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MediaTek、ルネサスの決算報告などから力強い市況回復期に突入

パソコンやスマートフォン、産業機器、自動車など、データセンター以外の半導体市場は、ようやく底を打ち、回復に向かい始めたようだ。先週、MediaTek、ルネサス、AMDなどの決算発表からわかった。また国内の半導体も産総研の社会実装計画として量子コンピュータをはじめ、ラピダスへの銀行融資も実現が見えてきた。米国ではTSMCが初めて台湾以外で取締役会を開催することになった。

Project DIGITS

図1 NvidiaがMediaTekと共同で開発したチップ「GB10」を搭載したデスクトップスパコン「Project DIGITS」


MediaTekの2024年第4四半期(4Q)における売上額は1380億元(1米ドル=32.5台湾元)となった。1年前の前年同期比で6.5%増だが前期比では4.7%増となり、少しずつ回復している様子がわかる。年間売り上げは前年比22.4%増の5305.9億ドルとなり、半導体企業平均が18〜19%増のようなので、やや上程度の伸びしかない。

しかし、次の2025年1Qの予想では、1408〜1518億台湾元と見込んでおり、回復傾向は確実だ。MediaTekはスマホ事業が主力ではあるが、それ以外の成長産業としてHPC(高性能コンピューティング)にも力を入れており、今年のCESではNvidiaと共同で新しいデスクトップスーパーコンピュータ「Project DIGITS」(図1)の中心チップ「GB10」を開発した。また昨年のComputex Taipei 2024ではSDV(ソフトウエア定義のクルマ)をNvidiaのJensen Haung CEOと一緒に議論していた。ポストスマホの道を探っている。

ルネサスエレクトロニクスが発表した24年4Q決算では、売上額が前年同期比19.2%減、前期比15.3%減の2926億円と減少したが、営業利益率22.5%は確保している。1年間の通期では前年比8.2%減の1兆3485億円になった。しかし、柴田英利CEOは、ようやく底を打った感じがすると決算報告会で述べている。25年1Qの見通しは、前年同期比はまた12.2%減と回復していないが、前四半期比では、5.6%増の3090億円と見積もっている。やっと前四半期比でプラスの回復基調に入ると見ている。例年、4Qよりも翌年1Qの方が売り上げは下がるのだが、1Qの方が多いとのことから力強い回復になっていると言えそうだ。

AMDが発表した24年4Qの売上額は前年同期比24%増の76億5800万ドル(約1兆1800億円)、純利益が28%減の4億8200万ドルだった。生成AI用のデータセンター向けGPUが前年同期比で69%増の38億5900万ドルと大きく伸びたが、期待よりも少なかったという。それでも25年1Qは前年同期比30%増の71億ドルと見積もっており、アナリストたちの予測を上回っている。

2月5日の日本経済新聞によると、経済産業省は最先端の量子コンピュータの技術開発や産業育成におよそ1000億円を拠出するという。産業技術総合研究所が茨城県のつくば市にある量子コンピュータの研究拠点などへ2027年度までに1000億円を拠出する。この拠点では富士通や米スタートアップなどの複数の量子コンピュータを導入する。

産総研は米Intelと量子コンピュータを共同で開発する、と6日の日経が報じた。Intelのチップを使い拠点で実装、次世代機を開発する。茨城県つくば市で今春に稼働する産総研の量子研究センターとIntelが協力覚書を交わしたとしている。

ラピダスへの資金として北海道の北洋銀行が最大50億円を出資する方向で調整していると6日の日経が報じた。これまでも三井住友銀行など3メガバンクも最大で各50億円を出資する方針である。銀行から合計で200億円が出資されることになる。当初の資本金が73億円しかないため、銀行からの出資により取締役が派遣され、財務状況をしっかり見ることになる。これまでファウンドリの新工場完成では1プロセスでも最大2兆円程度だったが、昨春に突然5兆円という数字が上り、その根拠が不明のまま、報道が過熱している。

5日の日経は、TSMCがこれまでの台湾ではなくアリゾナ州で取締役会を開くことになったと報じた。12日に開催するが、これまでの取締役会は3日間かけて行い、3日目が取締役会となっている(林宏文著「TSMC世界を動かすヒミツ」による)。同書によると、初日の夜はモーリス・チャン氏主催のディナーで、この席で取締役会の議題を説明し、各取締役に内容を理解してもらう。翌日は監査委員会と経営陣の業績を評価する給与報酬委員会が開催され、3日目に取締役会が開かれる。海外にいる取締役などの役員は全て台湾に集まる。ただ、アリゾナでの取締役会でも同じような会合になるかどうかについて日経は報じていない。

(2025/02/10)
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