OSATビジネストップの台湾ASEがマレーシア工場を拡張する訳は?
OSAT (Outsourced Semiconductor Assembly and Test:後工程専門の請負ビジネス) で世界トップの台湾ASE(Advanced Semiconductor Engineering:日月光投控)がマレーシアのペナン島にある工場敷地内で第5工場を立ち上げると発表した。現在の3.4倍となる340万平方フィートの工場になる。なぜいま拡張するのか。

図1 ASEのマレーシア工場(既存工場) 出典:ASE
これまでマレーシア工場は、インダストリ4.0やFA(ファクトリオートメーション)などの技術を結集し、既存工場を常にアップグレードしてきた。さらにAIを使った異常検出も駆使、歩留まりを改善しデータ分析を通じて生産効率も上げてきたとしている。いわゆるAI/IoTを活用して生産性を上げてきたという。
ASEのCEOであるTien Wu氏は、ASEのグローバル化を強化する上で、マレーシア工場を重要な拠点と位置付けている。今回の拡張は、需要が急増している生成AI向けの先端パッケージを作る工場だとしている。
「これからの10年に向け、OSATは世界のエレクトロニクス産業のサプライチェーンにとって重要な位置を占める。新工場は、先端AIチップがさまざまな次世代応用製品に使われるようになり需要が急増するようになると威力を発揮する。この時代では、機械学習、企業内でのAI活用、エッジコンピューティング、自動運転車や電気自動車などが普及する。その時に備えて、工場を拡張するわけだが、数年以内に社員を1500名追加することになる」とニュースリリース(参考資料1)は述べている。
Tien Wu氏はOSATの後工程工場を先端のAIや先端パッケージに使うと強気だが、最近では先端パッケージを扱う中工程と後工程の差があいまいになりつつある。実際2年前にTSMCはインターポーザまでは中工程として扱うが、それ以降の製品となるパッケージはOSATの後工程になると言っていた。しかし、最近の同社の製品を見る限り、最後のパッケージまでを扱っている。
後工程を請け負うOSATも今回の先端パッケージを扱うと述べていることは、中工程と後工程の違いがあいまいになってきていることを示している。さらに、シンガポールのSilicon Box社や米Eliyan社などのスタートアップも出現してきているため、この成長分野に手をこまねいているわけにはいかなくなった。後工程ではナンバーワンのASEがインターポーザやチップレットなどの先端パッケージ技術を扱うことはユーザーにとっても心強い存在になるだろう。
今回の発表では、経済産業省傘下のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に相当するMIDA(Malaysian Investment Development Authority)やInvestPenanなどの政府系ファンドも列席している。マレーシアからの投資について一言も話してはいないし、拡張工事への投資か補助金かは不明だが、何らかの資金提供がある、と見るのが順当だろう。
参考資料
1. “ASE Expands its Chip Packaging and Testing Facility to Enable Next-Gen Applications”, ASE Press release, (2025/02/18)