2024年の世界半導体製造装置は10%成長したが、買い集めた中国によるもの
2024年における世界の半導体製造装置販売額は、これまでの予想を覆して23年の1062.5億ドルから前年比10%増の1170億ドルになっていたことがわかった。これはSEMIが、SEAJのデータも含め、世界の半導体製造装置市場を調べた結果である。
表1 2023〜2024年の半導体製造装置 出典:SEMI
これまでSEMIは2024年の世界半導体製造装置市場を2回発表していた。1回目は7月のセミコンウェストの時で、前年比3.4%増の1094.7億ドルであり、2回目は24年12月のセミコンジャパンで発表した同6.5%増の1128億ドルであった。そして今回、同10%増の1170億ドルとなり、発表するたびにその金額と成長率は増大している。
なぜこうも予測が違ってきたのだろうか。AIデータセンターの急成長のような景気を示す要素ではない。今回のSMEIの発表にあるように、中国である。中国が2024年の成長率が前年比35%増の495.5億ドルと最も大きい。同じアジアの韓国は同3%、台湾では-16%とマイナス成長だった。
中国市場は活況か?全くその逆で、中国市場に期待して投資してきた国々はことごとく惨敗していった。自動車でさえ売れない。特にEV(電気自動車)ではVW(フォルクスワーゲン)やBMWなど中国工場を持ち、かなり深入りしていた企業は人員を削減するほど悪かった。片や中国市場にそれほど力を入れていなかった北欧のボルボは、EVへの力をますます強めている。EVでは中国国内は全く売れないと言っていいほど悪い。スマートフォンやパソコンなども悪い。中国市場は良くない。
にも拘わらず半導体製造装置が売れた理由は、米中貿易の不均衡で生じた動きのせいだ。つまり、半導体製造装置を使って作るべき半導体チップの需要があるわけではない。米国は中国に対して、先端技術の輸出を禁じており、製造装置も同様で、先端半導体用の装置は禁止、やや遅れたプロセスの装置ならOK、としていた。しかし、トランプ政権が2024年11月に決まってから、先端ではない製造装置も禁止される可能性が出てきた。
そこで中国側は、半導体チップの需要があるわけではないのに、米中蘭の製造装置を買い漁った。今のうちに買ってしまえ、という訳だ。もし、中国が24年も23年と同じ金額しか製造装置を買っていなかったら、その差は129.5億ドルもある。世界市場全体では1041.9億ドルとなってしまい、むしろマイナス成長となっていた。
では今年はどうか。中国市場向けの製造装置は実は徐々に減らしてきている。特に米国のApplied Materialsは中国向け売上比率をピーク時の45%から直近で31%まで落としている。東京エレクトロンはピーク時50%から43%にしか減っておらず、チャイナリスクを残したままになっていることが気になる。


