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企業向けSSDが3年後には個人向けを抜いて最大市場に

企業向けのAI推論用のSSD(半導体ディスク)は、AIの進展と共に成長しているが、2028年にはスマートフォンや消費者向けPCのSSDなどの分野を抜き、最も数量の出る分野に成長するとTrendForceは見ている。昨年から今年にかけて、HBM(High Bandwidth Memory)はGPU(Graphic Processing Unit)とセットで使われているが、NANDフラッシュもAIコンピュータのSSDに数量を伸ばしていきそうだ。

Bryan Ao, TrendForce

図1 TrendForceアナリストのBryan Ao氏 撮影:セミコンポータル


これは先月東京で開かれたTrendForceのイベントで同社アナリストのBryan Ao氏(図1)が明らかにしたもの。2024〜25年はAIブームで学習用のGPUとHBMに注目が集まっているが、AIは生成AIやエージェントAI、さらには物理AIなどへと進化し広い市場になることは間違いない。そしてこれらの学習が一段落すると、次は推論用のAIを作成しなければならない。学習で得られた結果(学習データ)をSSDに溜めておき、クラウドや企業内のオンプレミスなどで推論するためにSSDから学習データを引き出して使う。このためNANDフラッシュは今後大量に使われることになるという。

TrendForceの見込みは、2028年にはAIサーバやクラウド、オンプレなどでのSSDとして2028年には全NANDフラッシュの33%に達すると見ている(図2)。


AI Server will be Main Driving Force for Next Few Years / TrendForce

図2 NAND需要の予測 出典:TrendForce


NANDフラッシュ市場では、2023年にはスマホ向けの需要が多く33%を占めていた。次にパソコン用のSSDが25%と続き、企業向けの需要は18%しかなかった。ところが、AI需要が高まり2025年には29%には急上昇すると見ている。HPC(高性能コンピューティング分野)やAI/ML (機械学習)がストレージの需要をより高速のデータアクセスができるからだと見ている。従来のHDDではアクセスがどうしても遅くなるため、これから学習データをアクセスして推論するには向かなくなる。つまりAI需要によってSSDが求められるという訳だ。

技術的には、120層あたりからウェーハ同士を接合するウェーハボンディング技術にシフトし、200層以上のメモリセルになる(図3)と同時に、TLC(3レベル/セル)からQLC(4レベル/セル)構造に移行するとTrendForceは見ている。これまでのNANDフラッシュではTLCが主流だったが、2023年に15%だったQLCが25年には22%にまで上昇している。


Technology Roadmap: Mainstream Shits to 2XX-L Processes Slowly in 2025 / TrendForce

図3 各社のテクノロジーロードマップは200層以上の方向に向かっている 出典:TrendForce


特にSamsungは2026年には286層でQLC製品を推進し、QLCの比率は25%にも上るようになる。

また中国のYMTCは、中国内での市場シェアを拡大しており、30%から今年は40%に広げそうだとしている。世界的にも2024年に7.4%のシェアからMicronを抜いて11.8%のシェアに届くとTrendForceは予想している。

中国ではNANDフラッシュの需要は従来のスマホが縮小していき、企業向けサーバでの需要が拡大しつつある。2021年にはスマホ用が50%シェアで、企業向けが14%しかなかったが、2025年には、スマホ用が41%、サーバ用が21%へと拡大すると見ている。

(2025/05/08)
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