台湾主要19社の2月売上額、YoYで43.7%増、AIデータセンター以外も好調
先週は、半導体の経済指標を示す台湾のIT/半導体の主要企業19社の2月の売上額が示され、前年同月比(YoY)で43.7%の増収があった。また世界半導体の1月の販売額が同17.9%増を示した。Intelの製造をTSMCなどが出資するという話もある。グーグルがロボットに生成AIを導入したというニュースがあったが、ロボットが自律的に動くようになる。日本のラピダスの売上額がまだ立たないため、今後の出資に官民の動きに注目が集まっている。

図1 昨年12月に量産稼働開始したTSMCの熊本工場JASM 出典:TSMC
台湾のIT/半導体の主要19社の2025年2月の売上額合計が前年同月比43.7%増の1兆3770億台湾元(約6兆1000億円)だった。内17社が増収、2社が減収だった。TSMCが43.1%増だったのに対してUMCは4.3%増しか増えなかった。TSMCはNvidiaなどAIデータセンター向けが好調で、同様にAIデータセンター向けのコンピュータを生産しているEMS(電子機器の受託製造業)の鴻海精密工業や広達電脳はそれぞれ56.4%増、78.6%増と大きく成長したが、パソコン生産主体のペガトロンやコンパルはそれぞれ24.4%増、17.4%増だった。中国が生産の中心である液晶パネルの生産では友達光電が24.1%増、イノラックスは33.4%増とパソコンが回復しつつある気配を示している。
TSMCは今後も生産が増えることを見込んで25年に8000人の人材を台湾で採用する、と11日の日本経済新聞が報じた。修士卒の新人エンジニアの平均年収は220万台湾ドル(約980万円)に達するという。国際的な人材を採用するため、英語・日本語人材などを対象にオンラインの就職説明会も開く。TSMCの正社員数は23年時点で約7万6000人、19年に比べ49%増えている。台湾では、国立の台湾大学や清華大学など有名校の人気企業トップがTSMCになっている。
IntelのCEOがCadence Design Systems社のCEO/会長を務めたLip-Bu Tan氏に決まったが、Intelは特に製造部門の赤字が大きい。この部門の強化案として、TSMCがNvidiaやAMD、Broadcom、Qualcommにも出資を要請する案を持ちかけたとロイター通信が報じ、13日の日経も報じた。ただしTSMCらは50%を超える出資(株式保有)はしないとしている。最終的な取引にはトランプ政権の承認が必要で、同政権もIntelそのものや同社の製造部門を外資が完全保有することを望んでいないという。
米SIA(半導体工業会)が発表した1月の世界半導体販売額は、前年同月比17.9%増の565億2000万ドル(約8兆3000億円)となり、1月としては過去最高となった。AIデータセンターが景気を先導していることもあり、米国の販売額が同50.7%増の195億4000万ドルとなった。米国以外の地域はまだ1桁パーセント増にとどまり、AIデータセンター以外の景気がまだ回復していない様子を映している。
Googleが生成AI「Gemini」を組み込んだロボットを試作した、と14日の日経が報じた。人間が「バスケットボールを拾ってダンクシュートして」と声で指示を出すと、ロボットアームが小さなボールを持ち上げ、おもちゃのゴールに入れた、というデモ動画を見せたという。AIを導入しない従来のロボットは、プログラムした動作以外は行わないが、自律的に動くようにするため、生成AIを使った。予めAIでおもちゃのゴールやバスケットボール、ダンクシュートなどを学習していたために対応できた。ロボットに生成AIを導入するとロボットはもっと賢くなり、人間の動作に一歩近づく。
ラピダスに巨額の国費が使われることを懸念した記事も出てくるようになった。2025年度の予算案が議会を通過する見通しとなり、ラピダスへの政府出資が実現しようになってきた。さらに民間の金融機関が融資に対して政府の債務保証を付ける法改正も見込まれるようになった。これまでの補助金は9200億円に上るが、今期の予算案ではラピダスへ1000億円を出資する。現在は、民間企業8社からわずか73億円しか出資されていないため、「お付き合い」の金額とも言われている。政府は民間からも今回の政府出資と同額である1000億円の追加出資を見込む。最もまだ売り上げが1円もたっていない状況では、試作品もなく出資する企業が出てくるかまだ見通せない。