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半導体産業における「風を読む」VII〜Siウェーハ市場を金額=数量x単価で分析する

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第六回で、「半導体市場金額 = Σ半導体各製品別数量x半導体各製品別単価」、という数式を使った市場分析アプローチを紹介したが、第七回目の「風を読む」は、この市場分析アプローチ「金額 = 数量x 単価」をより一層理解するために経済産業省が毎月公表しているシリコンウェーハ国内統計を使用し、より具体的に紹介する。

図1 シリコンウェーハ国内統計と変換したGDPとの動向比較

図1 シリコンウェーハ国内統計と変換したGDPとの動向比較


図1は、経済産業省が公表しているシリコンウェーハ国内統計の5"("はインチ)以下、6"、8"、12" の年間合計出荷金額、出荷数量、出荷金額を出荷数量で割り8"換算した平均単価、の各前年比(成長率)を左軸、第二回「半導体産業における風を読む」で紹介したIMF(国際通貨基金)とWorld Bank(世界銀行)が公表しているGDP成長率の差、「当年GDP変換値 = 当年GDP成長率 - 前年GDP成長率」とGDP成長率を数値変換したものを右軸に2001〜2010年の10年間に渡り図示化したものである。 

一般的に市場動向は金額ベースで議論されるが、「金額 = 数量 x 平均単価」で示され、金額成長率を数量成長率と平均単価成長率に分けることにより、シリコンウェーハ国内統計における出荷金額市場と出荷数量市場が変換後のGDP成長率と同じ方向の「風の流れ」の中で、上昇・下降と変動し、平均単価動向が出荷数量市場動向に加速や減速を加え、出荷金額市場動向として生まれている様子を理解できる。

図1は前年比(成長率)を使用し市場動向を図示化したが、図2、3、4も同様に前年比(成長率)による分析である。それは把握困難な市場動向を知るため、2001〜2010年の10年間に渡り、絶対値ベースで市場動向を図示化したものである。


図2 シリコンウェーハ国内統計における出荷数量と出荷金額動向比較

図2 シリコンウェーハ国内統計における出荷数量と出荷金額動向比較


図2は、出荷数量と出荷金額動向を図示化したものであり、市場動向として図1と同様、同じ方向の「風の流れ」の中で上昇・下降と変動している様子が理解できる。2010年と2007年を比較すると、出荷金額は2010年4,920億円、2007年8,370億円と60%程度にまで縮小しており、一方出荷数量は、2010年331万m2、2007年337万m2とほぼ同等になっている。


図3 シリコンウェーハ国内統計における出荷数量と平均単価(8”ウェーハ換算)動向比較

図3 シリコンウェーハ国内統計における出荷数量と平均単価(8”ウェーハ換算)動向比較


図4 シリコンウェーハ国内統計における出荷金額と平均単価(8”ウェーハ換算)動向比較

図4 シリコンウェーハ国内統計における出荷金額と平均単価(8”ウェーハ換算)動向比較


図3、4に平均単価(8"換算値)動向を図示化したが、2007年約7,800円に対し2010年は約4,700円と約60%まで減少している。このように金額市場を数量と平均単価に分けて分析することにより、2010年と2007年の出荷金額の差異を生んだ要因が平均単価であることを理解できる。  

また、図2〜4から出荷金額市場の主たる変動要因が2001〜2007年は数量の変動、2007〜2009年は平均単価の変動、2009〜2010年は再び数量の変動と、出荷金額市場の主たる変動要因がそれぞれの時期によって異なることも理解できる。 

今回、年(暦年)ベースで「出荷金額 = 出荷数量 x 平均単価」による市場分析アプローチを紹介したが、経済産業省のシリコンウェーハ国内統計は月別に出荷数量と出荷金額を公表しており、統計数値の組み合わせにより、(1)年度ベース、(2)四半期ベース、(3)月ベースなどの市場分析を行うことも可能である。

経済産業省のシリコンウェーハ国内統計は日本国内でのシリコンウェーハ出荷を対象とし、全世界ベースのデータはSEMIが発表している。これらのデータから、日本国内出荷の数量、金額は全世界ベースの60%弱となっている。ただし、数量は四半期ベースで公表しているが、金額は公表しておらず、SEMIからのデータ購入のみ入手可能である。また、全世界ベースのシリコンウェーハ市場においても、日本国内市場と同様な市場動向を見ることができる。

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」により、国内シリコンウェーハメーカーは影響を受けており、加えて東京電力および東北電力の計画停電によって更なる影響を受けることも想定される。2011〜2012年の日本国内出荷金額、出荷数量の予測を今回提示していない点、ご理解、ご了承願います。 

井上 文雄 アナリスト

参考資料
1. 経済産業省 統計ホームページ(シリコンウェーハは鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計中の確報:(2)製品月報 Excelファイルの非鉄金属に含まれる)
2. 国際通貨基金(International Monetary Fund-IMF) ホームページ
3. 世界銀行(World Bank) ホームページ
4. 国際半導体製造装置材料協会(Semiconductor Equipment and Materials International-SEMI) ホームページ
5. 半導体産業における「風を読む」VI〜2011年MPU、DRAM、NAND メモリの数量動向
6. 半導体産業における「風を読む」V〜2011年半導体ファブの生産能力
7. 半導体産業における「風を読む」IV〜2011年のシリコンウェーハ出荷面積の動向
8. 半導体産業における「風を読む」III〜半導体製造装置市場動向
9. 半導体産業における「風を読む」II〜GDPと半導体市場との相関関係から導く
10. 半導体産業における「風を読む」I>

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