ウェーハ面積が減少しても半導体製品の売り上げが上がる理由
2025年第1四半期(1Q)における世界の半導体ウェーハ面積は、前年同期比2.2%増の28.96億平方インチだったとSEMIが発表した(参考資料1)。1年前の24年1Qは28.34億平方インチだったからわずかに上昇した。しかし、前四半期比(QoQ)で見れば9.0%の減少である。中期的に見れば2022年3Qの37.41億平方インチというピーク値にはまだ届いていない。
図1 シリコンウェーハ出荷面積と前四半期比 出典:SEMIの数字をセミコンポータルがグラフ化
この数字からわかることは、IDM(垂直統合の半導体メーカー)やファウンドリを含めた半導体製造工場がウェーハをさほど投入していないということだ。しかもこれまでのピークだった2022年3Qレベルにまだ達していない。ウェーハ投入量が少ないのにも拘わらず半導体製品が好調な理由は何か、探ってみよう。
もう少し長期的な観点から見ると、図2のように半導体製品(オレンジ線)の販売額とウェーハ出荷面積(青の棒グラフ)とはほぼ歩調を合わせて2007年から2023年まではやってきた。つまり、ウェーハ出荷面積が増える(減る)と半導体製品の販売額も増えて(減って)いた。ところが、2024年になり突然この方向が変わった。ウェーハ面積が減ったのにも拘わらず、半導体製品の販売額(売上額)は増えた。

図2 ウェーハの出荷面積(青)と半導体製品販売額との相関 出典:WSTS、SEMIなどのデータを元にセミコンポータルがグラフ化
半導体製品は、やはりピークだった2022年の5741億ドルを軽く超え、2024年には6279億ドルに達した。つまり、少ないウェーハ面積の半導体でより多くの売り上げを上げた。このことは半導体の平均的な価値が上がったことに相当する。
この付加価値を上げたものは何か。ずばり、AIチップであり、さらに言えばNvidiaのGPU(グラフィックプロセッサ)チップだと言える。というのは、Nvidiaの売り上げは、社員数がそれほど増えずに売り上げを大幅に増やしたこと、チップを実装したカード(基板)の単価が新世代の製品ごとに大幅に上がったこと、Nvidiaの売り上げを除いた全世界の半導体の売上額は2024年には前年比マイナスだったこと、などがその理由だ。
つまりNvidiaだけが大きく成長し、それ以外の企業は成長しなかった。特に産業用の製品はいまだに回復していない。産業用と自動車用に注力していた企業、例えばルネサスエレクトロニクスやInfineon Technologies、NXP Semiconductor、Texas Instruments、STMicroelectronicsなど、は2024年の売り上げは2023年よりも少ない。これらの企業の半導体製品はもちろん価値の高いものだが、Nvidiaの製品はそれらよりもずっと価値が高かった。バブルといえるかもしれない。
参考資料
1. “Worldwide Silicon Wafer Shipments Increase 2% Year-on-Year in Q1 2025, SEMI Reports”, SEMI Press release, (2025/04/29)


