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TSMC魏会長曰く「ライバルにはチャンスを与えず、可能なビジネスはすべて掴む」

台TSMCは10月15日に、2026年第3四半期決算説明会を開催し、連結売上高は前年同期比50.9%増、前四半期比17.6%増の1兆4942億4000万台湾ドル、純利益は前年同期比68.7%増、前四半期比8.0%増の7630億6000万台湾ドルに達したと発表した。純利益は6四半期連続で過去最高を更新し、AI関連需要の継続的な需要増加の恩恵で、絶好調である。2026年通期の売上高は、前年比44%増(米ドル基準)を見込んでいるという。決算結果の詳細については、多数のメディアが伝えているので、ここでは、TSMC会長兼CEOの魏哲家(C.C.Wei)氏(図1)の挨拶と機関投資家との質疑応答の主要な部分を筆者のコメントと共に紹介しよう(参考資料1)。

図1 TSMC会長兼CEOの魏哲家(C.C.Wei)氏

図1 TSMC会長兼CEOの魏哲家(C.C.Wei)氏

ライバルにはチャンスを与えない

魏哲家氏は、挨拶の中で、「世界中のAI関連企業はすべて当社の顧客になっており、AI業界の様子は手に取るようにわかるから、顧客の需要に従って当社は世界規模で生産拡大している。ライバルにチャンスを与えるつもりはなく、可能な限りのビジネスはすべてつかむ」と述べ、いつも以上に強気な姿勢を見せた。

筆者コメント:上記の魏哲家氏の発言の「ライバルにチャンスを与えるつもりはない」は、本人が英語で発言したままを記すと“We have no intention to leave food on the table for others, and 〜.”である。直訳すると、「他人のための食べ物を食卓に残すつもりはない。」 ファウンドリ市場シェアが7割を超えてさらに増加傾向のTSMCにとって、もはやライバルなど眼中にはないということだろう。


数年以内に世界中で20のファブを建設

Q(アナリストからの質問):TSMCの生産拡大方針は?
A(魏哲家氏の答え):今後数年以内に世界中で20のファブを建設し、そのうち13ファブを台湾で建設する。需要調査の一環として、米国でのデータセンターの構築の進捗状況を確認するために独自の調査チームを米国に派遣し、米国の電力供給状況なども含めて調査しているが、 これまでのところフィードバックは良好である。クラウドサービスプロバイダ(CSP)は十分にデータセンターの新設や増設準備を整えていることを確認できた。TSMCは、様々な市場需要調査に基づいて生産能力増強計画を立て、需要を満たすための設備投資を強化している。AI需要は当分の間、増加傾向にあると判断している。


アリゾナに次いでテキサス進出を検討開始

Q:米国での生産拡大計画は?
A:米国での生産拡大について、アリゾナ州では、2番目のファブ(TSMC Fab21 P2)建設が完了し、現在、設備の搬入と設置作業を進めており、2027年第3四半期に3nmプロセスを用いた量産を開始する予定で、従来計画よりも若干の前倒しとなる。米国の大口顧客向けに米国での生産能力拡大に注力しており、米国政府からも米国での生産能力増強の要請を受けている。そこで最近、アリゾナ州以外での事業規模拡大の検討を開始し、テキサス州にすでに評価検討チームを派遣した。イーロン・マスク氏の率いるTerafabとの協業についても話し合いを進めており、その生産能力を活用できるかどうかも検討している。未だ協議中で結論は得られてはいないが、(一部で報道されているような)Terafabに協力する形ではなく、製造工場はTSMC自身が運営することを主張している。今日話せるのはここまでである。

筆者コメント:台湾半導体業界では「TSMCが米国の第2製造拠点としてテキサス州にファブ建設を計画している」とか「TSMCはTerafabと協業の交渉をしている」とのうわさが広まっていたが(参考資料2)、今回、魏会長はこれらが事実であることを認めた。一部のメディアは「TSMCはシンガポール経済開発庁とシンガポール進出の交渉をしている」(ただし、両者ともノーコメント)と報じているが、この件については機関投資家から質問が出なかったため、魏会長は言及しなかった。


GFとの技術提携は後工程サプライチェーン戦略強化の一環

Q:先般発表されたGlobalFoundries(GF)との技術提携の目的は?
A:後工程サプライチェーンにおける全体戦略の一環としての提携である。TSMCの最優先事項は、顧客がそれぞれの市場で成功できるよう支援することであり、現在、顧客は、前工程のみならず、後工程を含むすべての面で完全なサポートを望んでおり、後工程の不足を補うことを目的に提携を決めた。」

筆者コメント:TSMCは10月8日、GFが、TSMCのCoWoSパッケージングエコシステム向けシリコンインターポーザの米国拠点での供給体制を確立することを目的とした製造契約を締結したと発表した。GFのニューヨーク州マルタ工場でのシリコンインターポーザ量産開始は2028年前半の見込みである。TSMCは、米国アリゾナ工場で先端パッケージングを提供する準備を進めているが、今回のGFとの提携で米国内でのシリコンインターポーザの入手先を確保したことになる。


2027年に2nmは生産倍増、1.4nmの試作も開始へ

Q:N2(いわゆる2nm)プロセスの量産状況は?
A:2025年第4四半期より量産を開始し、良好な歩留まりが実現され、生産量を順調に拡大している。スマートフォン(iPhone 18シリーズ)、HPC/AIからの需要に支えられる形で新竹と高雄の両拠点で複数段階に分けてファブ増設を実施しており、N2ファミリ技術の年間生産能力は2027年には2倍以上になるという見込みである。さらにその先のA14(いわゆる1.4nm)技術の生産準備も進めている。リスク生産は2027年に向けて順調に進んでおり、量産も2028年より開始予定である。


3nm増産のため台湾、米国、日本に新工場

Q:現在最も生産額の多いN3(いわゆる3nm)プロセスでの増産対応は?
A:N3技術に対する堅調な複数年にわたる需要を支えるため、台湾、米国、日本で新たに3つのファブを建設している。台湾では、台南科学園区の新ファブが2027年前半に量産開始予定のほか、台南の新ファブが2028年前半より量産開始を予定している。日本では、JASM第2工場(TSMC Fab23 Phase2)の計画が順調に進んでおり、2028年末からの量産開始を予定している。

筆者コメント:経済産業省は10月16日、TSMCの熊本第2工場におけるN3世代製造計画を補助金対象として認定したと発表した。従来、同工場では6〜12nmプロセスを採用する予定であったが、2026年2月に3nmへと計画の変更を表明。これに伴い、当初計画の月産4万8000枚から、当面は生産枚数を月産6000枚に絞り、投資額も減らすとしている。3nm初期生産量の大幅削減の理由は明らかにされていないが、いずれ2nmプロセスでの生産を考慮しているのではないかとの憶測が一部には出ている。

参考資料
1. TSMC2026年第3四半期決算説明会資料、財務報告 -2026Q3、(2026/10)
2. 服部毅、「TSMCが米国の第2製造拠点としてテキサス州に6棟のファブ建設を計画か?」、マイナビニュースTECH+、(2026/10/01)

Hattori Consulting International代表/国際技術ジャーナリスト 服部 毅

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