したと説明した。
◇NYダウ、反発し206ドル高 ウクライナ停戦協議への期待が支え (日経 電子版 06:27)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前日比206ドル97セント(0.47%)高の4万4175ドル61セントで終えた。FRBが次回9月の会合で利下げをするとの見方が広がり、買いが優勢だった。
ウクライナの停戦を巡る協議が進展するとの期待も相場を支えた。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
いつもの関連する動き止まりであったところに、トランプ大統領のインテルCEO辞任要求の動きが入ってきて、以下の取り出し&あらわし方となっている。
◇Intel used to be the most valuable U.S. chipmaker. How it fell far behind Nvidia (8月1日付け Los Angeles Times)
→1)*かつて米国で最も時価総額の高い半導体メーカーだったインテルは、NVIDIAなどのライバルとのAI競争が激化する中、57年の歴史の中で重要な局面を迎えている。
*インテルの新CEOは、会社の立て直しに取り組んでいる。アナリストによると、機会損失、製造の遅延、そして経営の失策が、長年にわたりインテルの成長を鈍化させてきたという。
2)インテルの新CEO、Lip-Bu Tan氏は、同社がイノベーションで遅れをとり、損失と市場シェアの低下につながったことを認めた。しかし、インテルは急速に進化するテクノロジー業界において、再び存在感を取り戻そうと、組織再編およびAIとコスト削減に注力している。
◇Intel has just 18 months to 'land a hero customer on 14A' or its cutting-edge fabs are toast, says chip industry analyst (8月1日付け MSN)
→インテルは14Aチップノードの主要顧客を確保するために18ヶ月の猶予を残しており、さもなければ最先端製造計画が頓挫する可能性がある。先端チップ製造における同社の将来は不透明であり、失敗すればプロセッサとグラフィックスの両分野での競争が制限される可能性がある。
◇Intel prepares for Nova Lake CPUs with new Linux support - retiring 20-year-old 'Family 6' designation in favor of 'Family 18'―Intel transitions to Family 18 with Nova Lake CPUs ―Nova Lake seems to be on track. (8月3日付け Tom's Hardware)
→インテルは20年以上ぶりに、長年採用されてきたCPU分類システムを刷新し、新たな分類システムを導入する。次世代プロセッサ「Nova Lake」は、1990年代後半からx86プロセッサを特徴づけてきた「ファミリー6」時代の終焉を告げるものである。この変更は、インテルが現在Nova Lake向けに行っているLinux対応の一環として明らかになった。
◇The Bright Side of Intel Exodus: Chip Startups―Intel exodus drives talent to competitors, fuels startups (8月4日付け EE Times)
→1)*インテルの大規模レイオフの裏側には、新たな設計領域を開拓することを目指すスタートアップ企業の設立がある。
*インテルのレイオフは依然として波紋を広げているものの、優秀なエンジニアやエンジニアリング・マネージャーの動向はほとんど明らかになっていない。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、インテルのチップパッケージング専門家がファウンドリー事業における最大のライバルであるサムスンに入社したという報道をきっかけに、新たな情報が浮上し始めている。
インテルで17年間勤務し、約500件の特許を保有するGang Duan氏が、サムスン・エレクトロ・メカニクス・アメリカのエグゼクティブ・バイスプレジデントに就任する。同氏の特許ポートフォリオには、マイクロバンプ・インターコネクトや再配線層(RDL)技術が含まれる。同氏は、組み込みマルチダイ・インターコネクト・ブリッジ(EMIB)やガラス基板といった先進的なパッケージング技術への貢献が認められ、インテルの2024年度「インベンター・オブ・ザ・イヤー」に選出された。
2)インテルは$10 billion規模のコスト削減策の一環として最近レイオフを実施し、経験豊富なエンジニアやマネージャーがサムスンなどの競合他社や、Infinipack、FlexAI、AheadComputingおよびMihira AIといったスタートアップ企業へと流れていった。インテルはこれに対し、カスタムチップ設計部門とAIチップエンジニアリング部門を強化するため、上級幹部を採用した。
3)インテルの継続的な人員削減は、特許保有者のガン・ドゥアン氏をはじめとする優秀なエンジニアがサムスンなどのライバル企業やスタートアップ企業へと移籍するなど、半導体業界に揺さぶりをかけている。インテルのコスト削減と研究開発費の縮小と相まって、この人員流出はAIやチップ設計分野の新たなベンチャー企業の台頭を促している。
◇[News] Intel’s Chip Packaging Expert Jumps to Samsung Amid Reported Glass Substrate Retreat (8月4日付け TrendForce)
→インテルは、Lip-Bu Tan CEOの方針転換に伴い、経営陣の大幅な交代を行った。チップパッケージングの専門家であるGang Duan氏がサムスンに入社したことで、インテルのガラス基板戦略への懸念が高まっている。同時に、組織再編の一環として、製造部門の上級幹部3名が退職した。
◇Legendary GPU architect Raja Koduri's new startup leverages RISC-V and targets CUDA workloads - Oxmiq Labs supports running Python-based CUDA applications unmodified on non-Nvidia hardware―Another startup developing GPUs that are not meant for graphics emerges from stealth mode. (8月5日付け Tom's Hardware)
→ATI Technologies、AMD、Apple、およびIntelでGPUアーキテクトとして活躍した伝説的なRaja Koduri氏は火曜5日、新たなGPUスタートアップ企業を設立し、本日ステルス状態から脱却したと発表した。Oxmiq Labsは、GPUハードウェアおよびソフトウェアのIP開発と、それらに関心を持つ企業へのライセンス供与に注力している。実際、サードパーティ製ハードウェアとの互換性を考慮して設計されているため、ソフトウェアこそがOxmiqの事業の中核を担うと言えるであろう。
◇Exclusive: Intel struggles with key manufacturing process for next PC chip, sources say (8月5日付け Reuters)
→TSMCとの競争とファウンドリ事業の拡大を目的として設計されたIntelの18A製造プロセスは、Panther Lakeチップの初期テストで歩留まりが期待外れに終わったことから、品質上の課題に直面している。これは、Intelの収益性と先端チップ製造における将来に影響を及ぼす可能性がある。
◇Exclusive-Intel struggles with key manufacturing process for next PC chip, sources say―Intel's 18A process faces setbacks as yield rates remain low (8月5日付け Yahoo/Reuters)
→インテルは、Panther LakeノートPC向け半導体の製造に不可欠な18A製造プロセスで課題に直面している。多額の投資と2025年の量産開始計画にもかかわらず、品質基準を満たすチップはごくわずかで、収益性への懸念が生じている。インテルの最高財務責任者(CFO)であるDavid Zinsner氏は、生産増強が初期段階にあることを認めつつも、歩留まりの向上については楽観的な見方を維持している。
◇Intel credit rating downgraded―Fitch downgrades Intel amid challenges (8月5日付け Electronics Weekly (UK))
→Fitch Ratingsはインテルのデフォルト格付けをBBB+からジャンク債格付けより2段階上のBBBに引き下げた。
◇Intel shares drop as Trump calls for CEO Tan's resignation amid controversy (8月7日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→インテル株は木曜7日の市場が開くと約3%下落して取引された。
◇Intel will retire rarely-used 16x MSAA support on Xe3 GPUs - AI upscalers like XeSS, FSR, and DLSS provide better, more efficient results―Intel to phase out 16x MSAA in favor of AI upscaling―AI methods are taking over. (8月7日付け Tom's Hardware)
→インテルのエンジニア、Kenneth Graunke氏によると、インテルはXe3グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPUs)における16倍マルチサンプル・anti-aliasing(アンチエイリアシング)のサポートを段階的に廃止し、Xeスーパーサンプリング、FidelityFXスーパー解像度およびディープラーニング(DL)・スーパーサンプリングといったより効率的なAIアップスケーリング技術を採用する。「ほとんどのベンダーは16倍マルチサンプル・アンチエイリアシングをサポートしないことを選択しており、多くのアプリはより現代的なマルチサンプリングとアップスケーリング技術を提供している。今後は2倍/4倍/8倍のみのサポートとなる」とグラウンケ氏は述べている。
◇Intel shares drop after Trump calls for CEO to resign immediately (8月7日付け CNBC)
→1)*トランプ氏はTruth Socialへの投稿で、インテルのリップ・ブー・タンCEOは「極めて葛藤を抱えており、直ちに辞任しなければならない。この問題には他に解決策はない」と述べた。
*アーカンソー州選出の共和党上院議員、Tom Cotton氏は今週、書簡の中でタン氏と中国企業との関係を疑問視し、ケイデンス・デザインをめぐる過去の刑事事件に言及した。
*タン氏は3月、パット・ゲルシンガー氏の指揮下での売上高減少からの回復を目指すインテルのCEOに任命された。
2)トランプ前大統領が利益相反の疑いでリップ・ブー・タンCEOの辞任を促したことを受け、インテルの株価は下落した。これは、トム・コットン上院議員がタン氏の中国ビジネスとのつながりについて国家安全保障上の懸念を表明したことと重なる。インテルはタン氏のリーダーシップと米国における製造業への投資を擁護した。
◇インテル、「親中国CEO」が経営リスクに トランプ氏が辞任要求 (8月8日付け 日経 電子版 05:36)
→トランプ米大統領は7日、米インテルのリップブー・タンCEOに辞任を要求した。米議員がタン氏の過去の中国企業への投資に懸念を表明した直後だ。経営再建の担い手として新CEOに招いたばかりのタン氏だが、「親中国」との批判からむしろ経営リスクになりかねない情勢だ。
◇Chip Industry Week in Review (8月8日付け Semiconductor Engineering)
→"Intel CEO responds to Trump’s resignation demand"について:
...トランプ大統領は、前例のない衝撃的な発表で、インテルのリップブー・タンCEOの辞任を要求し、多数の中国企業との関係が報じられていることから「大きな利益相反がある」と主張した。タン氏はマレーシア生まれシンガポール育ちの帰化米国市民で、2009年から2021年までCEOを務めていた際にケイデンスの立て直しを成功させたと評価されている。そのことに加え、彼の深い国際的関係とテクノロジーリーダーシップが、彼がインテルのCEOに選ばれた主な理由だった。タン氏はトランプ大統領に対し、「我々は政権と協力して提起された問題に対処し、事実関係を把握していることを確認しています。私は大統領の米国の国家および経済安全保障を推進するという公約に完全に賛同しており、これらの優先事項を推進するリーダーシップに感謝しており、これらの目標の中心となる企業を率いることを誇りに思います」と答えた。
◇Intel CEO responds after Trump calls for resignation―Intel CEO rebuffs Trump call for resignation over China ties (8月8日付け Yahoo)
→インテルのLip-Bu TanCEOは木曜7日夜、トランプ大統領による辞任要請に対し、自身の経歴に関する報道は「誤報」だと反論した。従業員への書簡の中で、同社はトランプ政権と協議していると述べた。
「私の過去の役職について多くの誤情報が流布しています…はっきりさせておきたいのは、この業界で40年以上働き、世界中、そして多様なエコシステム全体と関係を築いてきたということです。そして、常に最高の法的・倫理的基準に従って業務を遂行してきました」とタンCEOは記した。
◇インテルCEO「過去の役割で誤情報」 トランプ氏の辞任要求で声明 (8月9日付け 日経 電子版 05:53)
→米インテルのリップブー・タンCEOは8日、中国との結びつきに関する自身への批判を巡り「過去の役割について誤った情報が流れている」と声明を出した。トランプ米大統領が前日にタン氏に辞任を要求したのを受け、自身の行動に問題がなかったという見解を示した。
タン氏が8日に公表した従業員向けの書簡で説明した。
【TSMC関連】
比較的目立った動きがないと思っていたところに、企業秘密漏洩の1件があって、以下の通りである。
◇TSMC Is Reportedly Ready to Shift 2nm Technology to the US, as It Prepares New Production Lines in Arizona, Despite Prior Resentment from the Taiwan Government (8月2日付け wccftech)
→TSMCは、2026年までにアリゾナ工場で最先端の2nmチップを生産する予定で、米国のチップ生産体制を強化していく。現政権の自立重視の姿勢を背景に、TSMCはNVIDIAやAppleといった大手テクノロジー企業の支援を受け、米国市場を独占することを目指している。
◇World’s largest chipmaker TSMC says it has discovered potential trade secret leaks (8月5日付け CNBC)
→1)*TSMCは、企業秘密の漏洩につながる「不正行為」を検知したと発表した。
*TSMCは、関係者に対し措置を講じ、法的措置を開始したと発表した。
*世界最大の半導体メーカーであるTSMCは、最先端チップの製造市場を独占し、AppleやNVIDIAといった大手企業を顧客に抱えている。
2)TSMCは、企業秘密の漏洩を示唆する不正行為を発見し、独自の2ナノメートルチップ技術を盗んだ疑いのある元従業員に対し法的措置を開始した。同社は厳正な懲戒処分を実施し、調査を継続している。
◇TSMC機密取得で元従業員拘束、台湾当局が東エレク捜索 現地報道 (8月5日付け 日経 電子版 22:25)
→台湾当局は、半導体受託生産の世界最大手、TSMCの技術に関する機密情報を不正に取得したとして国家安全法違反容疑で同社の元従業員ら3人を拘束した。台湾高等検察署知的財産検察分署が5日発表した。
台湾紙、聯合報(電子版)によると、不正取得されたのは回路線幅2ナノメートル相当の最先端半導体に関する技術。TSMCと取引のある日本の半導体製造装置大手、東京エレクトロンの台湾にある事務所が関係先として家宅捜索を受けたという。
◇TSMC、機密情報の不正取得疑いで従業員解雇 先端半導体関連 (8月5日付け 日経 電子版 16:51)
→半導体世界大手のTSMCが、先端半導体技術に関連する機密情報を不正に取得した疑いで複数の従業員を解雇したことがNikkei Asiaの取材で分かった。関係者によると、回路線幅2ナノメートルの半導体開発・製造に関する重要情報を取得しようとした疑いがある。
◇Three former employees of TSMC detained (8月6日付け Taipei Times)
→TSMCの元従業員3人が、機密扱いの2ナノメートルチップ技術を漏洩した疑いで拘束された。検察は、この窃盗に外国の組織が関与していたかどうかを捜査している。この事件は、台湾が技術漏洩に対処するために国家安全保障法を適用した初めての事例となる。
◇台湾、半導体など経済スパイの抑止に力 TSMC機密取得疑いで捜査 (8月6日付け 日経 電子版 17:08)
→台湾の検察当局がTSMCの機密情報を不正に取得した疑いがあるとして同社の元従業員らを拘束した。台湾は近年、半導体など先端技術を狙った経済スパイの抑止策を強化しており、捜査の進捗が注目される。
台湾の高等検察署知的財産検察分署は元従業員ら3人を拘束したと5日に発表した。
◇東京エレクトロン「元従業員の関与確認」 TSMC機密取得疑いの捜査で (8月7日付け 日経 電子版 12:26)
→東京エレクトロンは7日、TSMCの機密情報を不正取得した疑いで台湾当局が捜査している件で、東京エレクトロンの台湾子会社の元従業員1人が関与していたことを確認したと発表した。
同社のウェブサイトに声明を掲載した。関与した元従業員はすでに懲戒解雇しており、台湾の司法当局による捜査に全面的に協力しているとした。東京エレクトロンによる調査では「現時点で関連する機密情報の外部への流出は確認されていない」としている。
【韓国関連】
Samsungの米国でのイメージセンサ生産、SK HynixのHBM4価格設定、など注目の内容である。
◇South Korea's IC design competitiveness at risk; KITA urges acceleration in nurturing startups―KITA calls for support to bolster South Korea's IC design (8月3日付け DigiTimes)
→AI産業が世界的に拡大を続ける中、半導体技術における競争は激化している。韓国の産業界は、半導体産業の成長勢いを維持するためにはファブレス企業を育成する必要があるとの懸念を表明し始めている。
◇SK Hynix Is Reportedly Raising HBM4 Prices by a Whopping 70%, Capitalizing on a ‘Monopolized Market’ by Charging a Hefty Premium for Early Delivery―Report: SK Hynix sets HBM4 prices 70% above HBM3E (8月4日付け Wccftech)
→SKハイニックスは、生産コストの上昇とNVIDIAとの独占供給関係を理由に、HBM4メモリの価格をHBM3Eと比較して最大70%引き上げる計画だと報じられている。SKハイニックスは、HBM4にTSMCの4ナノメートルプロセスを採用することで、サムスン電子やマイクロンテクノロジーに対して優位性を築いてきたが、価格上昇によって競合他社の競争力が強化される可能性があると、Hardware Reporter、Muhammad Zuhair氏は主張する。
◇IFTLE 636: Samsung’s Approach to Silicon Bridges; Micron HBM Packaging Planned for Virginia (8月5日付け 3DInCites)
→Samsungは、チップレットの相互接続性を向上させるため、Land-Side Bridge(LSB)を備えた新しいファンアウトパッケージ(FOPKG)構造を提案した。このソリューションは、シグナルインテグリティの向上、RDL層の削減、そして従来のシリコンインターポーザーと比較してコスト効率の高い高性能接続を実現する。
◇Apple’s mysterious chip tech will help Samsung make iPhone image sensors in Texas―Samsung, Apple partner on Texas image sensor factory―Apple says the chip-making tech ‘has never been used before anywhere in the world.’ (8月7日付け The Verge)
→サムスン電子は、Appleとの提携により、テキサス州オースティンに米国初となるCMOSイメージセンサー工場を建設する。
この工場では、iPhone 18向けに先進的な3層構造CMOSイメージセンサーを生産する予定で、現地生産を活用することで関税圧力とサプライチェーンの問題を軽減する。このイメージセンサーは現在、ソニーが日本で生産している。この提携は、Appleの$600 billion規模のAmerican Manufacturing Program(AMP)拡大の一環であり、Apple製品の消費電力と性能を最適化するチップを供給することを目指している。
◇Samsung And Apple Join Forces To Build First U.S. Image Sensor Factory, Targeting iPhone 18 With Advanced 3-Stack CIS Tech And Local Production Amid Tariff Pressure (8月7日付け Wccftech)
→サムスンはテキサスでアップルのiPhone 18用の先進的なイメージセンサーを生産し、両社の米国内での生産の現地化を支援する。
【AI関連】
少しでも目を離すと置いていかれる感じ方がつきまとうAIのインパクト&刷新の動き、現時点以下の取り出しである。
◇AI fuels the future of advanced packaging (8月1日付け Yole Group)
→1)*AIは、FOPLP、ガラスコア、そしてCo-Packaged Optics(CPO)の統合により、先進パッケージングへの移行を加速させている。
*先進パッケージングは半導体業界で最もホットな話題となり、かつては最先端プロセスノードに留まっていた熱狂を凌駕している。AIがエッジとクラウドの需要を牽引する中、この分野は豊富な機会と大きな成長をもたらす。Yole Groupの半導体パッケージングレポートによると、2024年には約$45 billionと評価される先進パッケージング市場は、9.4%のCAGR(年平均成長率)で堅調に成長し、2030年には約$80 billionに達すると予測されている。
2)AIの需要急増を背景に、先進パッケージングは半導体業界の主要な焦点となりつつある。2024年には$45 billionと評価されるこの市場は、2030年には$80 billionに成長すると予測されている。ファンアウトパッケージングやCPOといったイノベーションが、その牽引役となっている。
◇Why the AI era is forcing a redesign of the entire compute backbone―AI era's demands are reshaping computing infrastructure (8月3日付け VentureBeat)
→過去数十年にわたり、コンピューティング性能と効率性は、ムーアの法則によって実現され、スケールアウト型のコモディティハードウェアと疎結合ソフトウェアによって支えられ、想像を絶するほどの進歩を遂げてきた。このアーキテクチャは、世界中で数十億人にオンラインサービスを提供し、事実上すべての人類の知識を私たちの手の届くところに提供してきた。しかし、次のコンピューティング革命は、はるかに多くのことを要求するであろう。AIの可能性を実現するには、インターネット時代の進歩をはるかに超える能力の飛躍的な向上が必要である。これを実現するには、業界として、過去の変革を推進した基盤の一部を再検証し、テクノロジースタック全体を再考するために、共同でイノベーションを起こす必要がある。この大変革を推進する力を探り、このアーキテクチャのあるべき姿を明確にしよう。
◇Could A New Type Of Parallelism Speed Up LLM Inference? ―Nvidia debuts Helix Parallelism for Blackwell GPUs―A new parallelism technique from Nvidia could reduce LLM inference latency. (8月6日付け EE Times)
→1)NVIDIAは、key-value cache streamingとfeed-forwardネットワークの重みloadingにおけるボトルネックを解消することで、大規模言語モデル(LLM)推論におけるレイテンシを削減する技術を発表した。NVIDIAのBlackwell GPUsで使用されるHelix Parallelismは、キーバリュー、テンソル(tensor)およびエキスパート並列処理を統合実行ループに統合することで、トークン間のレイテンシを最大1.5倍削減し、レイテンシを増加させることなくより大きなバッチサイズをサポートする。
2)NVIDIAは、データ処理のボトルネックを解消するために設計された新しいAI並列処理技術「Helix Parallelism」を発表した。KVキャッシュストリーミングとFFN weight loadingを最適化することでパフォーマンスを向上させ、レイテンシを最大1.5倍削減し、大規模AI推論の高速化を実現する。
◇Nvidia and OpenAI launch open-source reasoning models―Nvidia, OpenAI release open-source AI reasoning models (8月6日付け Electronics Weekly (UK))
→OpenAIとNvidiaが開発した2つの新しいopen-weight AI推論モデル、gpt-oss-120bおよびgpt-oss-20bがユーザーに利用可能になった。
◇OpenAI’s release of open-source models seen as challenge to China’s lead in the field (8月6日付け South China Morning Post)
→1)共同創設者兼CEOのサム・アルトマン氏は、X.comへの投稿で、OpenAIの2つの新しいオープンソースモデルは「大きな出来事」だと述べた。
2)OpenAIは、中国のAIの優位性に挑戦することを目指し、GPT-OSS-120bとGPT-OSS-20bという2つのオープンソースAIモデルを発表した。これらのモデルは使いやすさが高く評価されており、中国におけるオープンソースリリースの急増がAI分野への大きな注目と競争を巻き起こしている中での登場である。
◇OpenAI、ChatGPTを刷新へ アルトマンCEOが投稿で予告 (8月6日付け 日経 電子版 06:30)
→米オープンAIが近く、新型のAIモデル「GPTー5」を発表する見通しが強まっている。対話型AI「ChatGPT」を動かす主要モデルの刷新としては1年3カ月ぶりだ。巨額の投資に見合う性能向上が続くのか、AI開発の今後の潮流を占う。
◇OpenAI、新モデル「GPTー5」発表 ChatGPTの誤回答「8割少なく」 (8月8日付け 日経 電子版 04:18)
→米オープンAIは7日、対話型AI「ChatGPT」向けに新たなAIモデル「GPT-5」を発表した。AIが事実と異なる回答をする「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる現象を従来モデルから8割減らしたという。AIの性能を高め、世界で7億人が使うようになったサービスを刷新する。
【チップレット関連】
大規模な回路を複数の小さなチップに分割し、それらを組み合わせて1つのパッケージに収める技術であるチップレットも、具体化&進化とともに複雑度が高まる感じ方である。AI需要に対応する進展が、1つの注目である。
◇Arming a Chiplet System Architecture (8月2日付け Electronic Design)
→1)Armのチップレットシステムアーキテクチャは、主要なチップ設計課題に対応し、Neoverse Compute SubsystemとAMBAを基盤としている。
2)Armのチップレットシステムアーキテクチャ(CSA)は、AMBAおよびCHI(Coherence Hub Interface)プロトコルを用いたチップレットベースの設計を標準化することで、チップ開発を加速する。業界リーダーの支援を受け、CSAは、より高速でキャッシュコヒーレントなチップ統合により、高度なAIおよび自動運転車アプリケーションをサポートする。
◇Chiplets Are The New Baseline for AI Inference Chips―Chiplets can boost efficiency, flexibility for AI inference (8月5日付け EE Times)
→1)d-MatrixのCEO、Sid Sheth氏は、チップレットベースのアーキテクチャがAI推論チップの標準となりつつあり、モノリシックチップよりも優位性があると述べている。チップレットは歩留まりを向上させ、より効率的なパッケージングを提供し、そして運用面および経済面のプレッシャーに対処できるとシェス氏は述べている。「チップレットのパラダイムは、スケーリング、つまりパフォーマンス、コスト、そして消費電力のスケーリングを復活させるのに最も近いもの」とシェス氏は指摘する。
2)AI推論はライフサイクルコストを押し上げ、モノリシックチップの効率を低下させている。チップレットベースのアーキテクチャは、モジュール性、エネルギー効率、拡張性を提供し、レイテンシと消費電力の問題に対処する。AIの進化に伴い、チップレットはコスト効率が高く柔軟な導入ソリューションに不可欠な存在となっている。
◇Chiplet ecosystem gains momentum with Intel, TSMC, MediaTek backing―Industry leaders advocate open chiplet standards for innovation (8月6日付け DigiTimes)
→1)大手半導体企業は、台北で開催されたOCP APACサミット 2025で、オープンチップレット標準の採用を強化するよう求め、将来のデータセンターと高性能コンピューティング(HPC)インフラストラクチャの基盤となるモジュラーアーキテクチャとオープンエコシステムに関する業界の合意が高まっていることを強調した。
2)台北で開催されたOCP APAC サミット 2025では、大手半導体企業がオープンチップレット標準のより広範な採用を促し、将来のデータ センターと高性能コンピューティングインフラストラクチャを進化させる鍵として、モジュラーアーキテクチャとオープンエコシステムを強調した。