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最新の世界ファブレス半導体ランキング、AI関連企業が急伸

2024年のファブレス半導体のトップ10ランキングが発表された。これは市場調査会社のTrendForceが発表したものだが、1位は言うまでもなくNvidiaであり、2位Qualcomm、3位Broadcom、4位AMD、5位MediaTek、6位Marvellまでは前年と順位は変わらない。トップ10社合計の売上額は前年比49%増の2498億ドルとなった。

図1 2024年世界ファブレス半導体トップ10ランキング 出典:TrendForce
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図1 2024年世界ファブレス半導体トップ10ランキング 出典:TrendForce


このトップ10社ランキングは、Nvidiaが先頭になって成長率を押し上げたものだが、そのNvidiaの成長率は何と125%である。つまり2.25倍と急成長した。その売上額は決算発表された数字に近く、1243.8億ドルにも及ぶ。2024年時点ではH100/H200のGPUがGoogleやAWS(Amazon Web Services)、MicrosoftなどのCSP(Cloud Service Provider)からの要求であり、BlackwellはまだCSPのサーバーに搭載されていないようだ。しかし、2025年はGB200/GB300などの高性能GPUシリーズへの需要が加わるため、さらなる売上額が期待される。

AI関連では、3位のBroadcomが従来の通信インフラに加え、CSP向けの半導体設計を担っているため、その売り上げも大きく、同社の半導体売上額の30%を占めるまでになっている。CSPがいくら独自チップを欲しいと言っても自分で半導体を設計するのは難しくなっている。このため、BroadcomはGoogleのTPU(TensorFlow Processing Unit)の半導体設計を担っている。

6位のMarvellもBroadcomと同様、CSPの半導体設計を受け持っている。ファブレス半導体企業はシステムの企画を行うだけではなく、半導体回路をフォトマスクに落とすことまでやっておかなければファウンドリに渡せない。ファウンドリがモノを作れるのはマスクがあって初めてできることだ。ロジック半導体の設計は、論理設計・検証から始まってネットリストあるいは論理合成により回路図へ変換する。さらに回路図からパターン設計(ほぼ自動化)、配置・配線レイアウト、そしてマスク出力、という手順を担う。MarvellもCSPからの半導体設計を請け負っており、売り上げに占める割合は増えてきているという。

2位のQualcommと5位台湾MediaTekは、スマートフォン向けのプロセッサで売り上げの大部分を占めてきたが、スマホ自身が飽和した市場になっている。それでもQualcommは、前年比13%増の348.6億ドルを売り上げた。Qualcommは、AI PC用のMicrosoft Copilot+を満たすPC用のSnapdragonを出荷しており、スマホプラスで売り上げを伸ばしている。MediaTekも同19%の165.2億ドルを売り上げ、スマホでは5Gへシフトすると共にPMIC(Power Management IC)やSmartEdgeソリューションなどへと手を広げている。さらにNvidiaのデスクトップスーパーコンピュータのProject DIGITのパートナーでもありNvidiaと共に成長していけることを期待している。

10位のMPSはPMICと呼ばれる電源用のICメーカーで、同21%増の22億ドルの売上額である。しかし、日本のファブレス半導体企業はこのトップ10社にも入れていない。台湾企業は政府がファブレスを鼓舞する政策を2000年前後に打ち出しており、現在のMediaTekに加え、RealtekやNovatekなどを生み出している。日本はいつファブレス半導体がトップ10社ランキングに入るだろうか。

(2025/03/21)
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