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新応用を切り拓くパワーマネジメントIC〜EuroAsia (4)

パワーマネジメント(PM)ICと呼ばれるようになった電源用のIC。たかが電源と侮るなかれ。大きなビジネスチャンスを失い、アナログ技術も失う。このほどシリコンバレー(図1)で、AC-DC電源の1次側と2次側の制御ループを分離する賢いICや、スマート照明に対応できる調光範囲を広げたIC、全てのワイヤレス充電規格に合うICなど、新しい応用を切り拓くPMIC技術が続出した。

図1 アジアと欧州からの記者が集まったEuroAsia 2014

図1 アジアと欧州からの記者が集まったEuroAsia 2014


AC-DCコンバータ、いわゆる電源用ICを得意とするPower Integration社は、フォトカプラを使わずに1次側と2次側の制御ループを分離するICを開発、外部部品を減らし低コストの電源を作製できるスイッチングレギュレータIC(図2)を開発した。このICを使えば、1次側85V〜240Vの交流電圧から2次側に5V/2A出力の直流電圧を作り出す時の外付け部品数が従来60個あったものが、これを30個に減らすことができるというもの。電源回路のコストを下げることができる。


図2 リードフレームを電源コイルとするPMICのパッケージ 出典:Power Integration

図2 リードフレームを電源コイルとするPMICのパッケージ 出典:Power Integration


AC-DC電源では一般に、トランスの2次側の出力変化を検出し、1次側のパワーMOSFETのゲート回路にフィードバックをかけ出力電圧が一定になるように調整する。1次側が85〜240Vと高く、2次側は5Vと低いため、従来はフォトカプラなどで分離することが多かった。フォトカプラを使わない場合には、トランスの2次側にもう一つのコイルを巻き、タップ電圧を取り出していた。いずれも部品点数が増え、ユーザーのコストがかさんでいた。


図3 Cu製リードフレームの形状でコイルを作る 出典:Power Integration

図3 Cu製リードフレームの形状でコイルを作る 出典:Power Integration


Power Integrationのチップは、なんとリードフレームの形状をコイルとして使おうというもの(図3)。リードフレームだからコイルの巻き数は1回きり。これでは分離できるほどの大きなインダクタンスは得られない。そこで大電流パルスを1度流して、磁束を発生させ2次と1次を結合させる方法をとった。同社はこの技術をFluxLink技術と呼んでいる。すでに2社のスマートフォンメーカーに納入しており、内1社は中国のスマホメーカーだとしている。UL、TUV、中国のCQC Chinaの規格認定も取得しているという。

やはりパワーマネジメントに強いDialog Semiconductorは、LED照明用のLEDドライバを設計してきたが、これからのスマート照明を念頭に入れた調光システムを進めている。同社のSmarteXite調光技術は、調光の範囲が1~100%と広く、オン/オフのデジタルスイッチで調光する(図4)。通信のインタフェースを用意しており、複数のプロトコルをサポートするだけではなく、無線で明るさを調整できる。例えば、スマートフォンに調光用のアプリを入れておけば、スマホからBluetooth Smartを使って調光できる。


図4 iW6401を使ったワイヤレス調光回路の例 出典:Dialog Semiconductor

図4 iW6401を使ったワイヤレス調光回路の例 出典:Dialog Semiconductor


加えて、デジタル方式の調光なので、インタフェースを使ってソフトウエアでカスタマごとに仕様を変更できる。例えば、GUIをもっとユーザーフレンドリにするといったカスタマイズを行う。SmarteXite調光技術を採り入れた半導体チップ、iW6401は、シングルチップのコントローラで、LED照明ランプをプログラムできる。


図5 調光範囲の広いLED照明ICを搭載したDialogのモジュール

図5 調光範囲の広いLED照明ICを搭載したDialogのモジュール


Dialogは、暖色系や自然光に近い光を放つLEDドライバも開発している。このiW3600シリーズは、2チャンネルのドライバを持ち、色のミキシングができる。外付けのMCUが不要なので、部品コストは安いとしている。

また、IDTは、タイミング用のICに強いが、得意とする高速技術を生かし、ワイヤレス充電技術にも乗り出している。特長的なことは、全てのワイヤレス充電規格に対応することだ。ワイヤレス充電では、Qi規格を提供するWPC(Wireless Power Consortium)や、Samsung MobileとQualcommが立ち上げた無線充電の団体A4WP(Alliance for Wireless Power)の規格、さらにはQualcommの独自規格Wireless 2.0にも対応する。


図6 全てのワイヤレス充電規格に対応するIDTのチップ 出典:IDT

図6 全てのワイヤレス充電規格に対応するIDTのチップ 出典:IDT


IDTはWPCとA4WPのボードメンバーであると同時にPMA(Power Matters Alliance)ともパートナーシップを結んでおり、この規格にも対応する予定だ。IDTはこれらの団体の規格には、製品ごとに対応する。例えば、Qi規格は電磁界結合を使い、A4WPは磁気共鳴を利用するが、製品を別に提供する。ただし全ての製品にマイコンを搭載しており、充電したいスマホや携帯電話機がどちらの規格に合っているかを内蔵マイコンが自動的に判別する。

参考資料
1. スマホ向け10センサのハブLSI、RFアンテナチューナ〜EuroAsia (1) (2014/10/15)
2. 高集積は設計技術も困難に:設計ツール編〜EuroAsia(2) (2014/10/17)
3. 高集積は設計技術も困難に:設計技術編〜EuroAsia (3) (2014/10/24)

(2014/11/27)
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