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TSMCが2nmプロセスを今年後半に量産開始、1.4nmは2028年量産へ

ファウンドリ世界最大手TSMCの魏哲家董事長(C.C.Wei会長)は、4月17日の2025年第四半期業績説明会で「N2」(いわゆる2nm)プロセスを採用した先端ロジックチップを今年(2025年)後半、「A16」(1.6nm=16Å)を来年(2026年)後半に台湾域内で量産開始すると発表した(参考資料1)。さらには、米国の大口顧客の力強いAI需要に呼応して、米国のアリゾナ工場(図1)でも2/1.6nm製造棟(Fab21 Phase3)で近く建設開始すると発表した。その後、4月29日に、米国商務省のラトニック長官臨席の下で起工式が行われ、2030年までに生産を開始するという。

TSMCアリゾナ工場 / TSMC

図1 TSMC アリゾナ工場(Fab21):昨年末から一部で量産が開始されている。 出典:TSMC


N2、N2P、A16は今年後半から来年にかけて順次量産開始
TSMC 会長のC.C. Wei(魏哲家)氏は、今後予定されているN2の状況と A16の導⼊について、「エネルギー効率の⾼いコンピューティングに対する飽くなきニーズへの対応において業界をリードしており、世界中のほぼ全てのイノベーターが当社と協⼒(=製造委託)している。スマートフォンとHPC(高性能コンピューティング)アプリケーションの両⽅が牽引し、最初の2年間における2nmテクノロジの新規テープアウト数は、最初の2年間における3nmと5nmのテープアウト数を上回ると予想している」と述べた。

同氏は、N2について、「N3E(N3の第2世代版)と⽐較して、同⼀消費電⼒で10〜15%の速度向上、または同⼀速度で25〜30%の電⼒向上と、15%以上のチップ密度向上を実現し、ノードの性能と消費電⼒のメリットをフルに実現している。N2は、N3と同様の⽴ち上げプロファイルで、予定通り2025年後半の量産開始に向けて順調に進んでいる。継続的な機能強化戦略に基づき、N2ファミリの拡張としてN2P(N2の改良版)も導⼊する。N2PはN2に加えてさらなる性能と消費電⼒のメリットを備えており、量産は2026年後半に予定している」と述べた。

C.C.Wei会長は、A16について、「N2Pと⽐較して、同じ消費電⼒でさらに8%〜10%の速度向上、または同じ速度で15%〜20%の消費電⼒向上を実現し、さらに7% 〜10%のチップ密度向上を実現している。A16は、複雑な信号経路と⾼密度な電源供給ネットワークを備えた特定のHPC製品に最適である。量産開始は2026年後半を予定している」と述べた。

Intel支援のうわさをきっぱりと否定
Wei会長は、米国における1000億ドル追加投資に関して、すでに報道されているように、3つの先端ロジック前工程工場、2つの先進パッケージング(後工程)工場、1つの研究開発センターの建設に充てることを説明した。しかし、うわさされている米Intelファウンドリビジネス支援や合弁会社設立に関しては、「いかなる合弁事業、技術ライセンス供与、技術移転も他社と協議していない」と述べ、うわさをきっぱりと否定した。

TSMC米国アリゾナ州の3nm製造プロセスを採用する第2工場(Fab 21P2)は、建設がすでに完了し、顧客の需要に応えられるよう、量産の準備を急いでいると説明した。従来計画より2四半期以上早まる。2nmとA16プロセスを採用する第3工場(Fab 21P3)も、計画を前倒しして4月末に起工している。

最先端ロジックプロセス「A14」を突然発表、2028年量産開始
TSMCは、4月23日(米国時間)、米国カリフォルニア州サンタクララにて、TSMC 2025 North America Technology Symposium (2025年北米技術シンポジウム)(参考資料2)を開催し、次世代の最先端ロジック「プロセス技術14A」を発表した。17日に開催された決算説明会(参考資料1)で、Wei会長はA14について何も話さなかったので、シンポジウム参加者にとってはサプライズとなった。


TSMC

図2 TSMCの最新の微細化プロセス技術ロードマップ 出典 2025 TSMC North America Technology Symposium 2025年4月23日)


TSMCの「N2/A14プロセスの後継プロセスに位置づけられる「A14」は、より高速なコンピューティングと優れた電力効率を実現することで、AIによる変革を推進するという。また、スマートフォンのオンボードAI機能を向上させ、よりスマートなデバイスにすることで、その性能向上も期待されている。A14プロセスの開発は現在順調に進んでおり、歩留まりも予定を上回っているという。2028年に生産を開始する予定だとしている。
今年後半に量産開始予定のN2プロセスと比較して、A14プロセスは、同一消費電力で最大15%の速度向上、または同一速度で最大30%の消費電力削減を実現するとともに、ロジック密度を20%以上向上させるという。TSMCは、ナノシートトランジスタ(Gate-All-Around FET)の設計と技術の協調最適化における同社の経験を活かし、TSMC NanoFlex スタンダードセルアーキテクチャをNanoFlex Proへと進化させ、性能、電力効率、設計柔軟性の向上を実現するという。

TSMC会長兼CEOのCC Wei氏は、「顧客は常に未来を見据えており、TSMCの技術リーダーシップと卓越した製造力は、AIの未来を前進させるための顧客のイノベーションを解き放つ信頼できるロードマップを提供する」と述べている。

参考資料
1. 服部毅、「TSMCは2025年も好調が持続、通年業績はドルベースで前年比20%台半ばの伸びを予測」、マイナビニュースTECH+、(2025/04/21)
2. TSMC 2025 Symposium Highlights(動画)

Hattori Consulting International/国際技術ジャーナリスト 服部毅
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