米中摩擦関連更新:引き続く米政権の対中輸出規制、中国市場での現状
バイデン政権の半導体先端技術&製品、AI(人工知能)半導体の輸出規制に対して、こんどのトランプ政権では矢継ぎ早に迫りくる関税攻勢ということで、米中摩擦関連も見直しを要している。トランプ政権はこのほど、数十の中国企業を輸出ブラックリストに追加するとともに、新たな段階的AI半導体輸出規則を5月半ばに施行し、GPUへのアクセスを世界的に制限するとしている。これら関税および規制の動きに伴って、世界随所で直接間接に影響を受ける動き&見方があらわれている。一方の中国では、経済減速が取り沙汰される中、米国の規制に対抗して自己完結の半導体生産増強に取り組むとともに、DeepSeekの登場はじめ盛り返す材料が見られる現状模様である。
≪規制&関税の応酬模様≫
まずは、トランプ政権の自動車への輸入追加関税についての現下の動きから。
◇米政権、自動車に25%関税 日本も対象に4月3日発動 (3月27日付け 日経 電子版 08:09)
→トランプ米大統領は26日、輸入自動車に25%の追加関税をかけると発表した。日本からの輸入車も対象になる。米東部時間4月3日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)から新たな関税の徴収を始める。
トランプ氏が関税引き上げを指示する文書に署名した。記者会見で「米国の『解放の日』の始まりだ」と述べた。
◇Trump Floats More EU, Canada Tariffs If They Work Against US―Trump threatens higher tariffs on EU and Canada (3月27日付け Bloomberg)
→ドナルド・トランプ大統領は、欧州連合(EU)とカナダがアメリカ経済に損害を与える行動をとった場合、アメリカは多額の関税を課す可能性があると警告した。これは、トランプ政権が水曜26日の夕方、自動車輸入に25%の追加関税を課すと発表したことを受けたものだ。これに対し、EUは対抗措置を準備しており、フランスは反強制手段の使用を提唱している。一方、カナダのMark Carney(マーク・カーニー)首相は、係争が続く中、欧州の同盟国との関係強化を模索している。
先の先は好転とするものの、米国株式市場の株価は落ち込んできている。
◇NY株急落715ドル安 トランプ関税、「1強」自壊を誘発 (3月29日付け 日経 電子版 05:29)
→米株式相場の失速が鮮明になってきた。市場参加者は米国境に「関税の壁」を築いて米経済の構造転換を図るというトランプ大統領の野心を本気と受け止め、景気悪化とインフレ再燃に身構える。政権側は短期的な「痛み」の先に好況が待つと訴えるが、世界が米国に寄せる信頼は揺らぎ、投資家はV字回復への自信を失いつつある。
さて、関税に加えて、トランプ政権が半導体関連の輸出規制に乗り出しており、中国企業数十社の輸出ブラックリスト追加である。
◇U.S. blacklists over 50 Chinese companies in bid to curb Beijing’s AI, chip capabilities (3月26日付け CNBC)
→*米国は、AIや高度なコンピューティングにおける中国の躍進を抑制しようとするトランプ政権による初の取り組みとして、数十の中国企業を輸出ブラックリストに追加した。
*この輸出規制は、トランプ政権が対中関税を強化し、ワシントンと北京の緊張が高まっている時に行われた。
◇Trump Takes Tough Approach to Choking Off China’s Access to U.S. Tech―US adds Chinese tech firms to trade blocklist (3月26日付け The Wall Street Journal)
→1)シリコンバレーがワシントンの規制でビジネスを失うと懸念する中、数十の企業が貿易ブラックリストに追加された。
2)トランプ政権は火曜25日、中国の米国技術へのアクセスを制限するために輸出規制を強化し、Inspur GroupやSugonとその関連会社を含む数十の中国企業を貿易ブロックリストに追加した。この措置により、米国企業はこれらの企業に技術を販売する前に政府の承認を得る必要がある。
◇米政府、輸出規制に中国サーバー大手追加 NVIDIA6%安 (3月27日付け 日経 電子版 05:48)
→米商務省は25日、スーパーコンピューターなどの分野で中国企業など約80社を禁輸措置の対象にすると発表した。中国で極超音速兵器やドローン(無人機)など先端兵器の開発に使われることを防ぐ狙いがある。米国の半導体関連の輸出がさらに縮小するとの見方から米エヌビディア株が約6%下げるなど、影響が広がっている。
さらに、新たな段階的AIチップ輸出規制が、次の通り施行の運びとあらわされている。
◇[News] U.S. AI Chip Controls Are Coming- A Breakdown of the Tiered Restrictions (3月27日付け TrendForce)
→1)AI Diffusion Rule(AI拡散ルール)として知られる米国政府の新たな段階的AIチップ輸出規制は、5月15日に正式に発効する予定だ。
Liberty Times紙によると、この規制は米国の大手ハイテク企業の海外データセンターへの投資計画に大きな影響を与えると予想されている。
2)米国は5月15日、新たな段階的AIチップ輸出規則を施行し、GPUへのアクセスを世界的に制限する。この制限は米ハイテク企業の海外データセンター計画を脅かし、規制の柔軟性を求める業界のロビー活動を促している。
以上の関税および規制の新たな局面を迎えている米中摩擦であるが、直接あるいは間接に関連する様々な動きを以下取り出している。
◇Inside Trump’s ambitious - and perilous - push to unleash US minerals―Trump order fast-tracks priority mineral projects―President Donald Trump is moving to open more of the nation to mineral mining and processing. Conservationist groups are girding for a fight. (3月21日付け E&E News)
→ドナルド・トランプ大統領は、国家安全保障と経済的利益を理由に、ウランを含む鉱物の国内採掘と加工を迅速に進める大統領令を発令した。国家エネルギー支配評議会(National Energy Dominance Council)を設立するこの命令は、法的な課題や環境への懸念に直面しており、環境保護よりも産業界の利益を優先し、絶滅危惧種や水質に悪影響を及ぼす可能性があると批評家は警告している。
Nvidiaの米国市場における布石である。
◇Nvidia planning massive outlay on US electronics (3月21日付け Taipei Times)
→Nvidia Corpは、今後4年間で数千億ドルを費やして米国製のチップや電子機器を調達することを目指している、とFinancial Timesが報じた。
エヌビディアのJensen Huang CEOは、フィナンシャル・タイムズ紙に対し、同社が設計した最新のチップと、エヌビディアがデータセンター向けに提供するサーバーは、TSMCが運営する米国の工場で生産できるようになったと語った、TSMCと台湾で鴻海精密工業として知られるFoxconn Technology Group(富士康科技集團)が運営する米国の工場で生産できるようになった。
Nvidia製品はじめ先端半導体について、マレーシアでの管理強化である。
◇Malaysia to Tighten Nvidia Chip Flow on US Pressure, FT Says―Report: Malaysia tightens Nvidia chip oversight to curb China access (3月23日付け Yahoo/Bloomberg)
→マレーシアは、米国が中国に流れる可能性のある先端半導体を注視するよう要求したことを受け、Nvidia Corp.のチップの流れをより厳しく管理する計画である、とFinancial Timesが通商大臣の発言を引用している。
我が国のデジタル法制に対して、米国からの牽制である。
◇デジタル政策、米がやり玉 スマホ競争促進法、経済団体「米に不利益」通商問題に波及警戒 (3月26日付け 日経)
→年内に施行する「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」が日米摩擦の火だねになる可能性が出てきた。同法が米国企業に「不利益を与えている」と米国側の経済団体がやり玉にあげた。デジタル政策も通商問題になりうる展開に、日本政府の関係者は警戒を強める。
TSMCの米国半導体工場追加投資への論評が見られている。
◇TSMC making a risky bet on MAGA―World’s leading chipmaker places $100 billion wager that building more US factories will appease Trump and protect Taiwan (3月24日付け Asia Times)
→ドナルド・トランプ大統領の露骨な「保護費」強要に屈して、TSMCは最近、アメリカのアリゾナ州に(すでにある3つの工場に加えて)チップ工場を追加建設するために$100 billionを約束した。
この動きにはビジネスの論理的根拠がない。むしろTSMCは、トランプ大統領のエゴと「アメリカ・ファースト」のアジェンダをなだめることで、主権を持つ台湾がアメリカの利益にもなると大統領を納得させることに賭けているのだ。
◇Hon Hai investment in Texas might be for AI server capacity (3月26日付け Taipei Times)
→鴻海精密工業はテキサス州に$142 millionを投資し、この取引に近い業界筋は、AIサーバーの能力を拡大することを目的としていると述べた。
鴻海は、クラウド・ソリューション子会社のIngrasys Technology Incを通じて、ヒューストンに34.9ヘクタールの土地と92,903m2の建物を取得したと、月曜24日に台湾証券取引所に提出した書類で発表した。
インテルの前CEO、Gelsinger氏の警告コメントである。
◇Ex-Intel head says TSMC’s new investment will not resurrect US chip sector (3月27日付け Taiwan News)
→元インテルCEOのPat Gelsinger氏は、TSMCの$100 billionの米国投資では米国のチップ・リーダーシップは回復しないと主張し、研究開発は台湾に残っていると指摘した。同氏は、トランプ大統領の関税脅しはわずかな効果しかないと批判し、真のイノベーションはまだ海外にあると警告した。
米国規制の限界線上で取り組んでいる中国のサーバーメーカーの現状である。
◇Exclusive: China's H3C warns of Nvidia AI chip shortage amid surging demand―China's H3C calls out potential Nvidia chip shortage (3月28日付け Reuters)
→中国のサーバーメーカー、H3Cは、需要の急増と地政学的緊張の中、NvidiaのH20 AIチップが不足する可能性があると警告した。H20チップは、米国の輸出規制下にある中国で入手可能な最先端のAIプロセッサーである。H3Cは限られた供給量を利益率に基づいて分配し、長期的で安定した顧客を優先する計画だ。
SK Hynixの顧客が、関税に対して発注を前倒ししている状況である。
◇Orders at SK Hynix brought forward (3月28日付け Taipei Times)
→世界第2位のメモリー・チップ・メーカーである韓国のSKハイニックスは昨日、半導体に対する米国の新関税に備え、一部の顧客が注文を前倒ししたと発表した。
同社の年次株主総会で、SK Hynixのグローバル・セールス・マーケティング責任者であるLee Sang-rak氏は、顧客の在庫削減とともに「プルイン」効果が良好な市況をもたらしたと述べた。
一方、中国市場での半導体およびAI関連の現状について、関連する内容が以下の通りである。
DeepSeekの取り上げが次の通りである。
◇中国車、DeepSeek搭載 小米など静観する新興勢も (3月23日付け 日経 電子版 02:00)
→中国車メーカーが相次ぎ電気自動車(EV)など新エネルギー車の音声アシスタントに中国の新興DeepSeekのAI基盤モデルを導入する。推論強化型の特性を生かし、曖昧な指示でも理解するなど機能アップに活用する。消費者へのセールスポイントにもなり、急速に広がっている。
◇DeepSeek narrows China-US AI gap to three months, 01.AI founder Lee Kai-fu says (3月25日付け Reuters)
→中国は一部の分野で米国とのAI開発格差をわずか3カ月に縮めており、DeepSeekのような企業が、チップの使い方やアルゴリズムの効率的な適用方法を編み出したからだ、と中国のスタートアップ、01.AIのCEOであるLee Kai-fu氏は語った。世界の人工知能分野で著名な人物であり、グーグル中国の元代表でもあるリー氏は、ロイター通信に対し、スタートアップのディープシークが、インフラ・ソフトウェア・エンジニアリングなどの分野で中国が先行していることを明らかにしたと語った。
◇ディープシーク、AIの推論能力向上 基盤モデル最新版公表 (3月27日付け 日経)
→AIを開発する中国スタートアップのDeepSeekは25日、基盤モデルの最新版「V3―0324」の提供を始めたと発表した。従来型と比べて推論能力が高まったほか、中国語の作文能力も向上したという。
中国発展フォーラム(CDF)での動き関連である。
◇Tim Cook revisits China: discuss DeepSeek and supply chain collab (3月24日付け DigiTimes)
→アップルのティム・クックCEOは、中国発展フォーラムに出席するため、今年初めて北京を訪れた。クックCEOは、グローバル・ビジネス・リーダーたちとともに、市場機会を探り、アップルの地域コミットメントを再確認したと、Global Times, Yahoo!, およ
びthe Standardが伝えている。フォーラムの中でクック氏は、アップルと中国発展研究基金会(China Development Research Foundation)との協力を、特に農村部の教育分野で拡大する計画を発表した。
◇Samsung chief visits China in search for breakthrough―Samsung head Lee seeks partnerships during China trip (3月24日付け The Korea Times (Seoul))
→サムスン電子のLee Jae-yong会長は中国を訪問し、シャオミのLei Jun会長兼CEO、クアルコムのCristiano Amon社長兼CEOと会談し、特に電気自動車での提携を模索した。この会談は中国開発フォーラムの期間中に行われ、法的問題を経て表舞台に復帰した李会長の晴れ舞台となった。
◇Samsung chief meets Xiaomi, Qualcomm CEOs in mysterious Beijing appearance (3月24日付け JoongAng Daily (South Korea))
→サムスン電子のLee Jae-yong会長は、シャオミの創業者であるLei Jun会長兼CEOと会談、李在鎔会長は数年にわたる法廷闘争を経て、徐々に表舞台に戻ってきた。
中国メディアの新浪科技が日曜23日に報じたところによると、両者は土曜22日、クアルコムのCristiano Amon社長兼CEOとともに、李会長が中国発展フォーラムのために訪れた北京郊外にある同社のEV工場で会談したという。
アリババ・グループ会長のハイテク投資についての見方である。
◇Too many data centres? Some AI-linked bets risk creating a ‘speculative bubble’, Tsai says (3月25日付け South China Morning Post)
→*「人々は文字通り約$500 billion、いくつかの$100 billion(プロジェクト)について話している。私はそれが完全に必要だとは思わない」とTsai氏は言う。
*アリババ・グループ・ホールディングのJoe Tsai会長は、AIサービスの進歩をサポートするためのグローバルなハイテク投資について警鐘を鳴らしている。
世界のハイテク業界のリーダーや投資ファンドが、AIの計算、ストレージおよびエネルギーのニーズをサポートするためのインフラ・プロジェクトに殺到していることは憂慮すべきことだ、と同氏は火曜25日に香港で開催されたHSBCグローバル投資サミットで述べた。
SEMICON China 2025(3月26日〜:上海)はじめ中国半導体業界の現状から。
◇中国半導体販売17%増 昨年、国産化政策が追い風 (3月28日付け 日経)
→中国半導体行業協会の張立副理事長は27日、2024年の国内半導体販売額は前年比17%増の1兆4300億元(約30兆円)だったと明らかにした。米国との対立は続いているが、25年についても「良好な立ち上がりとなった」との見方を示した。
上海市で26日に開幕した半導体分野の国際展示会「セミコン・チャイナ」のフォーラムで明らかにした。
◇Primarius to acquire Actt, accelerating China's EDA consolidation―Primarius to buy Actt in China's consolidating EDA market (3月28日付け DigiTimes)
→中国のEDA企業であるPrimarius Technologiesは3月27日、同じ中国企業であるChengdu Analog Circuit Technologyの株式を、現金支払いと株式発行を組み合わせて取得すると発表した。
◇SiCarrier bets on DUV for 5nm chips as SMIC's yield stalls at one-third of TSMC's―SiCarrier launches 5nm-capable fabrication tools (3月28日付け DigiTimes)
→先端半導体技術に対する米国の輸出規制が強化される中、深センに拠点を置くSiCarrier社は、SEMICON China 2025で5nm対応の新しい製造装置を発表した。
局面変化に日々刻刻注視を要する米中摩擦であり、引き続き目が離せないところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□3月25日(火)
上にも示したトランプ政権の追加関税であるが、成り行きに反応して、前2日は上げて、後3日は下げる展開となった今週の米国株式市場である。
◇NYダウ597ドル高 相互関税に修正観測、テスラ12%高 (日経 電子版 06:06)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅続伸し、前週末比597ドル(1.4%)高の4万2583ドルで引けた。米政府が4月2日に発動する予定の関税について、対象国や品目が限定的になるとの報道を受けて半導体株や自動車株など幅広い銘柄が上昇した。市場参加者の警戒感が和らぎ、株式を買い戻す動きが鮮明となった。
◇米相互関税「ダーティー15」に照準 日本やEU対象か (日経 電子版 15:11)
→トランプ米大統領が看板政策の「相互関税」の標的を絞り込む可能性が出てきた。「ダーティー15」と呼ぶ高関税や非関税障壁が残る国・地域が対象になる見通しだ。欧州連合(EU)やカナダ、メキシコなど貿易赤字の多い国・地域が中心になるもようで、日本も含まれる可能性が高い。
相互関税は貿易相手国と同水準まで関税率を引き上げる仕組みで、トランプ米政権は4月2日に公表するとしている。
□3月26日(水)
トランプ政権に対する反発が、欧州で広がっている。
◇欧州で米国製の不買広がる テスラ販売4割減、食品も (日経 電子版 03:19)
→トランプ米政権に対する反感から、欧州で米国製品をボイコットする動きが広がる。米国ではなく欧州ブランドの食品・飲料を買う呼びかけがSNSで目立ち、米テスラの電気自動車(EV)の販売台数は4割減った。関税策への反発に加えてロシアに融和的な外交姿勢に対する不信感が強く、不買は強まりそうだ。
◇NYダウ小幅続伸、4ドル高 関税巡る過度の懸念が後退 (日経 電子版 06:04)
→25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に3日続伸し、前日比4ドル18セント高の4万2587ドル50セントで終えた。トランプ政権による関税引き上げが警戒されていたほど広範囲に及ばないとの観測が浮上したことが引き続き買いを誘った。もっともダウ平均は前日に600ドル近く上昇した後で、主力株には持ち高調整の売りが出やすく、上値は重かった。
世界貿易量も、関税引き上げ前の駆け込みである。
◇1月の世界貿易量が急増、トランプ関税前に駆け込み (日経 電子版 11:04)
→オランダ経済政策分析局(CPB)が25日に公表した1月の「ワールドトレードモニター」によると、財(モノ)の世界貿易量が急増した。米トランプ政権による関税引き上げ前に駆け込みで輸入して在庫を確保しようとの動きが、世界全体の貿易量を膨らませている。米国の関税強化に世界中が身構えており、今後はその反動が貿易量の落ち込みを深くしかねない。
□3月27日(木)
◇NYダウ132ドル安 半導体株安が重荷、ナスダック2%安 (日経 電子版 06:14)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日ぶりに反落し、前日比132ドル(0.3%)安の4万2454ドルで終えた。自動車に対する追加関税の発表を取引終了後に控えていた上、半導体関連の輸出規制も重なり投資家心理に重荷となった。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は2%安となった。トランプ大統領が東部時間夕方に輸入自動車への追加関税策導入の発表を予定したことを受け、自動車メーカー各社の株価が下がった。
□3月28日(金)
カナダも反発、早速首脳同士の対話が持たれた模様である。
◇カナダ首相、米国との蜜月「終わった」 報復関税を協議 (日経 電子版 07:04)
→米トランプ政権が発表した輸入自動車に対する25%の追加関税について、国境をまたいだ自動車生産の分業体制が成立しているカナダからは強い反発の声が上がっている。カナダのカーニー首相は27日、「経済や安全保障面で緊密に協力するという、かつての米国との関係は終わった」と述べ、報復措置をとると表明した。
カーニー氏は27日、総選挙の遊説活動を中断し、首都オタワで関係閣僚らと関税対応を協議した。
◇NYダウ続落、155ドル安 自動車関税を嫌気 (日経 電子版 08:02)
→27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比155ドル09セント(0.36%)安の4万2299ドル70セントで終えた。トランプ米大統領が26日夕に輸入自動車への25%の追加関税を発表した。関税政策を巡る不透明感や貿易戦争を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まることが懸念された。
□3月29日(土)
◇NYダウ3日続落、ナスダックは2.7%安 関税に警戒感 (日経 電子版 06:45)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比715ドル(1.7%)安の4万1583ドルで終えた。物価高が続く中で消費支出が鈍り始めたとの見方が広まり、投資家心理を暗くした。
≪市場実態PickUp≫
【マイクロソフト関連】
本年4月に設立50周年を迎えるマイクロソフトについて、同社CEO、サティア・ナデラ氏の来日もあって、以下の取り出しである。AIで第3の創業とのあらわし方である。
◇Smaller Surface PCs may arrive soon with Snapdragon chips inside―Microsoft plans 12-inch Surface devices with Snapdragon―A replacement for Microsoft's Surface Laptop Go may be in the works. (3月26日付け PCWorld)
→マイクロソフトは、Surface ProタブレットやSurface Laptopを含む小型Surfaceデバイスの新ラインを、50周年に合わせて発売する準備を進めていると報じられている。12インチのデバイスにはSnapdragonチップが搭載され、マイクロソフトがコンシューマー製品にクアルコムのSnapdragon Xプラットフォームを採用していることが維持されると推測されている。
◇Microsoft、業務ソフト用生成AIを自社開発へ CEO表明【イブニングスクープ】 (3月27日付け 日経 電子版 18:00)
→米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは27日、AIの基盤モデルを業務ソフト向けに自社開発すると明らかにした。
これまでは資本提携する米オープンAIの生成AI「ChatGPT」の技術を活用してきた。独自開発によって自社の業務ソフトに最適化したAIサービスを提供できるようにする。
日本経済新聞とテレビ東京の共同取材で明らかにした。
◇Microsoft、日本でAIデータセンター稼働 4月中旬 (3月27日付け 日経 電子版 11:18)
→米マイクロソフトは27日、日本で整備していたAIの計算処理に最適化したデータセンターを4月中旬に稼働させると発表した。クラウドサービスを経由して日本の企業に計算資源を提供し、AIが扱う機密情報や個人データを国内で管理できるようにする。
27日に都内で開いた顧客企業向けのイベントに登壇したサティア・ナデラCEOが明らかにした。同氏は「プラットフォームを提供することで、日本のAIトランスフォーメーションの加速にコミットしていく」と述べた。
◇Microsoft 栄枯盛衰の50年―パソコン普及からAIの雄へ (3月27日付け 日経 電子版 05:00)
→米マイクロソフトが4月で設立から50年を迎える。安価で使いやすいソフトウエアを武器に、企業や一般家庭に世界約14億台のパソコン、55億人が利用するインターネットを広める立役者となった。スマートフォンでは技術革新に乗り遅れ、米グーグルや米アップルに敗れるも、クラウドコンピューティングやAIで復活を果たした。50年の栄枯盛衰を振り返る。
◇Microsoft、AIで第3の創業 ナデラCEO「原則に忠実に」 (3月28日付け 日経 電子版 02:00)
→米マイクロソフトが4月4日、設立から50年の節目を迎える。変転を経た「古豪」が現在挑んでいるのが、最新のAIを活用した「第3の創業」だ。テクノロジーの社会への浸透スピードが加速するなか、同社の行方は多くの産業や人々の生活を左右することになる。
【Nvidia関連】
同社イベント、GTC(3月17日〜21日:San Jose)の余韻の趣きであるが、以下の通りである。
◇Missed Nvidia's GTC in San Jose? Here's what went down (3月21日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→サンノゼで開催されたNvidiaの年次AIカンファレンスについて。
◇Nvidia to open quantum computing lab, CEO says (3月22日付け Taipei Times)
→エヌビディアのJensen Huang CEOは木曜20日、ボストンに量子コンピューティングの研究所を開設し、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学の科学者らと協力する予定であることを明らかにした。
◇エヌビディア、ロボ覇権照準 ソフト開発から半導体まで提供 ディズニーやグーグルと協業 (3月22日付け 日経)
→米エヌビディアがロボット開発のリーダーに名乗りを上げた。高度なAIを搭載したロボットの実現に向け、ソフトウエア開発環境から半導体までをまるごと提供する構想を披露した。AI半導体の成功体験を応用し、ロボット分野でも覇権を狙う。
米サンノゼで開催中の開発者会議「GTC」には人気映画「スター・ウォーズ」の世界から飛び出てきたようなロボットが登場した。
◇Nine Interesting Thoughts From Jensen Huang―Discover Jensen Huang's take on AI, geopolitics and Nvidia's evolution beyond a chip company. (3月25日付け EE Times)
→1)GTCにおいて、世界中から集まった数百人のメディア関係者とのQ&Aセッションで、Nvidiaのジェンセン・フアンCEOは、AGI(Artificial General Intelligence)からインフラ、地政学に至るまで、さまざまなトピックに関する質問に答えた。ここでは、同氏の発言で最も興味深かったものをいくつか紹介しよう。
・同氏は、GAAトランジスタによって性能が約20%向上すると予想している。
・同氏は、貿易関税がエヌビディアのビジネスに与える影響はほとんどないと予想している。
・アメリカにおける中国人エンジニアの才能を高く評価している
・同氏はNvidiaをチップ企業として見ていない
・同氏は推論をトレーニングとは別の問題として捉えている。
・シェア争いはエヌビディアのスタイルではない
・NvidiaがIntelを買収するという噂は、かなり誇張されている
・誰が最初にAGIに到達するかは重要ではないと考えている。
・token generationは製造業と同等の重要性を持つと同氏は考えている。
2)Nvidiaのジェンセン・フアンCEOは、GTCでのQ&Aで、ゲート・オールアラウンド(GAA)トランジスタの影響、貿易関税の中でのNvidiaのグローバル・サプライチェーンの回復力、米国における中国のエンジニアリング人材の重要性などのトピックについて議論した。Huang氏はまた、NvidiaがIntelを買収するという噂を否定し、AI製造におけるトークン生成の重要性を強調した。
◇Analyst claims Nvidia's gaming GPUs could use Intel Foundry's 18A node in the future―Nvidia eyes Intel's 18A node for gaming GPUs ―A GeForce GPU made by Intel? (3月26日付け Tom's Hardware)
→GuruFocusによると、Nvidiaがゲーマー向けGPUsにIntel Foundryの製造サービスを利用することを検討しているという。UBSのアナリスト、Timothy Arcuri氏は、もしIntelが最大のファブレス・チップ・デザイナーの1つであるNvidiaからの注文を獲得すれば、これは大きな勝利であり、おそらくIntel Foundryにとって変曲点となるだろうと述べている。
◇Beyond transformers: Nvidia’s MambaVision aims to unlock faster, cheaper enterprise computer vision―Nvidia's MambaVision boosts image recognition (3月26日付け VentureBeat)
→Hugging Faceで利用可能になったNvidiaのMambaVisionモデルは、Mambaの効率性とトランスフォーマーを組み合わせることで、コンピュータ・ビジョンへの新しいアプローチを提供する。このハイブリッド設計は、構造化された状態空間モデルと、複雑な空間依存性をよりよく捉えるための注意メカニズムの融合を通じて、画像認識タスクを強化する。
【Samsung関連】
家電・スマホを率いたサムスン電子のCEOの方が急逝されている。多難な事業環境の中、ご冥福をお祈りするのみである。
◇Samsung, SK hynix to face-off in upcoming HBM4 race―Samsung, SK Hynix compete for HBM4 dominance (3月23日付け The Korea Herald (Seoul))
→サムスン電子とSKハイニックスは今年、AIチップ分野での地位強化を目指し、広帯域メモリー(HBM)市場での覇権を争う。SKハイニックスはGTC2025で12層HBM4のプロトタイプを展示し、今年後半の量産を計画している。サムスンはHBM4の発売を半年前倒しし、同じく下半期に量産を開始する計画だ。
◇Samsung to reportedly mass-produce ADAS chips for Hyundai―Samsung said to begin mass production of ADAS chips for Hyundai Motor (3月25日付け DigiTimes)
→韓国メディアによると、サムスン電子は現代自動車向けに5nmプロセスで先進運転支援システム(ADAS)チップを量産するという。しかし、現代自動車のパートナー選定が遅れることで、サムスン・ファウンドリーに影響する可能性がある。
◇Samsung Co-CEO Han Jong-hee Dies of Heart Attack at 63―Samsung co−CEO Han Jong−hee passes away at 63 ―The executive at the consumer electronics giant had just named a co-CEO to join him a week before his death. (3月25日付け CNET)
→家電・半導体大手のサムスンは、心臓発作の治療中に死亡した韓宗熙CEOの死後、新しいリーダーシップに移行する。
◇Samsung Electronics CEO Han Jong-hee dies of heart attack (3月26日付け The Korea Times)
→サムスン電子のHan Jong-hee CEOが、過酷なスケジュールの末、心臓発作のため63歳で死去した。37年のベテランであった韓氏は、ソウルで急逝する前に、サムスンが世界のテレビ市場を支配するのに貢献し、AIの革新を支持した。
◇サムスンの韓CEO急死 家電・スマホ率いたナンバー2 (3月26日付け 日経)
→韓国サムスン電子は25日、韓宗熙CEO兼副会長が死去したと発表した。家電やテレビ、スマートフォンなど消費者向け製品部門のトップとして2022年から現職を務めていた。技術力の強化を目的に共同CEOを置く「2トップ体制」を19日に始動させたばかりだった。
【TSMC関連】
2-nmについて、台湾・高雄での生産増強とともに、現状の歩留まりについても以下にあらわされている。今後の推移に注目である。
◇TSMC to unveil capacity expansion plan on March 31―KAOHSIUNG CEREMONY: The contract chipmaker is planning to build 5 fabs in the southern city to gradually expand its 2-nanometer chip capacity (3月22日付け Taipei Times)
→世界最大の半導体受託製造企業であるTSMC、は昨日、3月31日に高雄で最先端の2ナノメートル・チップの生産能力拡張計画を発表する式典を開催する予定であることを明らかにし、国内でのさらなる投資へのコミットメントを示した。
式典はTSMCのY.P. Chyn COOが主催する。TSMCは、Cho Jung-tai首相や政府高官が式典に出席するかどうかについては明らかにしていない。詳細は来週発表される予定だという。
◇TSMC 2nm yields nearly ready for mass production―TSMC ready to meet 2nm demand (3月24日付け Electronics Weekly (UK))
→1)TSMCの2nm歩留まりは、12月にTF International Securitiesのアナリスト、Ming-Chi Kuo氏が報告した60-70%を大きく上回り、今年の量産に向かっているという。
2)TSMCは2nmチップの量産に近づいており、潜在的な生産量は年末までに月産5万枚に達する。台湾の宝山と高雄にあるTSMCの工場は、フル稼働で月産8万枚の生産が可能で、初期の需要を満たすことができる。サムスンとインテルの歩留まりは20〜30%と低く、2nmチップの生産が半年以上遅れる可能性がある。
◇TSMC to dominate 2nm sector: analyst―SECTOR LEADER: TSMC can increase capacity by as much as 20 percent or more in the advanced node part of the foundry market by 2030, an analyst said (3月24日付け Taipei Times)
→TSMCは、サムスン電子やインテルとの競争にもかかわらず、先進的な2ナノメートルプロセス技術で同業他社をリードする見込みであると、トレンドフォース社のアナリスト、Joanne Chiao氏は述べた。TSMCの洗練された製品とその大規模な生産規模により、同社は今年も世界の2ナノメートルプロセス市場を支配し続けることが期待される、とチャオ氏は語った。
◇Taiwan launches Nano 5 supercomputer to accelerate semiconductor AI and chip design―Taiwan releases Nano 5 supercomputer to boost AI chip design (3月25日付け DigiTimes)
→台湾南部の半導体企業の間のデジタル・イノベーションと技術向上を促進し、企業がより多様で業界競争力のあるシステム・アプリケーション技術を開発できるよう支援に向けた国立高性能半導体センター(National Center for High Performance Semiconductor)について
◇EDITORIAL: Where Blackpink meets TSMC (3月27日付け Taipei Times)
→ジャーナリストのJulien Oeuillet氏は、TSMCは世界経済にとって不可欠だが、台湾には一般の人々に関心を持たせるための文化的なソフトパワーが欠けていると主張する。同氏は、台湾が世界的な注目を集めるために、K-POPのような文化輸出に投資するよう促している。
◇台湾「原発ゼロ」に苦慮 迫る停止期限/米は反対の構え 半導体で電力需要増 再エネ比率 伸び鈍く (3月28日付け 日経)
→台湾で原子力発電所が50年近く前に稼働を開始して以来初めてとなる「原発ゼロ」の期限が迫ってきた。半導体工場の増設などで電力需要は増え続けており、電気料金も上がる傾向にある。原発建設に協力した米国は原発ゼロに反対の構え。頼清徳政権は対応に苦慮している。
【アップル関連】
上記のTSMCの2-nm品はアップルのiPhone 18に搭載か、CEOのTim Cook氏北京訪問、など現下の動きから以下の通りである。
◇iPhone 18 to Feature 2nm Chip for Speed and Battery Boost―Analyst: 2nm chip will be part of iPhone 18 (3月23日付け Engadget)
→アナリストのMing-Chi Kuo(ミンチー・クオ)氏によると、アップルはiPhone 18にTSMCの2ナノメートルチップを搭載する予定だという。このチップは、アップルのAI機能をサポートするため、パフォーマンスを最大15%向上させ、バッテリー駆動時間を改善すると期待されている。
◇Apple announces $99 million new clean energy fund in China―Apple will set up $99M clean energy fund in China (3月24日付け Reuters)
→アップル社は月曜24日、Tim Cook CEOの北京訪問に合わせて、7億2000万元($99.22 million)相当の新しいクリーンエネルギー基金を中国に設立すると発表した。
アップル社は声明の中で、これは中国におけるクリーンエネルギー能力の拡大を目指した動きであり、2030年までにサプライチェーンを100%再生可能エネルギーに移行させるという同社の取り組みの一環であると述べた。
◇Future Apple AirPods may detect health issues using AI―Apple files patent for AirPods that track health metrics ―The earbuds could be the next health tracker from Apple. (3月24日付け Laptop Mag)
→最近の特許によると、アップルはAirPodsを健康監視デバイスとして使用することを模索している。この特許では、センサーと機械学習(ML)を使って心拍数や体温などの生体情報を追跡し、歩行や呼吸などの身体活動のパターンを分析することで健康上の問題を検出することが説明されている。
◇Apple開発者会議、6月9日から 自社AIの新機能に注目 (3月26日付け 日経 電子版 04:36)
→米アップルは25日、毎年恒例の年次開発者会議「WWDC」を6月9〜13日に開くと発表した。自社の生成AI「アップルインテリジェンス」で目新しい新機能が披露されるかどうかが注目されている。
WWDCはスマートフォン「iPhone」などアップル製品向けのアプリやサービスをつくるソフト開発者向けのイベントだ。