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メモリ企業Micronの最新業績から、見えてくる景気動向

米Micron Technologyの2024年度第4四半期(2024年6〜8月期)の業績が日本時間26日に発表された。これによると、売上額は前年同期比93%増の77.5億ドルとなった。営業利益も同利益率19.6%の15.2億ドルとほぼ復調した。またキオクシアが東京証券取引所への上場時期を11月以降に延期すると25日の日本経済新聞が報じた。

Micronの収益

図1 Micronの売上額と営業利益の推移 出典:Micronの発表数字をグラフ化したもの


Micronの売上額は前四半期比では13.8%増となるため、順調に回復していると言えそうだ。営業利益は、GAAP(米会計基準)では利益は15.2億ドルだが、半導体企業特有の基準となるNon-GAAPでは利益率22.5%の17.5億ドルである。MicronのCEOであるSanjay Mehrotra氏は「2025年度はMicronにとって最高の年になるだろう」と述べている。

着実なAI需要がけん引するデータセンター向けDRAMやHBM(High Bandwidth Memory)だけではなく、やはり「データセンター向けのSSDの販売によりNANDフラッシュの売り上げが四半期に初めて10億ドルを突破した」とMehrotra氏はNANDフラッシュの回復を示唆した。

SK hynixの後を追いながらHBM-3Eを開発してきたMicronは、DRAMダイを8枚積層したHBM3E 8-highの24GB製品から、12枚積層するHBM3E 12-high製品を開発中で、容量を50%増加させながら消費電力を20%削減しているという。HBM3E 12-high製品は25年前半には市場に投入するとしている。

NANDフラッシュもデータセンター向けだけではなく、今年後半から出荷が増えてきたパソコン向けに2025年春までには回復から成長へと向かうと見ている。パソコンはAI PCやWindows 12への買い替え需要が見込まれており、25年には成長が期待されている。Micronはさらに自動車向けのNAND製品にも力を入れており、インフォテインメントやADAS(先進ドライバーシステム)によってストレージシステムの容量を増やす方向にあると見ている。

この結果、次四半期(9〜11月期)の全社売り上げ見通しを87億ドル±2億ドルと見込んでいる。


キオクシアは、東証市場への上場を従来の10月から11月以降に延期するが、日経によると、「半導体株が世界的に軟調に推移するなか、上場後の時価総額が目標の1兆5000億円超に届かないと判断した」ためだという。

しかしこの所、半導体株価は急速に上昇しており、その結果、半導体企業の時価総額は上昇傾向にある。企業の時価総額ランキングによると9月30日時点で、Nvidiaは10日前と比べて同じ3位だが2.976兆ドルと1310億ドルも高い。TSMCも同様で同じ9位ながら9230億ドルと200億ドル以上も高い。さらにASMLは29位から28位へ上昇し3325億ドル(+200億ドル)、AMDも39位から37位に上昇し2660億ドル(+140億ドル)、Applied Materialsも93位から88位へと順位を上げ1689億ドル(+104億ドル)と半導体企業の株価は軒並み上がっている。唯一順位を69位から73位に下げたQualcommでさえ、プラス15億ドルの1895億ドルとわずかながらプラスになっている。

半導体株が軟調という見方は当たっていないようだ。確かに10日前は下がっていたが、現在はすでに上がっているため、半導体株価市況はむしろ上昇傾向にある。半導体だけではなくIT全体の株価が上昇傾向にある。キオクシアもデータセンター向けのNANDフラッシュを手掛けており、この波に乗れるはずである。11月以降と言わずもっと早期に上場する方がよいのではないだろうか。


AI活用事例として日立製作所とNvidiaの協働プロジェクトが発表された。鉄道のレールや車両、架線、信号機などをカメラなどのセンサで状態をリアルタイムにモニターすると同時にデータ処理も行い、アセットの状態をリアルタイムで監視するシステムを両社が共同で開発した。NvidiaのハードウエアOrinとその周辺ソフトウエア、およびセンサデータを処理するNvidia のHoloscanソフトウエアを用いてAIで即座に判断できるシステムとなる。以前は、メンテナンス拠点でデータが処理されるまでに最大10日間かかったこともあったという。

(2024/09/30)
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