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3月もTSMCは好調の一方で、家電民生はフラットが続く

台湾の主要電機電子企業の3月の月次売上額が発表された。これにより1〜3月の売上額を求めることができる。TSMCの速報値は前年同期比41.6%増の8392億台湾元(約3兆8000億円)と好調が持続している。またAppleなどの製造を受け持つ鴻海精密工業は同24.2%増の1兆6421億元(約7兆2000億円)となった。アジアではベトナムがデジタル化計画を発表、5年後に従業員の3割までデジタル人材を増やす。

TSMC売上額の推移

図1 TSMCの月次売り上げは増加傾向にある 出典:TSMCのデータを元に筆者がグラフ化


TSMCの3月における売上額は、前年同月比(YoY)46.5%増の2859.57億元だが、YoYでの増加率は1月35.9%増、2月43.1%増と今年に入り毎月増え続けている。1〜3月期の合計は8392.5億元となる。

TSMCに対してUMCの売上額は、TSMCのそれに比べて1桁小さく、YoYで1月4.2%増の198.07億元、2月4.3%増の181.94億元、3月9.3%増の198.59億元となった。1~3月期は578.6億元となり、わずか5.9%増に留まる。UMCは液晶モニター用のドライバICやTV用ICなど民生用の半導体を主に製造しているが、成長著しいAI関係はほとんどない。それも最先端プロセスが22~28nmプロセスで、売り上げの34~35%程度生産しているが、14nm以下のプロセスは皆無である。UMCの業績を見る限り、パソコンやテレビなどの民生用半導体はまだゆっくりとした回復で、ピークだった2022年8月の253億元にはまだ遠い。

EMS(電子機器の製造請負業)トップの鴻海は、3月にYoY23.4%増の5521億元であったが、毎月の季節変動が大きく、2月はYoY56.4%増の5514億元だが、1月はわずか3.16%増の5387億元であった。1〜3月期では、24.2%増の1兆6422億元となっている。3月はやはりクラウド、ネットワーク、コンピュータは好調だが、スマート家電はほぼフラットで1〜3月では同様にフラットだったとしている。


韓国のSamsungは2025年1〜3月の営業利益はYoYでフラットだった。今後は冷蔵庫などの白物家電にAIを導入したモデルを3倍に増強するとしている。Samsungの2025年第1四半期の決算は今月末に発表される予定だが、4月9日の日本経済新聞によると、8日に連結決算の速報値として売上額はYoYで9.8%増の79兆ウォン(約7兆9000億円)と過去最高だが、営業利益はYoY0.2%減の6兆6000億ウォンとなった。部門別の売上額や営業利益は発表していないようだ。


ベトナムの民間銀行最大手のテクコムバンクが5年後に全従業員の30%までデジタル人材を増やす、と11日の日経が報じた。取引の9割以上をデジタルに移行し、AIを使って顧客ごとに最適化したサービスを提供するという。同行CEOのイェンス・ロットナー氏とのインタビュー記事では、2020年に500〜600人程度だったデジタル人材は、現在1万2000人の全従業員のうちの2000人まで増えたとしている。全体の2割弱であるが、これを5年後に3割まで引き上げるとしている。

「AIは全世界で現在がスタート地点である」とNvidiaのJensen Huang CEOは述べており、日本もベトナムと同じスタート地点にある。AIやデジタル化を速く進めなければ日本だけが置いてきぼりになる。Huang CEOは「日本の得意なモノづくり(製造業)にAIを導入すれば、世界を圧倒的にリードする国になれる」と述べており、自動車製造やロボットなどにAIを導入し賢いモノづくりを早く進めたらどうか、と示唆している。日本のAIやデジタル化が待ったなしの状態である。

(2025/04/14)
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