サイプレス、パワーMOSFET4個内蔵のマイコンを開発、LED照明を1チップで制御

逆にサイプレス側から見ると、従来から力を入れているアナログ回路・デジタル回路をプログラムできる8ビットマイコンであるpSoC（programmable system on chip）にLEDドライバ回路とパワーMOSFETを集積したプログラマブルマイコンはなかった。簡単なコントローラにパワーMOSFET4個を集積することで部品コストは1チャンネル当たり1ドル安くなると、日本サイプレス営業本部長の吉澤仁氏は見積もる。このチップは4チャンネル分を集積しているので4ドル安くなる。

pSoCは、チップをユーザーに納入してからでもユーザーはツールを使ってプログラムで機能を変更できるデバイス。プログラム可能なアナログ回路にはADC/DACはいうまでもなく、アンプやコンパレータ、アナログMUXなどユニークな機能も搭載している。出荷を始めて以来この4年間に累計で5億個を出荷したとしている。今回、この8ビットマイコンに、4チャンネル分のパワーMOSFETとそれを駆動するドライバ回路を集積した。LED照明に使う場合の外部電源は16〜32V単一電源。内部に降圧用のスイッチング電源を集積しpSOC回路を5Vで動かす。

LED照明を駆動するときの回路図　黄色でくくった部分を1チップに集積した

pSoCによってLED照明をユーザーが好きなように調光できるようになる。交流のサイリスタによる調光と同様に、PWM（パルス幅変調）で輝度の調光は言うまでもなく、光の色合いまでも調整できる。これまでの白色ランプや蛍光灯とは大きく違い、照明光の色合いまでも調整できるという機能は、照明デザイナーや建築家にとって設計の自由度が増えるという利点がある。LEDの色合いは、R(赤)、G(緑)、B(青)それぞれの強度を変えることで調光する。今回はR,G,Bに加え、アンバー色（橙色に近い）のLEDも追加して色度図の範囲を広げ、色表現を豊かにしようという要求から4チャンネルにした。調光には16ビットの分解能でPWM制御する。

パワーMOSFETの能力は耐圧32V以上、電流容量1Aである。照明用には300~700mAの電流を流すことが多く、例えば7個のLEDを直列につなぐと、1個当たりの電圧ドロップは3〜4Vあるため21〜28Vにもなる。LED照明用とでは例えば7個直接接続したR、G、Bをそれぞれ並列に並べて光らせる。4チャンネルではさらにアンバー色のLEDを7個直列接続したものをR,G,Bの色列に並列に並べる。

プログラマブルにLEDを駆動できるこのPowerpSoCは、チップを売るというよりもLED照明の設計に使うため、開発ツールも充実している。これまでのpSoC開発キットであるPSoC Designerのライブラリに、パワーMOSFET関係の項目を増やし、PowerPSoC開発キットとして用意した。この開発キットには2種類あり、それぞれCY3268デモボードと、CY3267評価キットと名付けた。

CY3268デモボードはスターターキットとして、外部電源12V、電流容量300mA、4本の独立チャンネル、大きさ2.5インチ×3.5インチで、4つのチップの裏に放熱板を設けている。基板の1辺にタッチセンサー用のボタンを5個用意しており、従来のPSoCでよく使われていたタッチセンサー機能で操作できるようにしている。価格は60米ドル。

本格的な開発キットのCY3267エバキットは32V/1A動作が可能で、10WのLEDをサポートする。コントローラ用のマザーボードと、LEDと温度センサーを載せたドーターボードからなる。I2Cインターフェースを利用して温度センサーからの測定データをコントローラであるマザーボードへ送り、定電流になるように制御する。LED照明だけではなく、リレーやスイッチなどの応用にも使える。価格は175米ドル。

現在、入手可能なPowerPSoCには3チャンネルと4チャンネルのチップがそれぞれ3シリーズある。いずれも7mm角の56ピンQFNパッケージに収容。